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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2021.6 NO.523
回復期リハビリテーション病棟について
~入院から退院まで~



静岡厚生病院

リハビリテーション科 作業療法士

梅田 葉子

毎日を健康で不安なく過ごしたい
 毎日を健康で不安なく過ごしていても、家族や友人の病気やケガなど、なにかをきっかけに「健康で不安なく過ごしたい」という思いを持っていることに気づかされます。しかし病気やケガは予告なく突然やってきます。状態によっては急性期病院への入院が必要となり、服薬、点滴、手術などさまざまな治療を受けます。退院先はそれぞれの状態に合った場所へとなります。例えば、自宅への退院、回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハビリ病棟)や地域包括ケア病棟のある総合病院や専門病院への転院、施設への入所などです。それぞれ特徴がありますが、今回は回復期リハビリ病棟の一般的な内容と当院の回復期リハビリ病棟での入院から退院までについてご紹介いたします。

回復期リハビリテーション病棟の特徴
 リハビリテーション(以下リハビリ)は身体的な機能回復だけでなく、日常生活動作・活動の再獲得を目的としています。回復期リハビリ病棟は、リハビリを必要とする方が、1日に長時間のリハビリを受けることができます。入院の対象となる疾患や入院期間、一日に受けられるリハビリの時間の上限は厚生労働省により定められています。対象疾患は主として脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)、運動器疾患(大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折など)、廃用症候群(術後、肺炎後などによる状態)などです。入院期間は疾患ごとに異なりますが最大180日となっており、1日3時間のリハビリを受けることができます。

当院の回復期リハビリ病棟の特徴
 当院の回復期リハビリ病棟は2病棟あり、ベッド数は2病棟合わせて95床です。どちらも6段階の病棟基準の中で、最も高い基準を取得しています。この基準にはいくつかの利点があります。例えば、専従の医師を配置し、看護師の人員も他の基準に比べ多く、療養中のサポートを充実させ、より多くの重症患者を受け入れることができます。リハビリは365日毎日提供しており、重症患者を含めた入院患者の日常生活動作の改善も高いものが求められています。そのため当院では理学療法士28名、作業療法士11名、言語聴覚士6名と多くの療法士を配置し、1日平均2時間以上のリハビリを提供しています。また、患者・家族に関わる職種も多く、基準に定められている職種を含め、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護助手・社会福祉士・管理栄養士の複数の職種がひとつのチームとなり、必要に応じ適切な時期に適切なサポートをしています。

 ※ 専従とは当該医療機関において、診療従事者が、「8割以上」、当該業務に 従事しているものをいう。

 また、多くの回復期リハビリ病棟が行っている「生活の中でのリハビリ」は当院でも取り組んでいます。ご本人の状態に合わせて行うことを前提とし、リハビリ時間以外にもリハビリに取り組めるよう療法士が安全な範囲でできる自主トレの指導を行い、看護師の付き添いによる歩行練習などの自主トレも行います。また病棟スタッフは、日常生活動作は時間をかければできる動作は待つ・見守るという姿勢を大切にし、例えば付き添えば歩くことができる方には、歩いてトイレに行くなど退
院後の移動方法を早くに日常に取り入れ関わっています。
 さて、このような紹介をすると、もし自身や家族が病気やケガで長期のリハビリが必要となった時、慣れない環境で、毎日朝から晩まで厳しいリハビリを受けなければいけないと不安に思われるかもしれません。しかし一人ひとりに合わせた方針をたて退院まで支援しているため、無理のない計画で進めています。





入院から退院までの流れ
 回復期リハビリ病棟に急性期病院から転院すると、担当の医師が決まります。そして病棟スタッフによる入院案内や社会福祉士による退院時に必要な基本情報の確認が行われ、合わせて本人・家族の希望を確認します。リハビリは転院当日から開始します。ここからは一人ひとりの希望・状態に合わせて進めていきます。
 では、具体的な流れを知っていただくために当院でリハビリに取り組んだ2人のかたをご紹介します。

①1人目は70代で脳血管疾患を発症し右片麻痺となったAさんです。
 入院時の本人の希望は、「入院前のように歩いて自分のことができるようにして自宅ですごしたい」でした。歩くことができず車イスで入院してきました。手足の麻痺は回復途中で回復が見られ始めていましたが、飲み込む力が弱く食事はおかゆなどやわらかいものに限定されていました。基本的な日常動作である着替え、トイレ、入浴などにも介助者を必要としました。リハビリは基本動作の立つ、座る、歩く、手足の麻痺の改善を目的とした運動、飲み込みの練習などを行いました。その後徐々に回復し、病棟スタッフの付き添いのもと、日常でも歩いて移動し基本的な日常生活動作も繰り返し訓練しました。退院時には杖を使うことなくひとりで歩くことができるようになり、日常生活動作も全てひとりで安全に行うことができるようになりました。食事も通常のものへともどり、入院から3ヶ月後、自宅へと退院しました。

②2人目は廃用症候群で歩行困難となった70代のBさんです。
 入院時の本人の希望は、Aさんと同じく「歩いて自分のことができるようになって家に帰りたい」でした。手の動きは良好でしたが足の拘縮と筋力低下が著しく、車イスを使用しての入院でした。飲み込みは通常に行うことができ、ムセの心配はありませんでしたが、他の日常生活動作は全般的に介助が必要でした。リハビリは拘縮による関節の可動域制限の改善を目的とした関節運動や、立つ、座る、歩くなどの基本的な動作練習を重点的に行いました。歩行器を使用すれば見守りで移動は可能となりましたが、立ち上がりやズボンの着脱・トイレ・入浴動作など立位で行う動作は不安定で見守り・介助をはずすことができませんでした。自宅では日中ひとりで安全に過ごすことが難しいという判断から、社会福祉士より介護保険によるサービスの利用を本人・家族に勧め、手続きを進めていただきました。退院後は入浴サービスを含めたデイサービスを利用していくこととし、歩行器・ベッドなどのレンタル品の準備、家屋環境の整備も行いました。家族への介助指導を看護師・療法士より行い退院前に外泊練習もしました。本人・家族とも「自宅に帰っても生活できそう」という手応えを感じ、3ヶ月後自宅へ退院となりました。

 紹介した2人は、入院時の目標は同じでしたが、経過に違いがあり、リハビリのサポート内容には共通する部分と異なる部分がありました。そして、目標の達成度も違います。Aさんは順調に機能回復と動作の獲得を得て自身の入院時の目標を達成しました。一方、Bさんはご自身がのぞむような機能回復が得られず、獲得できなかった動作・活動もあり目標は達成されませんでした。しかしBさんは3ヶ月という短い期間に、入院前とは違う新たな生活スタイルを獲得するという目標に切り替えました。リハビリに取り組むと同時に介護保険の申請や環境整備、サービスの利用計画をたてることで、自宅へ退院することができました。また、自宅で介護していくという家族の意識の変化も在宅生活を可能にした大きな要因だったといえます。
 このように、回復期病棟に入院する方の機能回復の程度や動作・活動の獲得状況が一人ひとり異なることから、入院から退院までの経過もさまざまです。私たちは「自宅で過ごしたい」という本人・家族の思いを大切に、一人ひとりに合わせたサポートを行っています。

おわりに
 「入院から退院まで」を、2人の方を通して紹介をしましたが当院の回復期リハビリ病棟について伝わりましたでしょうか。今回は入院以降についてお伝えしましたが、実は入院の準備は転院前から始まっています。ご自身や家族が病気やケガで急性期病院に入院し、次の行き先を考えるとき、主治医の先生から回復期リハビリ病棟への転院をすすめられることがあるかもしれません。あるいは回復期リハビリ病棟でリハビリを受けた方がいい状態なのか迷うことがあるかもしれません。その様な場合は、主治医の先生に相談してみてください。急性期病院のスタッフと当院のスタッフが連絡を取り合い、急性期病院からの情報を元に、当院で回復期リハビリ病棟への転院が可能か決定していきます。転院が決まると、当院の回復期リハビリ病棟係が入院先の病院を訪問し、話をうかがいながら転院の準備を進めていきます。
 わたしたちは、回復期リハビリ病棟に入院する方が、入院から退院まで不安なく過ごせるようサポートし、暮らしに根ざした医療の提供を目指しています。そして地域の方々が健康で不安のない生活をおくることを願っています。


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