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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2019.12 NO.505
風水害について学ぼう
~大切な命を守るために~



清水厚生病院

手術室 看護師

河西 美枝

はじめに
 近年我が国では、大雨や暴風による災害が頻発しています。平成30年(2018年)の西日本豪雨では、岡山・広島・愛媛県を中心に大規模な土砂災害や浸水が発生、死者は12府県130人を超え、西日本を中心に大きな被害をもたらしました。
 また、直近(2019年)では台風の上陸が相次ぎ、その後も大雨によって河川の氾濫や長期間に及ぶ停電などの大規模な災害が連続で起きました。 そこで今回は、毎年のように全国各地に大きな災害をもたらす風水害から身を守るために、正しい知識を持ち、自分自身への身近な危険と認識し、災害時にとるべき行動を平時から身に着けておくことが重要ととらえ、風水害から大切な命を守るために、避難行動・対策を紹介します。

1、風水害とは
 自然災害は大きく「気象災害」と「地震・火山災害」に分けることができます。気象災害は、雨や風など地球上で発生する災害であり、地震・火山災害は地球の内部で発生する災害です。気象災害は更に、雨・風・雷・雪などいくつかに分けることができます。その中でも強風・大雨・洪水・高潮・波浪・雷に注目した災害を「風水害」と呼びます。

2、風水害に対する備えと行動
 風水害は事前の備えが重要です。梅雨前線や秋雨前線が停滞することで、しばしば大雨が降ります。また、1981年から2010年の平均では26個/年もの台風が発生し、接近・上陸すれば暴風や大雨となり、冠水や河川が氾濫することもありました。
 最新の気象情報など常にチェックし、災害から身を守ることが大切です。ハザードマップなどを確認し、危険性が高い場所を事前にチェックしておきましょう。

2-①、平常時の心得
・避難場所と避難行動、避難経路を確認
 避難行動は指定緊急避難所※へ移動することだけではなく、自然災害から「命を守るための行動」全般を意味します。ハザードマップを確認し、自分が住んでいる地域の避難場所や避難行動を確認しておきましょう。また、あらかじめ避難経路を決めておき、安全に通行できるか確認しておきましょう。
※ 切迫した災害の危険から命を守る場所として、あらかじめ市町が指定した施設・場所

・非常用持ち出し品
非常時に持ち出すものをあらかじめ準備し、家庭の実情に合わせて、持ち出し品を決めましょう。重くなりすぎないよう、必要最低限のものにまとめましょう。

・非常用備品
 浸水により停電・断水等ライフラインが途絶された場合、救助までに時間がかかる可能性があります。日頃から、非常用備蓄に努めましょう。

・防災、減災に対する知識を持つ
 日頃から洪水・強風の知識や危険な場所を知り、水害への危機意識を持ちましょう。

・地域で協力して災害に備える
 減災や防災に関心を持って、自治体や自治会などの訓練や説明会に参加し、地域の方々とコミュニケーションを図り、情報共有し、いざという時に対応できるように心がけましょう。また、一人で避難できない要配慮者(避難行動要支援者)の避難先を確認するなど、地域の協力体制を踏まえ円滑な避難に繋げましょう。
・家の周りの点検・整備
 落ち葉やゴミで詰まると道路の冠水や浸水の原因となります。道路の側溝や雨水ますの周りを清掃しましょう。
・簡易な浸水防止方法
 浸水に備えるには、「土のう」「水のう」「止水板」など活用します。
・台風は通り過ぎるのを待つ
 台風接近時に外にいた場合は、近くの施設で通り過ぎるのを待ち、自宅にいる場合は外出を控えます。屋根や窓の補修のために外へ出るのは危険です。

2-②、災害発生時の心得
・避難の判断に必要な情報を確認しよう
 災害危険個所や避難場所を表示した市町のハザードマップや、気象情報、防災情報、河川のライブカメラ映像などが閲覧できる「サイポスレーダー」を活用しましょう。

「サイポスレーダー」
http://sipos.pref.shizuoka.jp/
 テレビのデータ放送(dボタン)でも、気象情報や防災情報を確認することができます。市や町から発令される避難情報について、理解しておきましょう。(図1・2)

図1


図2


2-③、避難時の心得
・避難の呼びかけに注意し、正確な情報
 危険が迫ったときに、役所や消防署などから避難の呼びかけをすることがあります。
 呼びかけがあったときは速やかに避難しましょう。
・膝下まで水が来る前に避難
 浸水時の歩行可能な水位の目安は、膝下までです。
 また、水位が低くても水の勢いで動けなくなる危険性があるので、水が流れてきたら高所へ早急に避難します。
・二次災害を防止し、避難することを周知
 火災予防の為、電気のブレーカーを落とし、ガスは元栓を閉めることを忘れずに。
・動きやすい服装で2人以上での避難
 水中でも脱げにくく歩きやすい履物で逃げましょう。浸水しているところは、深さがわかりません。杖か棒が必要です。
・地下からより高いところへ避難
 地上の冠水によって地下に水が流れ込み避難が難しくなります。地上から3階以上の頑丈な建物など、より安全な場所に避難しましょう。
・エレベーターは使わない
 停電が生じるとエレベーターは使用できません。また、エレベーターに閉じ込められる恐れもあります。台風や大雨のときは、なるべく階段を使いましょう。
・冠水している道路は危険
 冠水している道路は、マンホールや側溝の蓋が外れて転落する可能性があり危険です。
 やむを得ず冠水箇所を移動する場合は、傘などで地面を探りながら移動します。また、河川や用水路に近づかないで下さい。
・車での避難は控える
 交通渋滞の原因や緊急車両の妨げになるので、車での避難は控えましょう。
 また、水防活動の妨げになるので、堤防に車を放置してはいけません。
・逃げ遅れた場合には高い建物に避難
 万が一逃げ遅れた場合は、3階以上の丈夫な建物に避難しましょう。

3、土砂災害について
 ここで少し土砂災害についてお話します。日本は国土の7割を山地・丘陵地が占め、地殻変動が活発な変動帯(環太平洋変動帯)にあり、火山が多いことから土砂災害が起きやすいといわれています。
 土砂災害は、すさまじい破壊力をもつ土砂が一瞬にして多くの人命や住宅などの財産を奪ってしまう恐ろしい災害です。山腹や川底の石や土砂が集中豪雨などによって一気に下流へと押し流される現象を土石流といいます。また山の斜面や自然の急傾斜の崖、人工的な造成による斜面が突然崩れ落ちることを崖崩れといいます。

3―①土砂災害の前兆
・崖崩れ
 崖にひび割れができる、小石がバラバラと落ちてくる、崖から水が湧き出る、湧水が止まる・濁る、地鳴りが聞こえるなど。
・地滑り
 地面のひび割れ・陥没、亀裂や段差の発生、崖や斜面から水が噴き出す、井戸水や沢の水が濁る、地鳴り、山鳴りがする、樹木が傾くなど。
・土石流
 山鳴りがする、急に川の水が濁り流木が混ざり始める、腐った土の臭いがする、降雨が続くのに川の水位が下がる、立木が裂ける音や石がぶつかり合う音が聞こえるなど。

3-②土砂災害から身を守るために
・避難場所を確認
 指定されている避難場所や連絡方法、避難経路を家族で話し合い確認しておきましょう。
 避難するときは、持ち物を最小限にし、両手が使えるようにします。
・非常用持ち出し袋の用意
 ハザードマップや避難場所の地図など非常用持ち出し袋を用意し、危険を感じたら活動しやすい服装に着替えて、いつでも避難できるようにしておきます。
・土砂災害危険個所を知る
 災害危険個所や避難場所を表示した市町のハザードマップや、気象情報、防災情報、河川のライブカメラ映像などが閲覧できる「サイポスレーダー」を活用しましょう。

4、おわりに
 皆さんは、災害といえば「地震・津波」の印象が強いと思いますが、風水害も、ひとたび起きれば大きな人的・物的被害をもたらします。
 住み慣れた地域で暮らすためには、自分の住んでいる地域の危険個所を事前に確認しておくことが大切です。市町から避難情報が発令されていない場合でも、「自らの身は自分で守る」という心構えで、身の危険を感じたら速やかに自主避難をしましょう。
 日頃から訓練の参加は、災害時に大きく役立ちます。皆さんの住んでいる地域の訓練に積極的に参加し、知識や技術を習得してください。
 また、当院においても訓練や勉強会を継続し、あらゆる災害に対応できるよう活動していきます。

〈参考文献〉
内閣府「警戒レベルに関するチラシ」
静岡県公式ホームページふじのくに
「災害から自分の命を守る避難行動」
内閣府防災情報のページ
「特集 風水害から身を守る」



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