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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2020.3 NO.508
「訪問看護をご存知ですか?」
訪問看護ステーションときわ
所長
鈴木 真理子

はじめに
 皆さんは病気や障害で介護が必要になった時、どこで過ごしたいですか?住み慣れた所で自分のペースで自分らしく過ごしたいと思いませんか?
 今、在宅介護や在宅死は社会の関心事になっています。その在宅において大きな関わりがあり、今後益々、利用者が増えると言われている「訪問看護」についてお伝えしたいと思います。
 「訪問看護」について、どんなイメージがありますか?「訪問介護」との違いは?来てほしい時に来てくれるの?等疑問が多くあると思います。身近に介護で困っている方はいないですか?ここでは訪問看護の仕事内容、しくみや現状など分かりやすくご紹介します。おひとりでも多く、訪問看護についての理解と、興味を持って頂けたらと思います。

最初に訪問看護ステーション「ときわ」の理念の紹介をします
 それは「皆に笑顔を届けたい。」です。「利用者や家族や介護者が笑顔になるように、こちらも笑顔を届ける。」開設当初から受け継がれている想いです。この理念が叶う様に、自分達はどのように支援し、どう働くかということを考え、理念に沿うように頑張っています。どのステーションも各々理念があります。その理念を道標とし働いている看護師がご自宅へ訪問します。

訪問看護に対する様々な疑問
【どんな人が利用できますか?】
 利用するには、医師の指示(指示書)が不可欠です。一般的には病気や怪我や障害をお持ちの方が対象になります。赤ちゃんから高齢者まで可能です。医師はどの病院の医師でも構いません。当ステーションは遠州病院と同組織ですが、当院以外の方も利用されています。

【訪問介護と訪問看護の違い】
・ 訪問介護→ホームヘルパーが訪問します。ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて食事・排泄・入浴・などの身体介護と、掃除・洗濯・買い物・調理など生活援助を行います。
・ 訪問看護→看護師や理学療法士など医療従事者が訪問いたします。訪問看護指示書に従い、医師と連携しながら療養ケアと医療処置を行います。清潔・食事・排泄の介助やケアは療養ケアに含まれますが、洗濯などの生活援助は含まれません。

【利用したいときはどうしたらいいですか?】
 まず市役所の長寿保険課や高齢者相談センターに相談し、介護保険の申請をします。ケアマネジャー(介護支援専門員)を探す際には、居宅介護支援事業所のリストをいただき検討してみてください。

  ※ ケアマネジャーとは…介護保険サービスを受けられるようにケアプランの作成や各サービス事               業所との調整など行う人。ケアマネジャーへの費用の負担はない。

以下の方法でも、訪問看護利用までどうしたらよいか教えてくれます。
・ かかりつけ医に「訪問看護師さんに来てもらいたい。」と相談する
・ 訪問看護ステーションへ直接相談する
・ 入院中の場合は「地域医療連携室」などに相談、あるいは看護師に相談しても良い

【訪問看護はどのようなことしてくれますか?】
 自宅で過ごしたい気持ちを一番に考え安全に安楽に生活できるようサポートします。
① 病状観察
・ 訪問毎に血圧や体温など測定し、病状や体調の観察をします。変化を早期発見でき、医師へ速やか  に連絡するので悪化予防が出来ます。また先を見越し必要なケアを実施します。
② 床ずれの予防や手当てと指導・身体(胃や尿道など)に挿入されている管等の管理・医師の指示に  よる医療処置
・ 床ずれが出来た場合や、火傷や皮膚の損傷に対し処置をし、自宅での対処法も指導します。
・ 食事や尿の管が入った方・人工肛門造設の方・点滴実施の方・在宅酸素療法中の方などについても  支援します。入院していた場合、管の管理などについて療養指導を受けても、緊張での聞き逃しや   部分的に忘れてしまうこともあります。退院後に、予測できなかった出来事に遭遇することもあり   ます。病院から自宅へと生活の場所が変更しますので、環境の変化に対応出来るように支援をしま  す。
③リハビリテーション
・ 実際の生活の場で、動作を観察しながら危険箇所や動線などを確認し、安全に過ごせるように個別   性に富んだケアを提供します。遠州病院には訪問リハビリステーションがありますので、連携をと  り病状を加味しながら実施しています。必要な福祉用具についても、助言します。
④療養相談と介護支援
・ 日々の生活の中での不安な点などを伺い、具体的な方法を助言します。またご家族の健康状況にも  配慮し、時には健康チェックもしながら、家での生活が長く継続出来るよう支援します。
・ 介護による、身体や気持ちの負担や負担感は経験した人でないと分かりません。その負担を訪問看  護と分担できるので訪問日は少し気持ちのゆとりが持てます。
・ 夜間休日も電話での相談受けや必要に応じて訪問します。(24時間対応体制の届出をしている訪問  看護ステーションのみ)相談例として、発熱や転倒、内服について、排便のこと等があります。病  院に受診していいのか分からない時にも、まず訪問看護師に相談される方が多いです。
⑤保清・排泄・食事の援助
・ 身体に負担がかかる方への入浴介助や清拭など行います。同時に皮膚状況の確認もします。
※ 清拭とは…入浴が出来ない時に身体を拭いて清潔を保つ事
・ 便秘や下痢で困ったときに内服の調整や食事指導を行い、排便調整の支援をします。
・ 糖尿病や腎臓病、食事が細くなった方の栄養指導も行います。また、飲み込みの機能が低下してい  る方には、機能維持改善の体操も実施します。
・ 薬の飲み間違い等を発見すると共に、管理方法の工夫をし、安定した生活が出来るようにします。  特に認知症の方の内服管理は個別性を考え実施しています。
⑥ご自宅での看取り
・ 療養者や家族が悔いなく過ごせるよう、今までの生き方や思いに触れながら、気持ちを最優先した  支援を、医師とも相談し行います。
・ 痛みや苦痛の除去、身の置き場が無い場合はマッサージを施行し、医師とやり取りしながら苦痛を   最小限にするよう努力します。刻々とした変化にご家族も、何とかしてあげたい気持ちと何も出来  ない気持ちの葛藤も大きいです。やがて訪れると理解はしていても、いよいよその時が迫ってくる   とご家族の方々は平常心ではいられなくなるかもしれません。療養者が一日でも長く自宅で過ごせ  、ご家族が後悔なく、看取れる様に支えてまいります。
例えば
 ・疾患や症状に合わせた介護指導
 ・ 状況の変化時は医師への相談や指示受けなどし、医療と介護を繋ぐ
 ・24時間体制で相談を受け、必要時訪問する

【どんな時に来てくれますか?】
 定期的に訪問します。週1~3回位で曜日を決めて伺います。隔週1回という方もいます。1回の訪  問は30分~1時間半です。訪問時間により費用も異なります。回数や時間はご本人の希望も確認し、 体調や必要に応じて皆で相談し決めます。

【費用はいくらかかりますか?】
 費用の自己負担は、保険の種類(現在納めている介護保険料や健康保険料を使います)や所得や年齢 により異なります。原則1割~3割が自己負担です。医療保険の場合自己負担が軽くなる制度もあり  ます。
≲例≫ 介護度1~5の方の場合
 訪問時間30分未満 1回480円
 訪問時間60分未満 1回840円
 訪問時間90分未満 1回1180円
介護保険利用。1割負担。週1回1時間利用。緊急時訪問看護加算(月580円)
看護強化体制加算(月300円)、
サービス提供加算(1回6円)あり。
→月に5000円くらいとなる。

※ 介護度が要支援の方は1回の訪問料金が安くなります。
  特別管理加算(医療依存度が高い方月500円)など特殊な費用が加算されることがあります。

【医療保険利用する場合はどんな時?】
・40歳未満の医療保険加入者
・40歳以上65歳未満で介護保険に申請できる状態(疾患)でない人
・介護保険認定者で厚生労働大臣が定めた疾患または状態の方
・高齢者であっても介護保険の認定を受けてない人。または自立(非該当)の方

最近の訪問看護の動向・特徴
 グラフ①②は浜松市の訪問看護利用者数・回数の4年間の比較です。他ときわのデータから読み取れ る特徴を表―1に示しました。主介護者の変化のグラフ③のみを参考までに示します。一つの特徴は 独居の方の増加です。今後本格化していきます。もう一つは医療保険の利用者・利用回数の増加です 。これは、以前は病院でしか受けられなかった治療や看護も家で実施できることも多くなっていると いうことが表れています。団塊世代が75歳以上になる5年後に備えて、各自治体で体制整備している 「病院から在宅へ」の方向性もあり、医療依存度が多少あっても在宅での療養をしている方が増えて います。病院から在宅へ生活の場所がシフトする時に切れ目のない医療を行うためにも、訪問看護が 必要なのです。

グラフ①


グラフ②


グラフ③




終わりに
 家族の形態が多様化し、高齢者夫婦世帯、・独居世帯が増えています。家族だけではありません。生 き方も多様化しています。この中で、私たちの役割は利用者の方が、住みたい場所で安心して暮らせ るように支援することです。私たちは完璧ではありません。療養生活はご家族の協力や地域の方の協 力があってこそ成り立ちます。 地域の方や療養者の方の知恵や知識などの強みにも注目し、一緒に 生活を築き、また介護者にも寄り添い、共に見守る。共に笑顔になる。それが今言われている地域で 見守ることだと思います。
 訪問看護というサービスを知り、私たちの果たす役割を知り、いざという時に備えてください。

〈参考文献〉
浜松市訪問看護ステーション協議会「訪問看護利用状況」
静岡県訪問看護ステーション協議会「訪問看護活用ガイド」



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