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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2020.11 NO.516
シミ・アザ・ホクロが
気になっている皆さんへ
~遠州病院のレーザー治療について~



遠州病院

形成外科 医長

山口 智彦

はじめに
 
 医療で用いているレーザーとは人工的に増幅された光(電磁波の一種)の事です。光は決まった波長(波の幅)を持っており、波長の違いが色の違いになります。理科の実験で太陽光をプリズムに当てて、虹のように色が分かれるのは、この波長が異なるからです。また、レーザーが出ている時間(パルス幅)がレーザー装置の種類によって違います。この波長とパルス幅が異なるレーザーを適材適所でシミやシワ、イボやアザなどに当てて治療します。
 例えば、シミはメラニンが増えることで濃くなります。メラニンという色素に吸収されやすい波長のレーザーを当てることで、小さな範囲で熱が発生してメラニンが破壊され、シミが薄くなるという原理です。
 皮膚は大きく分けて、浅い部分(表皮)と深い部分(真皮)の2つに分かれます。その下には膜を隔てて脂肪などがあり、皮下組織と呼ばれます。シミやアザが皮膚、または皮下組織のどの部分にあるかで、レーザーの効果が変わってきます。

レーザー治療を受ける前に

 レーザー治療は安全性が高い治療ですが、副作用や合併症が全くないわけではありません。治療が受けられない、または延期したほうがよいケースもあります。
 ・ 出血しやすい方・皮膚悪性腫瘍が疑われる方
 ・ 金属などの異物や刺青がある方
 ・ 金属製剤などのお薬を内服している方
以上の方は治療を見送る場合が多々あります。その他、妊娠、授乳中の方、日焼けが強い方などはレーザー照射後の色素沈着が出やすいため、延期したほうがよいでしょう。
 実際の診療においては、スキンケアが不十分な方が多い印象です。シミを薄くしたいのでレーザー治療をして欲しい、と受診される方が多いのですが、日焼けした皮膚にレーザー照射を行うと色素沈着しやすくなるためおすすめできません。肝斑などのベースとなる疾患を治療せずに照射した場合も同様です。
 時間的な余裕があるのであれば、2〜3ヶ月は外用剤、内服薬、UVケアなどを徹底して行い、希望があれば夏季を避けて、残っているシミなどにレーザー照射を行うことをおすすめします。

レーザー治療の流れ

 では実際のレーザー治療の流れを紹介します。当院には、シミに対応するQスイッチ付きアレキサンドライトレーザー(QALEX)、赤アザに対応する色素レーザー(Vbeam)、ホクロや
イボなどに対応する炭酸ガスレーザー(LESAC CO2-25)の3種類があります。
 いずれのレーザーでも日焼け止めやお化粧は落とした状態で受診していただきます。当日落としていただいても結構ですが、落ちきれないこともありますので、できれば前日に洗浄してから、化粧水や美容液を使用するに留めるほうが好ましいです。
 基本的にはシミや小範囲の照射であれば麻酔はしませんが、必要に応じて、表面麻酔(テープ)や局所麻酔(注射)を行います。
 照射する部位や状態によりますが、輪ゴムを伸ばしてバチンッと当てられる程度の痛みがあります。照射後には赤くなったり、少し紫色になったりします。軟膏を塗って、10-15分程度保
冷剤で冷やして治療は終了します。場合によっては遮光や乾燥予防にテープで保護することもあります。
 レーザー治療は1度で効果が出て、終了することは稀で、数ヶ月間隔(おおよそ3ヶ月)で照射を繰り返しますので、1年程度の長期スパンで治療するものと考えていただくほうがよいでしょう。後述しますが、炭酸ガスレーザーは光と熱の力で吹き飛ばすイメージですので、1度の治療で済む場合が多いです。
 

◆ Qスイッチ付きアレキサンドライトレーザー(QALEX)



1.老人性色素斑(シミの中で多い)
 いわゆる茶色や黒っぽいシミです。境界が比較的はっきりしている褐色斑で、中年以降によく見られます。原因は紫外線の暴露と加齢で、顔や手・足に多いです。

2.雀卵斑(そばかす)
 比較的若い頃から表れるシミで、1︱2㎜程度の小さな褐色斑が多数みられます。紫外線の影響もありますが、遺伝的な原因があると言われ、両頬が多いです。

3.太田母斑
 顔や目の周り、頬などにできる青アザで、幼少期から見られることが多いですが、思春期以降に出てくることもあります。生涯にわたり濃くなり、拡がっていくため、早期の治療が有効ですが、再発や遅れて出てくることもあり、目の周りは効果が低いです。回数が増えると色素脱失(白くなる)のリスクも増加します。

4.異所性蒙古斑
 蒙古斑は生まれつき見られるお尻の青色斑です。日本人のお尻にはほぼ見られるでしょう。お尻以外にあるものを異所性蒙古斑と呼びます。お尻の蒙古斑は幼少期までに薄くなりますが、異所性蒙古斑は薄くなるのが遅く、学童期までかかる事があります。自然に消えるのですが、レーザー治療で少しでも早く目立たなくさせるのが目的です。ポイントは決して消してしまおうと躍起にならないことです。逆に白くなって目立ちます(白斑)ので、待つことが肝要です。また、成人の異所性蒙古斑は色素沈着することが多く、目立たない程度になればよいと考えてください。回数が増えると合併症のリスクが増加します。

5.外傷性色素沈着症・外傷性刺青
 なにかしらの怪我をした際に、砂やアスファルトなどの小さな異物が皮膚(真皮)に沈着し、シミやアザのようになる状態です。瘢痕というキズあとも一緒に残りますので、レーザー照射を色が薄くなるまで行いますが、瘢痕は消えずに残ってしまいます。瘢痕まで治療する場合は別の種類のレーザーが必要になります。症状によっては自費診療になるレーザーもあります。

6.扁平母斑(カフェオレ斑)
 体のどこにでもできる褐色斑です。生まれつきの場合や思春期以降に生じるものもありますが、基本的には消えることはありません。合併症が多く、レーザーの効き目も低いことが多いです。点状に再発したり、炎症を起こして色素沈着してしまったり、白くまだらになったりします。当院のQスイッチ付きアレキサンドライトレーザーでは自費診療となります。
※ 太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症・外傷性刺青は保険証を使用した保険診療とな
りますが、そのほかの症状については医師の判断にもよりますが自費診療となります


◆色素レーザー(Vbeam)



1.イチゴ状血管腫(乳児血管腫)
 生まれつき、または生後少し経ってから紅斑(赤いアザ)が出現し、生後数週〜数ヶ月で大きくなってきて、表面がイチゴ状にぶつぶつとしてきます。1歳くらいまでに最も大きくなり、その後、数年かけてゆっくりと小さくなっていき、7歳くらいまでには大体がなくなります。治療をしなくてもよいのですが、問題はあまり赤アザが大きくなってしまうと、小さくなってもその名残が残ることがあります。また瞼に生じたものが大きくなって、目を塞いでしまうと失明のリスクもありま
すので、積極的に治療する場合もあります(目の場合はプロプラノロール内服治療をおすすめします)。レーザー治療も内服治療もなるべく早期(生後3ヶ月以内)に開始したほうが効果は高いため、気になる場合はまず受診されることをおすすめします。

2.単純性血管腫(毛細血管奇形)
 生まれたときからある平らな赤アザで、額やまぶたなどの一部を除いて自然には消えることはありません。うなじにできる赤アザはウンナ母斑と呼ばれ、自然には消えないこともあります。また、顔面は成人以降で膨らんで(肥厚)くることがあります。肥厚していない顔面や頸などは比較的レーザー治療が効きやすいですが、手足のものは治療効果があまり高くありません。何度かレーザー治療を試して色調の改善がみられない場合は手術療法も検討する必要があります。

3.毛細血管拡張症
 赤ら顔、星芒状血管腫、毛細血管拡張性肉芽腫、酒しゅさなど様々ありますが、色素レーザー(Vbeam)が得意としているのは赤く細い血管が見えるタイプの毛細血管拡張症です。内臓の病気の一症状として皮膚に毛細血管が増えて見えることもありますので、一概には言えませんが、顔や手足に見られることが多いです。しかし、静脈瘤などが原因で起こる足の毛細血管拡張は、レーザー治療により色素沈着を起こす場合が多く、先に静脈瘤などを治療することをおすすめします。
※すべて保険診療となります。
※酒さとは、中高年の女性に多く、顔のほてりや赤み、にきび様の発疹などができる症状で、ひどいと鼻が赤く腫れてお団子の様になる事もあります。原因はまだはっきりとはしていませんが、ステロイド外用が原因の場合は酒さ様皮膚炎と言います。


◆炭酸ガスレーザー(LESAC CO2-25)



 ホクロやイボなどの治療に使用することが多いですが、光と熱の力を利用して、組織ごと蒸散(吹き飛ばすイメージ)させます。ホクロ(色素性母斑)、イボ(尋常性疣贅、脂漏性角化症)の様に、色がついたものや、膨らんだものまで対応します。かなりの痛みを伴いますので、必ず局所麻酔注射を行います。吹き飛ばすと言っても、何もなかったかの様にはなるわけではなく、最初は皮が剥けた様になり赤みが残りますが、徐々に目立ちにくくなっていきます。ご自宅ではテープを貼ったり、軟膏を塗ったりする処置は必要です。この治療では組織がなくなってしまいますので、そのホクロが本当にホクロだったかどうかはわからなくなってしまいます。ホクロの中には悪いホクロが隠れている場合もありますので、精密検査をおすす
めする場合もあります。
※ レーザー治療を行った当日のお会計は自費となります。

さいごに
  
 色々なレーザー治療をご紹介しましたが、当院形成外科では、レーザー外来を週3日開設しています。上記の症状でお困りの方はもちろん、レーザー治療だけでは解決できない症状もありますので、気になる症状やご質問などありましたらお気軽にご相談ください。


参照
 日本形成外科学会HP
   https://jsprs.or.jp/
 日本美容外科学会HP
   https://www.jsaps.com/



JA-shizuokakouseiren.