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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.11 NO.492
病院会計の仕組みについて



リハビリテーション中伊豆温泉病院

医事課

安達 義昭


はじめに
 みなさま体調が悪くなった時やけがをしたときに病院や診療所などの医療機関を受診したことがあるかと思います。診察や検査やお薬の処方といった診療行為を受けた際に医療機関から医療費を請求されます。領収書や明細書をみてもわかりにくい印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。これは医療費の請求がスーパーなどの買い物と違い、診療報酬などの制度によって決まるものだからです。今回は医療費にかかわる仕組みについて説明したいと思います。

医療保険制度について
 日本の医療保険制度は、医療機関を受診した際に発生する医療費の経済的負担を軽減する仕組みで公的医療保険と民間医療保険に分かれます。公的医療保険は原則全ての人が何らかの保険に加入するよう義務づけられている強制加入の保険です。具体的には自営業者などが加入する国民健康保険、民間企業に勤務している人たちが加入する健康保険、船員などが加入する船員保険、公務員や私立学校の教職員が加入する共済組合等の保険や75歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度があります。それぞれの医療保険については表をご参照ください。この仕組みにより全ての国民が公的医療保険に加入している状況を国民皆保険といいます。民間医療保険はいわゆる生命保険などの民間会社が運営する任意加入の保険です。

医療機関の受診について
 みなさまが医療機関での受診がおわったら窓口で診療行為に応じた会計をお支払いいただきます。このときに医療機関から請求する会計には保険証を利用できる保険診療と保険証が利用できないケースがあります。通常皆様が医療機関で病気やけがなどで受ける一般的な診療は保険診療とよばれ健康保険が適用されるため保険証が利用できます。保険証が利用できないケースとしては、検診や予防接種など治療目的以外のもの、喧嘩など本人の不行によるケガの治療費、仕事上の病気やけがなどがあげられます。また、交通事故など病気やケガをした理由をつくった加害者がいる場合は、原則として加害者が診療費を支払うため加入している健康保険組合等からは診療費はでませんが、所定の届け出をすることで保険証を使用することが可能になります。また、治療目的であっても厚生労働省が承認していない治療や薬を使用すると治療費が全額自己負担となります。このように保険が適用されない診療のことを自由診療といいます。


保険診療と自由診療
 保険診療は、健康保険が適用になる一般的な治療のことをいいます。一方、自由診療は健康保険が適用にならず、本来健康保険が適用される治療を含め、すべての診療行為が自己負担となってしまいます。保険診療と自由診療の併用(混合診療)は現在の医療保険制度では認められていません。混合診療を原則禁止しているのは、平等な医療を受ける機会を保証した皆保険制度の趣旨に反してしまうからだと言われています。

保険診療の仕組み
 保険診療の場合の医療費は全国共通の基準が設けられており、各診療行為につき点数が定められています。実際に受けた診療行為毎に点数を計算して1点10円として計算したものを「診療報酬」とよび、そのうち保険証の負担割合にあてはめた金額を窓口で支払うことになります。
 「診療報酬」は医療の進歩や世の中の経済状況とかけ離れないよう通常2年に一度改定されます。政府が決めた改定率を基に中医協(中央社会保険医療協議会)に意見を求め、中医協が個々の医療サービスの内容を審議した結果に基づいて厚生労働大臣が定める公の価格です。

診療報酬の仕組み

  「診療報酬」は原則的に「基本診療料」、「特掲診療料」、「加算」で決まります。「基本診療料」は医療を受けたときの基本料金で、外来通院したときは初診料または再診料、入院したときは入院基本料がかかります。初・再診料には、問診、触診、聴診器を使った簡単な検査が含まれており、入院基本料には療養に必要なベッド、寝具などを利用する料金が含まれています。「特掲診療料」は検査、注射、処置、投薬、手術、画像診断、リハビリテーションなど、病気やケガの症状に合わせて行われた医療行為が該当します。基本診療料と特掲診療料は施設基準とよばれる医療設備の充実度、看護師や医療補助者の人数などにより医療機関ごと異なり「加算」の点数がつくこともあります。また、6歳未満のこどもの治療や、時間外や休日などの治療を受けた場合の加算もあります。
 また、支払いについては出来高払いと包括払いの2種類あります。出来高払いは「基本診療料」、「特掲診療料」、「加算」それぞれの診療点数すべてを合計して計算する方法です。包括払いは診療行為ごとではなく病気の種類や状態によって1日単位で点数を決める計算方式です。DPC(診断群分類包括評価)と呼ばれ、入院1日あたりの点数に、手術料、高額な薬剤料などは出来高払いが併用されています。また、リハビリテーションを目的とした回復期リハビリテーション病棟なども一律報酬にリハビリテーションなどを出来高払いと併用して計算されます。診療報酬は全国統一の公に定められた基準ではありますが、医療機関や受診状況の違いにより診療報酬が異なりますので同じ診療内容でも医療費が異なることとなります。

高額療養費について

 診療の結果、高額な検査や処方などが必要となった場合、保険証を使用しても高額になる場合があります。そのようなときに自己負担金を一定額に抑えることができる高額療養費という制度があります。年齢や所得に応じて上限額は異なりますが、1ヶ月ごと上限
金額を超えた分の医療費負担が減免される制度です。例えば、10月30日〜11月8日に入院した場合、それぞれの月(10月、11月)で医療費の合計を計算して上限を超えた月だけ高額療養費制度の対象になります。さらに直近12ヶ月間に既に3回以上高額療養費が支給されている場合は、多数該当となり、その月以降の自己負担限度額がさらに引き下がります。また、健康保険組合によっては、「付加給付」とよばれる各組合が独自に定めている上限額が設定されており、自己負担額がさらに少なくてすみます。ここでいう医療費とは健康保険が適用される部分があたり、差額ベッド代、食事代などの自費の部分については対象外となりますのでご注意ください。高額療養費の支給申請は、ご加入の公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出することで支給を受けられますが、受診日から支給まで3ヶ月程度かかります。事前に「限度額適用認定証」または「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」の交付をうけ、病院の窓口で提示すると入院・外来それぞれ上限金額を計算した金額の請求となり、窓口での支払いを自己負担限度額ですませることができます。急な入院・手術の場合は事前の申請は難しいですが、医療費が高額になることが予想される場合には交付申請することをおすすめします。また、事前交付が間に合わなくても診療と同じ月であれば限度額を適用できる場合もありますので病院の窓口に相談してみてください。高額療養費の給付申請や限度額適用認定証の発行3手続き方法については健康保険組合ごと異なりますので加入している健康保険組合に確認のうえ申請してください。

平成30年8月からの   高額療養費の見直しについて
 負担能力に応じた負担を求める観点から、70歳以上の方の高額療養費の上限額が平成29 年8月と平成30年8月の2度にわたり段階的に変更されました。現役並み所得者の外来(個人ごと)、一般所得者の外来(個人ごと)及び外来・入院(世帯)の自己負担限度額が引き上げられています。特に現役並み所得者についてはさらに3つの区分に分けられ、それぞれの区分に応じて自己負担限度額が設定されました。これに伴い、現役並み所得の高齢者については限度額適用認定証が発行されることとなりました。限度額適用認定証の提示がない場合は窓口では現役並みの一番高い限度額区分でお支払いいただき、本来の算定基準額を超えた額については高額療養費申請の取扱いにてあとから払い戻されます。なお、69歳以下の方の上限額は変更ありません。それぞれの限度額については表をご参照ください。




おわりに
 今回は医療費にかかわる仕組みについての話でした。医療機関から患者様へは診療報酬などに即して医療費を請求しております。診療報酬の仕組みは難しく、請求された金額について深く考えたことのない方も多いかと思います。突然のおおきな病気やけがなどの時に困らないよう病院会計について考えるきっかけになれば幸いです。また、医療費が高額になった場合には窓口での負担を軽減する制度などもあります。お支払いについてお困りのことがありましたら情報提供できることもあるかと思いますので医療機関で一度ご相談ください。



JA-shizuokakouseiren.