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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2021.5 NO.522
生活の中に運動を取り入れましょう


清水厚生病院

リハビリテーション科主任

天野 雅史

はじめに
 
  新型コロナウイルス感染症(COVID-1 9)が流行してから1年が経過しました。みなさんも「新しい生活様式」での暮らしが当たり前になっていると思います。この1年で私達は不要不急の外出を控えることが要請され、運動の機会が今まで以上に減ってしまったのではないでしょうか?厚生労働省の新型コロナウイルス感染症に関する調査で生活に関する困ったことは?の質問に対して23・4%の人が自宅にいることで運動できず健康が悪化することに不安があると回答しています。(図1)本誌が発行される頃には、暖かくなり体を動かしやすくなる季節となります。Withコロナの中で生活の中に運動を取り入れてみてはどうでしょうか?



高齢者の外出を控えたことによる影響

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するために生活様式の変化により、高齢者の健康にどのような影響があるのかについて、国内の研究機関による調査研究が行われています※。これらの研究は、知見の収集段階のものも含まれますが、健康二次被害につながるものとして、外出頻度の著明な低下によると考えられる筋肉量の低下、歩行速度の低下及び認知機能の低下等を指摘しています。
 また、高齢者については、数週間程度の活動量の低下により、通常の活動量を維持した生活の数年分以上の筋肉量が低下するとの研究結果も示されています。
 このほかにも、医療関係者からは、高齢者が外出しなかったことによる健康二次被害は、外出したことによるコロナ感染症の感染リスクを上回るとの指摘がなされています。
※ 東京大学高齢社会総合研究機構、千葉大学予防医学センター、筑波大学人間総合科学学術院 ほか

コロナ禍の健康二次被害について(全世代)
  民間の調査によると、外出自粛等によって以下のような生活習慣の変化や体への影響が報告されています。(図2)
1)1日当たりの歩数が減少
2)体重が増加
3 )休校中に運動不足や生活リズムの乱れ、自宅学習の集中力が続かないこと等の訴え
4 )テレワークによる「肩こり・腰痛」「目の疲れ」等の不調の訴えが増加
5 )座位時間が長くなることにより、血流の悪化や血栓ができるリスクが上昇  など



出来ることからやってみましょう
 「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、「1日60分、元気に体を動かすこと」を奨励しています。運動も必ずしも体操やスポーツばかりではありません。通勤で歩くことや階段を利用すること、家の中で掃除したり庭の手入れをすることなども身体活動(体を動かすこと)です。「新しい生活様式」における、さまざまな場面で活動的に過ごす工夫をしてみましょう。
 「1日60分」は連続した時間でなくてもかまいません。アクティブガイドでは、まずは、今より10分多く体を動かす「+10(プラス・テン)」を奨励しています。

身体活動・運動の準備、注意点
① 運動前に血圧や体調をチェックし、その日の体調に合わせて運動量や強さを調整しましょう。
② 持病のある方は医師に相談してから始めましょう。
③ 暖かい季節なので脱水症や熱中症を予防するために、運動時は十分に水分をとりましょう。ポイントは「のどが渇く前に水分摂取をすること」
④ 屋外で運動する時は、人に近づきすぎず、他の人が触れる場所にできるだけ触らないようにしましょう。
⑤ 屋内では、長時間の座りすぎをできるだけ減らし、できれば30分ごとに3分程度、少なくとも1時間に5分程度は、立ち上がって体を動かすようにしましょう。

靴の履き方
 近年、靴の種類は運動の目的(例:ウォーキングシューズ、ランニングシューズ等)や競技ごとに細分化されていますので、みなさんの履きたい靴を履いてください。きつく感じたりや痛みが出るような靴は避けてください。履き方は靴の種類によって差はありますが、つま先で合わせてしまうと隙間が出来てしまうので履いているうちに靴の中で動いてしまいケガに繋がることもあります。そこで、次のように履くことをお勧めします。
①靴の紐をほどく
②その状態で足を入れる
③ 踵の方に合わせる。この時、地面に数回トントンすると合わせやすいです。
④ つま先を上げた状態で紐を結ぶ(踵がずれないように)
 この履き方をしていただくとピッタリとした感じが得られると思います。



取り入れやすい運動
  体操やスポーツばかりが体を動かすことではないと前述しましたが、「実際に何をやったら良いかわからない」という方もいると思います。やらなければならないという思いがある運動は続かないと考えています。そこで、みなさんの中で多くの方が行っているのが散歩(歩行)や簡単な体操だと思います。それぞれのポイントについて説明していきます。

歩行について
 歩行とは、足の上に体幹という重いかたまりを乗せて、それを前方に運ぶ動作の繰り返しで行われている動作です。ここで言う体幹とは頭部や両腕を除いた上半身の事で体の中で約35~40%の割合を占める部分です。この重い体幹をスムースに前方に運ぶ事が歩行の中では重要になると考えています。でも、この説明でどこが重要なのかわかるという方はあまりいないかもしれません。そこで動作を3つに分けて、簡単に説明すると以下の通りです。
①足がつく
②足の真上に体幹がのる
③足より前方に体幹を運ぶ
 3つとも重要ですが②が出来ないと③ができません。③で股関節を後ろに伸ばせるかどうかで前方へしっかり体幹を運ぶことが出来るので注意して行ってみてください。①~③を以下の写真で示しますので参考にしてください。



体操について
 色々な体操がありますが簡単にできるものの1つとしてラジオ体操は、ほとんどの人が1度はやった事のある体操です。公式の体操のやり方はかんぽ生命やNHK、NPO法人全国ラジオ体操連盟が解説していますので、興味のある方は調べてみてください。
 また、ラジオ体操の研究をされている方たちのほとんどの方が述べている事です
が特にラジオ体操第1は、「3分13秒」で行う究極の運動ともいわれています。その理由はいくつかありますが1つは、この短い「3分13秒」の中に13種類も運動
が入っており、全身運動が短時間でできること、ケガをしないような安全な動き
でつくられていること、老若男女の関係なく実施可能であることなどがあります。
 今回は、簡単に行える体操を紹介します。

足の指じゃんけん体操
 やること自体は簡単ですが、意外とできない方が多いと思います。この体操の目的は足の裏の筋肉の柔軟性と感覚の機能をアップさせる事
です。方法は、座った状態で行います。写真のようにグー、チョキ、パーと繰り返し10回程度行ってください。             



座って足踏み体操

 この体操の目的は、骨盤の上に上半身が乗る姿勢を作ることです。椅子に浅く腰かけます。おへそを前に出すようにして胸を張るようにしてください。この時、椅子のふちを持てるような椅子でしたら持って、その場で交互に足上げを30回ずつ行います。足を上げる高さは、高くなくて大丈夫です。膝が、内側や外側向かないように注意してください。



壁押し体操
 この体操は、腕の力と足の力で体をしっかり支えることを目的としています。方法は、壁に向かって腕と肘を伸ばした状態でつけてください。腕の高さは、肩の高さが良いです。足は、地面から離れないように踏ん張ってください。この時、おなかを前に出したり、背中が丸くならないように、まっすぐな姿勢で30秒壁を押してください。



おわりに
  生活の中に運動を取り入れる事は、ハードルが高い事ではありません。ただし継続することが難しいと思います。今回、紹介させて頂いた運動に限らずみなさんが継続できる運動を行うことが健康維持のためにも重要です。
 これを読んだみなさんが、運動を始めるきっかけになれば幸いです。


出典:
 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/
 スポーツ庁ホームページ https://www.mext.go.jp/sports/index.htm
 澤田享.「新しい生活様式」において体を動かす工夫.e-ヘルスネット
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-09-001.html

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