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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2019.3 NO.496
血球のはたらき
〜3種の血球と検査について〜



リハビリテーション中伊豆温泉病院

臨床検査科

高原 千佳


はじめに

 血液は、私たちの身体の中を循環する液体です。主な役割は、酸素や二酸化炭素、栄養などを運ぶ「運搬」、ホルモンや体温などを一定に保つ「緩衝」、病原体や異物などから身体を守る「防御」があります。通常血液量は、成人の場合、体重の8%程度(体重が60sの場合:約5L 体重1s当たり約70mL)です。全血液量の1/3を失うと生命に危険を及ぼすと言われています。血液は血球と呼ばれる細胞と血漿と呼ばれる液体が合わさったものです。

 血球成分は全血液量の約45%で、赤血球・白血球・血小板から成ります。残りの血漿成分は水・電解質・蛋白質・その他(糖質、脂質、老廃物など)から成ります。(図1)
 今回は私たちが生きていくために必要な血液が体の中でどんな活躍をしているのか、血球の働きを中心にお話しします。

血球について

 @赤血球
 血球成分の大部分(約99%)を占めており、ヘモグロビン(Hb)と呼ばれる赤い色素が含まれています。その為血液は赤く見えるのです。赤血球は、白玉団子のような中央が凹んだ円盤状の血球です。全身に酸素を運び、二酸化炭素を回収する、言わば運送業者です。全身に酸素を運ぶには、働き手の数とやる気が必要です。赤血球数は人員、Hbは赤血球のやる気の源であり、赤血球数やHbが少ないと全身に酸素が行き渡らず、いわゆる貧血症状を起こします。
 赤血球の寿命は約120日です。寿命を終えた赤血球は脾臓(ひぞう)や肝臓で壊され、胆汁としてリサイクルされています。
 A白血球
 体内に侵入した病原体(細菌やウイルス)や異物から身体を守っています。私たちが病気になった時に戦ってくれる、頼れる存在です。白血球は性格の違うものが集まっており、主に5種類(好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球)に分類され、それぞれ異なった働きをします。寿命は約2〜3日です。
 【好中球】
 白血球数の約60%を占めています。主に細菌に感染した際に活躍します。
 【リンパ球】
 白血球数の約20%を占めています。主にウイルスに感染した際に活躍します。
 【単球】
 白血球数の1〜10%を占めています。主に異物への攻撃の司令塔であり、自らも攻撃に出陣する働き者です。
 【好酸球】
 白血球の0〜5%を占めています。主に寄生虫が侵入してきたとき、喘息やアレルギー性皮膚炎などの時に活躍します。
 【好塩基球】
 白血球の0〜2%を占めています。正常時はほとんど現れませんが、白血病や即時型アレルギーを起こしたときに出現します。 各種成分の割合を知ることで、体内の異常をより細かく捉えることができます。
 B血小板
 血管の損傷などに対し、真っ先に損傷した現場に駆け付け、修復作業を行います。つまり、止血です。血球の中で最も小さい存在ですが、重要な仕事を担っています。血小板は、怪我などが無くても、絶えず3万/ は血管の修復作業をしています。その為、3万/ 未満になると、身体のどこかで出血している可能性や、出血した際の止血困難の可能性を考えます。 また、血液疾患だけでなく、感染症、肝疾患、膠原病などでも基準値を外れることがあるため、総合的に判断するための指標となっています。

赤血球系の検査でわかること

 
3種類の血球の中で、大部分を占めている赤血球についてもう少し詳しく見ていきます。赤血球の検査項目には、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球指数、網赤血球などがあります。(表1)


          表1:赤血球系の検査 基準値


【赤血球数】
 ヘモグロビンを含み、酸素や二酸化炭素を運搬する赤血球の数を示します。多血症や脱水などで増加し、貧血や出血などで低下します。
【ヘモグロビン(Hb)】
 赤血球の中に含まれ、赤血球の仕事の源となります。赤い色素で、主に鉄と蛋白質からできています。主に貧血の程度などの診断に役立ちます。
【ヘマトクリット(Ht)】
 血液中に占める赤血球の割合を示します。Hbと同様、貧血の程度を知る上で参考になります。
【赤血球指数】
 赤血球の大きさとそこに含まれるヘモグロビンの量・濃度を示したものです。貧血の鑑別に有用です。 
・平均赤血球容積(MCV)
 赤血球1個の大きさ 
・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)
 赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度
・平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)
 赤血球1個あたりのヘモグロビン量
【網赤血球】
 出来たばかりの赤血球で、赤血球造血能を反映します。およそ1日前に出来た赤血球の数を示します。 これら赤血球系の検査の数値を見ることで、血液疾患などの鑑別に役立ちます。例えば、Hbの数値が低いときには貧血を疑います。WHO(世界保健機構)では、貧血の基準値を次のように定義しています。(表2)


      表2 WHOによるHb基準値

また、赤血球指数を用いて貧血の分類をすることもあります。赤血球の大きさや数が少ない貧血(小球性低色素性貧血)、赤血球の大きさは正常だが数が少ない貧血(正球性正色素性貧血)、赤血球が風船のようにパンパンに膨らんで大きくなり、赤血球が壊れやすい状態の貧血(大球性正色素性貧血)などに分類されます。(表3)


        表3 赤血球による貧血分類

 どの貧血に属するか分けることで、貧血の原因を絞り込むことができます。一般的な追加検査項目は表をご覧ください。(表4)



    表4 赤血球指数による追加検査項目例


貧血の成因

 通常は、赤血球が作られる量(生産量)と赤血球が寿命を終えて失われる量(消失量)のバランスが保たれています。(図2)


       図2 貧血の成因(通常)

しかし、出血や赤血球が何らかの原因で寿命より早く壊れてしまうこと(溶血)などにより、赤血球の生産量より消失量が上回ることで貧血が起こります。(図3)


    図3 貧血の成因(出血、溶血など)

また、赤血球が作られる段階で、赤血球の素となる鉄の不足などにより赤血球の生産量が低下することでも貧血が起こります。(図4)


    図4 貧血の成因(鉄欠乏症など)

貧血の代表例

 【鉄欠乏性貧血】

 小球性低色素性貧血で、貧血の中で最も多い貧血です。若年〜中年女性に多く見られます。原因としては、女性では月経、子宮筋腫・子宮内膜症による性器出血、妊娠に伴う鉄需要の増大が多く、男女共通では胃潰瘍や痔核などの慢性消化管出血などがあります。

 【巨赤芽球性貧血】

 大球性正色素性貧血で、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏が成因で起こる貧血です。特にビタミンB12欠乏による貧血を悪性貧血と呼ぶこともあります。原因としては、ダイエットや食欲不振による摂取不足やアルコール中毒、妊娠による葉酸の需要増大などがあります。また、ビタミンB12を吸収するために重要な胃粘膜から分泌される内因子が、胃粘膜萎縮や胃がんなどによる胃全摘により欠乏することで起こります。胃全摘後に無治療の場合、鉄欠乏性貧血から巨赤芽球性貧血の経過をたどる可能性が高いため、きちんと経過観察をし、適切な治療を受けることが大事です。

貧血の代表例

 白血球の検査では、白血球数・白血球の各成分の割合について調べます。(表5)


     表5 白血球系の検査 基準値

健康な人で白血球の増加がみられる場合、体内で炎症が起きているときや細菌などに感染したときです。喫煙やストレスで増加することもあります。また、白血球の各成分の割合については、炎症では好中球の増加、アレルギーでは好酸球の増加がみられるなど、それぞれ特徴があります。

 また、白血病などの血液の病気が考えられる場合、通常血液中にはほとんど見られない、未熟な白血球などが多く現れます。未熟な白血球は本来の働きをしてくれません。そのため、身体は疲れやすく病気に罹りやすい状態となってしまいます。未熟な白血球にも様々な種類があり、その種類を分類分けすることによって、病気を診断するのに役立ちます。

おわりに

 私たちの身体の中を駆け巡っている血液は生きていくために重要な役割を担っています。特に赤血球は、身体の各臓器が働くのに必要な酸素を運んでおり、それが失われると様々な異常をきたす恐れがあります。ゆっくりと貧血が進行している場合、私たちの身体はだんだん慣れていき自覚症状が乏しいことがあります。自覚症状がなければなかなか医療機関を受診することもなく、発見が遅れることが考えられます。健康診断はそんな隠れた疾患を見つける重要な検査です。年に1度は健康診断を受けることが大事であり、健康診断等で医療機関を受診するよう勧めがあった場合は放置せず、きちんと精密検査を受けに医療機関を受診することが大事です。自分の身体をいたわり、定期的な健康診断を受け、結果を生かすことで健康寿命を延ばしましょう。

 

参考文献〉
 ・病気が見えるbT 血液 第2版
   医療情報科学研究所
   メディックメディア
 ・はたらく細胞
   清水茜
   講談社 

 



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