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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.10 NO.491
家族の健康を食生活から考えましょう



遠州病院

栄養科長 管理栄養士
日本糖尿病療養指導士

安本 美登里


 日本人の「平均寿命」は更新を続け、男性「81.09歳」、女性「87.26歳」となりましたが、健康で元気に過ごせる期間「健康寿命」との差が男女とも10年ほどあり、この期間の差を縮めることが重要になっています。

食の欧米化がもたらしたさまざまな変化
 もともと農耕民族であった日本人の長い歴史の中には「餓え」との戦いがあり、それに順応した体質が備わっているといわれます。
 狩猟民族だった欧米人に比べ、血糖が上昇した時に分泌されるインシュリンの分泌量が日本人は少なめです。
 戦後間もない食糧難の頃は、さつまいもや大麦、きびなどの雑穀を中心に少量の魚や野菜を食べていました。1950年代になると、肉や小麦、乳製品の輸入が始まり、学校給食で温かい料理とともに牛乳やパンが提供されるようになって日本人の食べ物の好みが変化していきました。とはいえ、1960年代の1人当たりの肉の年間消費量は6sで、月に500g程度にすぎませんでした。
 1964年東京オリンピック、1970年日本万国博覧会が開催されました。これを機に東海道新幹線や東名高速道路が開通し、食の流通経路が確立しました。またレトルト食品の開発、ファーストフードやファミリーレストラン、コンビニエンスストアーなどが広まり、24時間いつでも食べたいときに食べたいものが手に入るようになり食生活の欧米化が加速しました。   
 1962年(昭和37年)1人当たりの米の年間消費量は118.3kg。(図1)1ヶ月10kgも喫食していましたが、食の欧米化とともに米の消費量は半分程度に減り、ごはん中心の食事から、肉などの動物性食品の摂取量が増え、摂取エネルギー量に占める脂肪の割合が増加しました。これとあわせるように自動車の保有台数が増加、日常の生活で消費するエネルギー量が減ることにより体重増加がおこりました。近年の統計では、日本人の男性3人に1人、女性4人に1人がB M I (体格指数)25以上の肥満状態になっています。(図2)
図1

図2

生活習慣病の発症要因

 生活習慣病は、食習慣や運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣と関わりが深く、その発症の根底には内臓脂肪の蓄積が深く関わっていると言われています。生活習慣病のひとつ「糖尿病」は血糖を下げるホルモン「インスリン」の効きが悪くなったり(インスリン抵抗性)、インスリンの分泌量が低下することで発症すると言われ、40歳以上の日本人10人にひとりが糖尿病であるといわれています。(図3)
 インスリンの抵抗性の原因の一つには肥満がありますが、日本人の場合肥満が軽度であっても、もともとインスリンを分泌する能力が欧米人に比べて低いので糖尿病を発症しやすいのです。

こわい合併症
 予防接種が普及して、感染症の流行の勢い(規模や期間、頻度など)が衰えて、流行自体が見られなくなってくると、いつしかそれが予防接種のおかげであることも忘れがちです。予防接種はこどもさえ受ければよい、あるいは接種することも不要ではないかと、思い違いをし始めます。挙句の果てに、健康なこどもに針を刺すなんて、そして副反応までもたらして、と、予防接種の非難までし始めます。
ところが、多くの方々が、適切に予防接種をすること、必要に応じて追加接種をすることを怠るようになると、やがてウイルスやばい菌の反撃を食らうことになります。おとなも決して例外ではありません。昔、予防接種をしていたとしても、その免疫力が次第に弱まってきているからです。そのよい例がこの春の麻しん騒ぎです。そうなって初めて、「予報接種は大事なんだな」と気づいて、皆が医療機関へ駆け込みます。この春も、ワクチンが足りなくなるほどたくさんのおとなが予防接種を希望して押し寄せました。


食生活を見直しましょう

 肥満の原因は食習慣や好き嫌いなど日頃の食生活のありかたが深く関わっています。
肥満にならないために注意することはどんなことでしょう。

1、朝ごはんを食べましょう
夕食時間が遅くなったり、どか食いすることで、朝食を食べることができない方や朝食を抜く習慣のある方がいらっしゃいます。
このような方々は、インシュリン分泌のタイミングが遅れたり、分泌量が不足し、食後の血糖が下がりにくくなると言われています。
また日本人は3度の食事のなかで夕食がもっとも豪華で食べる量も多くなりがちです。日中は家事や仕事などで摂取したエネルギーを消費することができますが、夕食から就寝までの時間が短かく消費できないと、余剰に摂取したエネルギーは脂肪として蓄積され肥満に繋がります。
このようなことから、朝昼中心、夕食軽めの食生活になるよう気をつけていきましょう。

2、主食(ごはんやパン)を食べる理由
 脳や筋肉を正常に動かすためにはブドウ糖が必要です。とくに脳はブドウ糖のみをエネルギー源としているので、1時間に5g程度のブドウが必要になります。このことから、1日最低300g程度のごはんを喫食する必要があります。目安としては少なくともこども茶碗1杯程度のお米を毎食食べるとよいでしょう。

3、食後高血糖を抑えるために
 私たちは食べ物からエネルギー源や栄養素を摂取します。食べ物は糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素に分けられ、栄養素によって摂取してから血糖値に反映されるまでの時間に違いがあります。
 炭水化物は食後から急激に上昇し、食後30分から1時間に高値になります。たんぱく質は食後2.5時間から5時間で血糖値の上昇に寄与し、脂質は摂取してから少なくとも7時間以上にわたり血糖値の上昇に寄与するといわれています。
このようなことから、長時間の食後の高血糖を防ぐためには、夕食に脂肪を多く含む食事を控えることが大切です。揚げ物や中華、
チーズやクリームを多量に使用しているパスタやピザなどは昼食に食べるようにしましょう。

4、食物繊維を摂取しよう
 かっては食べ物のカスとして体に不必要なものだと思われていた食物繊維ですが、今では「第六の栄養素」として重要視されています。水に溶けないタイプ「不溶性食物繊維」と水に溶けるタイプ「水溶性食物繊維」の2種類があります。
 食物繊維は穀類、野菜、きのこ、海藻類、に多く含まれ、これらの食材はよく噛まないと食べられないので食事の食べすぎを防いでくれ、胃の中に長時間とどまるのでお腹がすきにくくなります。また糖質の吸収をゆるやかにするので食後の血糖の急激な上昇を抑えてくれます。
野菜料理というとサラダを思い浮かべる方も多いと思いますが、野菜をたくさん入れた薄味の味噌汁、炒め物、電子レンジで加熱した温野菜がお勧め。蒟蒻やきのこは煮物に、ひじきや昆布、切干大根など乾燥した食材は保存できるので野菜が高騰したときに便利な食材です。
近年、野菜を調理する時間がない、野菜を手軽に摂取できる等の理由から、青汁や野菜ジュースで代用している方がいらっしゃいますが、食べ過ぎを防ぎ、食後の高血糖を防ぐためには、よく噛んで食べることが大切です。また野菜ジュースのなかには味よく飲みやすくするために果汁が含まれているものもあり、カロリーの摂り過ぎや急激な血糖の上昇につながるものもあるので注意しましょう。

最後に
 「ご飯」は毎食必ず食べて脳にエネルギーを補給しましょう。筋肉の素となるたんぱく質源の主菜は肉に偏らず、魚、大豆製品も食べて動脈硬化を予防しましょう。
食事は1日3食だいたい同じ時間に食べましょう。ひと口は少なく、よく噛んでゆっくり食べると食べ過ぎを防ぐことができます。
 料理は食物繊維が豊富な野菜から食べはじめ急激な血糖の上昇を予防しましょう。
薄味を心がけ血圧を管理しましょう。
お酒はほどほどに。飲み物はお茶や麦茶、水など無糖のものを選び、カロリーの摂り過ぎに注意しましょう。
 定期的な歯科受診を心がけ虫歯予防しましょう。

<参考文献>
・厚生労働省HPより
・日本糖尿病協会HPより
・糖尿病治療の基本は正しい食事から
 ジョンソン・エンド・ジョンソンより



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