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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2021.3 NO.520
新型コロナウイルスと私たちの暮らし
~みんなで見えない敵と闘おう!~
 



遠州病院

感染管理認定看護師

山崎 久美子

はじめに
 
 連日、新聞やテレビ、インターネットに取り上げられる“新型コロナウイルス”ですが、振り返れば日本で一人目の陽性者を確認したのは、2020年1月15日、中華人民共和国・武漢市から帰国した中国国籍の男性でした。ダイヤモンドクルーズ号、不要不急の外出自粛、三密回避、緊急事態宣言、感染者の増減に一喜一憂しつつ、誰もが目に見えない恐怖や不安と戦いながら、丸1年が経過しました。まだ分からないことはたくさんありますが、この間にずいぶんいろいろなことが明らかになりました。
 新型コロナウイルスに感染しても、無症状から重症化まで病状は様々です。まずは“感染しない(うつらない・もらわない)こと”、そして“感染させない(うつさない)こと”です。心配は無限にあると思いますが、基本的な感染対策をみんなで正しく行うことが重要であると再認識していただけたらと思います。

新型コロナウイルス(SARSCoV-2)と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とはウイルスの名前
 今までコロナウイルスは、ヒトに日常的に感染する風邪のウイルス4種類と、動物のウイルスが人に感染して重症肺炎を引き起こすウイルス2種類(SARS,MERS)が知られていました。これに今般世間を騒がせているウイルスが加わりました。どんな状況が感染しやすいのか、どんな症状があるのか、いつまで続くのか、どんな人が重症化しやすいのか。今、多くの研究者によって少しずつ分かってきています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは疾患(病気)の名前
 毎年流行するインフルエンザと異なり、まったく無症状の感染者も周囲の人に移していることがあります。AさんからBさんに感染したのに、Aさんは何ともなくBさんは肺炎を起こし命の危険にさらされる、ということが起きています。この時、AさんはSARS-CoV-2に感染したがCOVID-19には至っていない、BさんCOVID-19に罹ってしまった、という状況です。自分は大丈夫、でも大切な人にこのウイルスを運んでいるかもしれません。
 多くの症状は、発熱、咳、全身倦怠感など感冒様症状であり、頭痛や下痢、味覚障害、嗅覚障害を起こすこともあります。約80%の方が軽症で回復されることが報告されていますが、高齢者や持病のある方は、重症化するリスクが高いともいわれています。また比較的若い方々で症状は軽度でも長期にわたって持続し、もとの日常生活に戻るのに時間を要する場合があります。

国内の状況

 2021年1月26日時点の、国内における新型コロナウイルス陽性者数のグラフです。



 静岡県においては、都心のような爆発的数字ではないにしても、おおむね同様の曲線を描く感染状況となっています。
 2020年春に続き、再び一部の地域で非常事態宣言が出されました。静岡県は東西大都市への交通の便が良く、通勤・通学している人が多いのが現状です。人が動けばウイルスも動くと考えて、以下に示す感染対策を意識しましょう。

感染経路

 飛沫感染
 ウイルスは、感染している人の咳やくしゃみ、また大声やカラオケなどの熱唱によって飛び出る飛沫(口鼻から出るしぶき)に含まれます。この飛沫は、2m程度で落下してしまいます。ソーシャルディスタンス(社会的距離)をおよそ2mとするのは、直接飛沫を浴びない距離であることからといえます。

 接触感染
 人は“手”を使います。無意識に周囲のあちこちに触れ、無意識に自分の目・鼻・口に触れています。この手を介することで間接的にウイルスに感染します。

感染対策

 1.感染しない・感染させない
 自分のその手と距離をとることはできません。まずは前項の感染経路を知っておくことです。もしも身近に感染している(かもしれない)人がいても、どのように感染するのかを理解しておくことで避ける努力ができます。反対に、自分が感染している(かもしれない)という場合は、周りの人を感染させない努力ができます。人はマスクをつけることが当たり前になり、お店ではアクリル板での仕切りなど、様々な工夫をしています。これらの対策を最大限有効なものにするため、以下のことに注意しましょう。
 
 ≪飛沫感染防止≫
 ・正しくマスクをつける
 マスクには裏表と上下があります。ノーズワイヤーが入っているものが多いので上下はわかりやすいですが、裏表はプリーツやギャザーの向きで確認しましょう。
 また、飛沫は口と鼻から飛び出ます。ウイルスは飛沫に含まれるので、この両方を覆う必要があります。自分が持っているかもしれないウイルスが、飛沫とともに外に拡散させないようにしましょう。マスクの表面は汚染していると考え、触れないようにしましょう。外す際は耳のゴムひもを持ち、周囲を汚染させないようにしなければなりません。
 フェイスシールドやマウスシールドは表情を見せられる利点がありますが、マスクに比べて飛沫拡散防止効果が弱いため、より注意が必要です。



 ・距離をとる・大声で騒がない
 飛沫は、咳、大声などで2m、くしゃみでは3~6mの飛距離があります。静かに話すこと、向かい合わせにならないことでリスクを下げられます。

 ・咳エチケット
 咳やくしゃみが出たときに周りの人に病気をうつさないマナーです。
 一番はマスクをつけることですが、マスクをしていない場合咳やくしゃみが出る際は、ティッシュやハンカチ、または二の腕で口と鼻を覆います。すぐに手を洗える状況でないことが多いため、手のひらで覆うのは接触感染リスクを高めます。

 ・換気をする
 冬場の換気は寒さとの折り合いがつきにくくなります。家庭内では、多くの時間を過ごす部屋から遠い部屋の窓を開けるなど、直接冷気に触れない工夫をするとよいでしょう。またHEPAフィルター*による空気清浄機を利用することも有効です。(*HEPAフィルター:高性能エアフィルターのひとつ)

 ≪接触感染防止≫
 ・正しい手指衛生をする
 今ではアルコールが効果的ということを誰もが知っています。どこに行っても入り口には手指消毒剤が設置されており、個人で携帯している人もいます。それだけでなく、石鹸を使用した手洗いも十分有効です。ただしアルコール手指消毒も、石鹸手洗いも“やったふり”ではもったいないですね。せっかく行うので、正しく行いましょう。アルコールは15秒のすり込み、石鹸手洗いは30秒程度かけるのが有効です。(図1.2.3)







 ・目・鼻・口をむやみに触らないように意識する
 ウイルスの出口だけでなく、入り口にも注意が必要です。目・鼻・口の粘膜から侵入しますので、そこへ自ら運ばないように意識しましょう。とはいっても無意識に触れることが多いので、やはり大切なのは手指衛生ということになります。

 2.消毒について
 お店などアクリル板で物理的に仕切った場合、アクリル板表面には不用意に触れないようにしましょう。また定期的にふき取りなどの清掃・消毒が必要です。洗浄の際は、水はねに注意しましょう。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムの使用が有効です。スプレーするときは、アクリル板やテーブルなどに直接吹き付けると、ウイルスを舞い上げる恐れがありますので、布などに吹き付けましょう。同じ所を行き来しないようS字のふき取りが良いです。もちろん終わった後は忘れずに手を洗ってください。

 3.早く気付く
 体温測定など、毎日の体調観察を習慣としましょう。体調の悪いときは無理せずに外出を控えましょう。

 4.飲食・会食
 利用者とお店双方が、感染リスクを下げる努力をしなければなりません。ガイドラインを遵守したお店で、なるべく普段一緒にいる人と・少人数・短時間で騒がずに楽しみましょう。

 5.ワクチンについて
 ワクチンを待ち望んでいる声も多いでしょう。極めてまれに重大な副反応を起こしてしまう事例もあります。また、注射部位の腫れや熱感、倦怠感という症状が報告されています。義務ではありませんがこれらを同意の上で実施し、多くの人が免疫を獲得することは有益でしょう。しかしながら、ワクチン接種によって、これまでの感染対策がすべて不必要になるものではありません。

おわりに

 例えば一人の感染者が二人の人に感染させてしまうと、倍速で増加してしまいます。慣れた、飽きたと思うかもしれませんが、今以上の感染症の発生を抑えるために、一人一人が正しい対策をしましょう。遠慮なく旅をしたり、家族や多くの友人と集まり笑いあったりできる日が1日も早く来ることを願ってやみません。

参考文献
 国内の発生状況など︱厚生労働省(mhlw.go.jp)
 新型コロナウイルスに関するQ&A (一般の方向け)-厚生労働省 (mhlw.go.jp)
 感染リスクが高まる「5つの場面」-内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
                                   (corona.go.jp)
 静岡県/新型コロナウイルス感染症県内の状況 (pref.shizuoka.jp)

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