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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.5 NO.486
上手につきあいましょう 更年期障害



静岡厚生病院

産婦人科 診療部長

石橋 武蔵


はじめに


 仏教の教えでは人間としてこの世に生を受けた以上、避けて通れない四つの苦しみとして「生老病死」を挙げています。しかし、人間の歴史は、古代の権力者が不老不死を求めたことなどを含めて、この不可避な苦しみに抗うことに挑戦してきました。極言するならば、医学の歴史もまたいかにこれらの苦しみから逃れるか、または逃れられないなら少しでも軽く出来ないかの試行錯誤の連続でもありました。その多くは迷信的なものでしたが、当時の人々が真剣に試みた行為の中で明らかに効果があったもの、それが後に科学的検証もされた上で現代の医療行為につながっていったのも事実です。

 こうした「生老病死」への挑戦、不老不死の飽くなき追求は、男性のそれと比べて女性の場合、特に強かったであろうことは歴史上の裏付けがあります。現代の感覚ではおよそ非常識かつ非道ではありますが、加齢と共にかつての美貌が失われていく女性権力者がその老化に抗う手段として若い女性の血を求めたといった話は、洋の東西を問わず枚挙に暇がありません。一方で、皇帝や王の立場にあった男性が同様のことをしたような話は、ないとは限らないでしょうが、女性よりは圧倒的に少なそうです。これは何を意味するのでしょうか。


 前振りが長くなってしまいましたが、私は個人的に、これこそが女性の若さと老化をコントロールする何かが女性の血液中にあることを、直感的、時には経験的に女性は気付いていた証ではないかと思います。証拠はありませんが(笑) そして、この「何か」〜現代では女性ホルモンと総称される内分泌物質〜が徐々に何年かかけて減少してくる時期、それが更年期と言ってよいでしょう。

 よく混同されやすいのですが「更年期」と「更年期障害」という言葉は字数分の違いがあります。更年期とは妊娠可能とされる性成熟期から、自然妊娠はまず無理な老年期にかけての過渡期、具体的には閉経の前後約5年分ずつ(個人差あり)の時期を指します。この時期には、卵巣から分泌される女性ホルモンが何年かかけて減少していきます。加えて人によっては自律神経も不調を来たし始めます。文字通りの老化の一環ですから、50代60代と歳を重ねる女性なら誰もが通る道なのです。
 そして、ここまで書くと見当がつかれると思いますが、更年期障害とはこの時期に起こり得るさまざまな症状を指します。起こり得るということは、裏返せば、ほとんど症状が出ない人、出ても気にならない人もいることを意味します。

 更年期は誰もが通るものなのに、その時期に心身が苦しむ人とそうでない人がいるのは一見不公平で悲しいですね。その差が何に由来するものなのかは不明な点も多く、恐らくひとつやふたつの理由で説明するのは不可能でしょう。
 ですから、治そうと思うよりも、つきあっていこうと思う方が適切かもしれません。根治するには若返るしかありませんが、そんな方法があれば私も知りたいです(笑) うまくつきあうことで、いつの間にか更年期を乗り切った、それが理想ではないでしょうか。

ちょっと待って!その症状は更年期障害?

 更年期障害の代表的症状には、ほてり感、発汗、動悸、不眠などの他に、うつ気分などの精神神経症状もあります。これらは本人にしか実感出来ないものが多いため、診断の基本はまず問診となります。一方で、これらの中には更年期障害以外でも十分起こり得るものもあり、簡単に更年期障害と思い込むのは危険です。重大な循環器系疾患や精神疾患などを除外する必要があります。
 問診やその他補助としての血液検査等を経て更年期障害と診断されたら、その症状の程度や患者本人の希望を考慮して、経過観察か要治療か後者ならどうするかを検討します。


効果抜群!ホルモン補充療法

 更年期障害の主な治療法がこれです。女性ホルモン(エストロゲン)減少に伴うほてり感や動悸などが目立つ場合には、ホルモン補充療法がお勧めです。文字通り、人工的に精製した女性ホルモン製剤を投与することで症状改善を図ります。経口薬(飲み薬)や経皮薬(皮膚パッチ)といった種類がありますが、近年では後者の方が楽で使用を忘れないため人気があります。
 なお、ホルモン補充療法は乳がんなどになる可能性が高くなると聞いて不安になる方もおられますが、統計学的に問題のないレベル(補充療法をしていない人に乳がんが発生する確率とほぼ同等)とする見解が主流です。過度に心配する必要はありませんが、がん検診は必ず受けましょう。

怖くない!抗うつ薬

 更年期障害のうち、女性ホルモン減少に伴う症状以外に、神経障害としてのうつ気分などが目立つ場合もあります。ホルモン補充療法もある程度は効果が認められていますが、気持ちが相当落ち込むうつ病状態に至ると、もはやホルモン補充療法単独では難しくなります。
 この場合は、ある種の抗うつ薬(商品名「パキシル」等)を思い切って使うのが手です。精神科治療薬と聞いて尻込みされる方も少なくないのですが、効果は早く現れます。

地道だけど安心!漢方療法

 ホルモン補充療法や抗うつ薬の利点は上記の通りですが、人によってはそれでも不安に感じる方もおられます。その場合は、使用への安心感が大きい漢方療法を試してみましょう。
 更年期障害に効く代表的な漢方薬として、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしふくりょうがん)といったものがあります。症状に応じて使い分けますが、漢方療法で大事なのは、即効性を求めないこと、裏返せば、地道に続けてみることです。数日服用しただけで効果の判定は困難であり、この点がホルモン補充療法などと比べるともどかしい所かもしれませんが、1ヶ月以上続けてみると症状改善を自覚する場面が増えてくるでしょう。

助成の活力はおしゃべりから!

 先述した通り、更年期は女性の老化の一環です。誰もが通る道です。「同病相憐む」という言葉がありますが、その辛さや寂しさを最も理解してくれるのは、更年期障害に悩む同年代や先輩の女性達です(男性に語っても理解されないばかりか、面倒臭がられる恐れがあります(笑))。そういう人同士で悩みを語り合い自分だけが苦しい訳ではないと認識することは、幾分か心が軽くなるきっかけになるかもしれません。話すことで楽になる・試してみる価値はあると思いませんか?
 以上、更年期障害とのつきあい方について要点をまとめてみました。どういうものを選択するかは、症状の種類や程度を問診などから的確に見極めて、かつ患者の希望を考慮することが大事なのをご理解頂けたのではないでしょうか。

 当院では、通常の午前中の外来診療に加えて毎週月曜午後に更年期外来(原則予約制)を行って参ります。患者ひとりにつき数十分とることで、更年期障害に関する悩みその他もじっくり聞けるようにしております。もっと話を聞きたい、聞いて欲しい、という方は是非お問い合わせ下さい。

予約・お問い合わせ

 JA静岡厚生連 静岡厚生病院

   産婦人科外来(14時〜16時)
   TEL:054-271-7177




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