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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.9 NO.490
おとなの予防接種



静岡厚生病院

小児科 診療部長

田中 敏博


はじめに

 この春、外国からの観光客によってわが国に麻しん(はしか)が持ち込まれました。ゴールデンウイーク前後、各地が多くの人出で混雑するはずの時期に、お出かけ自体をためらわせるほど、ちょっとした騒ぎとなったことは記憶に新しいところです。

こどもではなくおとなが標的に

 この流行、30-40歳代のおとなが中心だったことが特徴的でした。一昔前はこどもの病気と思われていた麻しんですが、2000年代に入って予防接種の実施、さらには2回の接種が徹底さて免疫がより強化されるようになった結果、こども達はウイルスの主なターゲットではなくなりました。代わりに、こどもの頃にかかったことがなく、またその時代その時代の予防接種制度との兼ね合いで免疫が不十分であったり弱まってきてしまったりしたおとな達が、ウイルスから狙われることになってしまいました。


予防接種で感染症の流行を防ぐ

 予防接種があまり普及していなかった昔は、皆がいろいろなウイルスやばい菌による病気(感染症)にかかりました。実際にかかると、強い免疫が残って、再びその病気にかかることはなくなります。ただし、それは無事にその病気から回復した場合です。病気の種類にもよりますが、ある割合で重症化し、後遺症を残したり、あるいは死に至ったりすることがありました。だからこそ、その状態を何とかしなくてはと先人達が必死に考え、苦労を重ね、予防接種という、感染症から人々を守る方法を編み出しました。 ウイルスやばい菌が攻め込んできたと思わせる(不活化ワクチン)、あるいは病原性を弱めたウイルスでその病気に軽くかかった状態にする(生ワクチン)ことによって、ヒトのからだにそれぞれの感染症にかからないようにするための免疫力をつけることが予防接種の目的です。ただし、本物にかかることに比べたら得られる免疫力の強さは弱めで、効果のある期間も短めです。だからこそ、できるだけ多くの方々が、適切に接種を行って、必要に応じて追加接種もして、集団としても個人としても免疫力の強化や維持を図ることが大切です。


予防接種に支えられる個人の健康と社会の安全

 予防接種が普及して、感染症の流行の勢い(規模や期間、頻度など)が衰えて、流行自体が見られなくなってくると、いつしかそれが予防接種のおかげであることも忘れがちです。予防接種はこどもさえ受ければよい、あるいは接種することも不要ではないかと、思い違いをし始めます。挙句の果てに、健康なこどもに針を刺すなんて、そして副反応までもたらして、と、予防接種の非難までし始めます。
ところが、多くの方々が、適切に予防接種をすること、必要に応じて追加接種をすることを怠るようになると、やがてウイルスやばい菌の反撃を食らうことになります。おとなも決して例外ではありません。昔、予防接種をしていたとしても、その免疫力が次第に弱まってきているからです。そのよい例がこの春の麻しん騒ぎです。そうなって初めて、「予報接種は大事なんだな」と気づいて、皆が医療機関へ駆け込みます。この春も、ワクチンが足りなくなるほどたくさんのおとなが予防接種を希望して押し寄せました。


カギを握るおとなの予防接種


 予防接種は、こどものうちに、もっと言うと赤ちゃんとして生まれたら速やかに、開始すべきものです。そして、適切な方法で進めて、おとなになっても適切なタイミングで追加の接種をすることが必要です。さらに、その人ひとりだけではなく、皆がそのようにしていくことが大切です。そうして初めて、地域における感染症の流行が起きにくくなり、一人一人の一生が守られる、そういう仕組みです。
現在、とてもたくさんのワクチンがあり、それらの接種をせっせと受けることになるこども達は大変です。が、予防接種は決してこども達だけが受けるものではありません。各種の感染症の流行がなくなってきている今だからこそ、その状況を維持するために、ご高齢の方も含めて、大人も立派な対象者になります。こどもの頃に備えた免疫をおとなになってからも再強化して安定させることが、もしもこどもの頃に病気にかかることも予防接種をすることもなかった場合にはおとなであってもこども並みにしっかりと接種を受けることが、とても大切です。個人の健康と社会の安全を守っていくために、おとなの予防接種は重要なカギとなっていくでしょう。


おとなも予防接種を受けましょう!

 おとなになってから予防接種を受けるなんて、と思われている方々は、表をご覧ください。今さら予防接種を受けなくても、何事もなく過ごしていける方がほとんどでしょう。でも、「ほとんど」であって、「全員」ではありません。少数ではありますが、毎年一定の数、「予防接種で防げる病気」で大変な目に遭っている方々がおられます。
病気にかかってからの後悔はもったいない、防ぐための予防接種はいつでも誰でも受けることができるのですから。


「おとなの予防接種外来」

 当院では、小児科において、「成人予防接種外来」を開設しています。年齢に関係なく、様々な予防接種を実施すると共に、それに関連した事項のご相談にも対応しています。どうぞご利用ください。



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