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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.7 NO.488
乳癌検診の実情とマンモグラフィ



リハビリテーション中伊豆温泉病院

放射線科

齋藤 麻里


 近年、日本人の乳癌の罹患率が約一一人に一人と言われております。著名人の乳癌の話を連日テレビやインターネットでよく耳にする事があるかと思います。そういった事からか検診に来られる方の中には乳癌についての知識をある程度持った方が多いなという印象を受けています。そこで今回は、基礎的な乳癌の話から少し踏み込んで高濃度乳房(デンスブレスト)についての説明から当院で今年新しく更新した最新のデジタルマンモグラフィ装置についても紹介させていただきます。

高濃度乳房について

 まず、乳房は乳腺、脂肪、皮膚、乳頭、乳管、小葉などから構成されています。
(図1)

          図1 乳房の構造

 マンモグラフィでは乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。マンモグラフィ診断では乳腺と脂肪の割合と分布を(極めて)高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性の四つのタイプに分類しています。(図二)このうちの(極めて)高濃度と不均一高濃度のタイプの乳房を高濃度乳房と言います。

             図2 乳房の構成

 この高濃度乳房の頻度はどのくらいなのか(図三)にまとめました。表から罹患率の多いと言われている四十代の高濃度乳房は約六割いることが分かります。また、加齢と共に脂肪性乳房の割合も増えています。これは加齢や閉経後に伴い、乳腺が萎縮して脂肪に置き換わったためであると言えます。
 そして、日本人を含むアジアの女性は欧米の女性に比べると高濃度乳房の比率が高いと言われてます。要因に関しては体質の他、年齢、ホルモン環境などが関係していると言われていますが確実な事はまだ分かっていません。

           図3 高濃度乳房の頻度

 ただ、高濃度乳房は乳腺実質の割合が多い状態の事を言うものであり、病気(異常)の状態ではありません。
 マンモグラフィでは、左右の乳房全体を圧迫してX線撮影し腫瘤、細かな石灰化、乳腺の歪みなどが無いかを診ます。国が提言している日本乳癌学会のガイドラインでもマンモグラフィを行うことが基本とされており、死亡率低減の有効性が証明されています。ところが腫瘤も歪みも石灰化も画像では白く写ってきます。したがってこの高濃度乳房だと脂肪性の乳房よりもこれらの異常が見つかりにくくなる場合があります。雪山で白ウサギを探す様なものという表現がされています。
 世界的な医学雑誌『Lancet』誌で四十代女性約7万6千人の協力で厚生労働省の研究事業の一つとして、マンモグラフィのみの検査群とマンモグラフィと超音波検査の併用群の乳癌の発見率を比較(東北大学客員教授・名誉教授 大内憲明先生研究 J−START HPより)したところ、併用群の方が早期乳癌の発見率が約1.5倍高かったという研究結果が分かりました。そういったことより厚生労働省や乳癌学会から自治体にマンモグラフィと超音波の併用検診に向けての話が出てきています。
 今現在、日本での乳癌検診の結果の通知は「異常なし」か「要精密検査」のみで乳房濃度に関しては通知されていない施設の方がほとんどです。そして高濃度乳腺以外でも超音波検査の重要性が乳癌学会でも言われております。「知る権利」として本人にそれぞれの乳腺濃度を通知するべきではないかという議論がなされています。
 一方、アメリカでは全五十州の内、約二十七州で乳腺濃度の通知が行われるようになっています。(2018年2月現在)


高濃度乳房について

 当院では平成三十年一月二十二日より、新しくデジタルマンモグラフィ装置に更新されました。
今まではアナログシステムでフィルムでマンモグラフィ撮影していました。そして、撮影したフィルムを暗室で現像していました。自動現像機で現像するまで撮影した画像の確認もできませんでした。さらに写真が出来るまで一枚2分程時間もかかりました。わかりやすい表現で言いますと、デジタルカメラとフィルムカメラ(コンビニなどでよく売られていた使い捨てカメラなどフィルムの現像を必要とするカメラ)との違いに近いかと思います。今回デジタル処理に変わったことで自動的に画像処理がなされ、撮影した画像をわずか七秒で確認する事ができるようになり、検査時間が大幅に短縮しました。そしてフィルムではなく、モニターで画像を見ることができるようになったことから拡大や白黒反転させながら診断ができるようになりました。今までのようなフィルムの管理が無くなり、診断に重要な過去のマンモグラフィの画像との比較もモニタで容易に出来るようになりました。
 被曝量も少ないX線量で画像を作れるようになり、以前の装置の時の約三分の二くらいまで低減しました。
 新しい装置での受診者の方々の声としましては、乳房を挟む圧迫板や手すりの部分のデザインが変わり、恐怖感や痛みが減ったとの声を多数いただいております。

ホロジック社 SELENA Dimensions

体調と検査

 やはりマンモグラフィ検査の『痛み』に関しましては個人差があります。また、生理前の乳房の張りや痛み、体調が悪い場合は余計に痛みや苦痛を感じたりする事があります。自覚症状のない検診などの場合は生理の後半や体調の良いときに受けて頂く事をお勧めします。ただ、いつもと違うしこりやひきつれ、腫れなどを感じることがありましたら生理周期など関係なくすぐに受診をお願いいたします。
腰痛や膝の痛みがあって、立つのがつらい場合は椅子を使って検査することも可能ですので分からないことがありましたら撮影技師に相談して下さい。

<引用・参考文献>
・国立がん研究センター がん情報サービスHPより
・KONICA MINOLTAピンクリボン運動(乳がん基礎知識)のHPより
・デンスブレスト対応ワーキンググループ 高濃度乳房の頻度HPより



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