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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.3 NO.484
ロコモティブシンドローム
〜いつまでも自分の足で歩けるために〜



リハビリテーション中伊豆温泉病院

作業療法科

田代 涼子


◆健康長寿のためにロコモを知りましょう

 私たちの平均寿命は延び続け、日本はいまや世界屈指の長寿国となっています。しかし、一方ではある調査によると自立した生活を送れる期間「健康寿命」が、平均寿命より男性は約9年、女性は約12年も短くなっています。これは、支援や介護を必要とする期間が平均で9~12年もあるということです。平成25年国民生活基礎調査によると、介護が必要になる原因の第1位は、「転倒・骨折」、「関節疾患」などの運動器疾患です。長い人生、いつまでも自分の足で歩き続けていくためには「健康寿命」を延ばすことが大切です。

 「ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)」は、骨や関節、筋肉、神経といった運動器の衰えが原因で、「立つ」、「歩く」といった機能が低下している状態をいいます。この状態が進行すると要介護や寝たきりになるリスクが高くなります。平均寿命は延びましたが、私たちの運動器は元々それほど長持ちするようにはできていません。いつまでも自分の足で歩き続けていくためには、定期的に運動器のメンテナンスを行いながら、大切に使い続ける必要があります。

◆ロコモを引き起こす疾患

 運動器には大きく分けて、体を支える「骨」、滑らかな動作をサポートするように動く「関節軟骨・椎間坂」、体を動かす「神経・筋肉」の3つがあります。加齢や遺伝、他の疾患、運動習慣の欠如などさまざまの要因によってこれらの運動器の機能が低下することで、骨粗しょう症※1、変形性膝関節症※2、腰部脊柱管狭窄症※3などの疾患が生じます。これらは、更なる運動器の低下を引き起こし、「立つ」、「歩く」といった機能の低下を招くことで、支援や介護が必要な状態となります。

※1 骨粗しょう症とは、骨強度(骨密度と骨質)の低下により、骨折しやすくなった状   態をいいます。骨折によりロコモのリスクが高まります。
※2 変形性膝関節症とは、関節の軟骨がすり減り、痛みや曲げ伸ばしの制限が生じる状    態をいいます。痛み、関節可動域の低下により運動量が低下し、ロコモのリスクが   高まります。
※3 腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の変形による神経圧迫のため、足の痛みやしびれなど    が生じる状態をいいます。痛みやしびれにより運動量が低下し、ロコモのリスクが   高まります。

 年齢にかかわらず思い当たる症状などがある場合には、@生活習慣を見直す、A運動習慣を身に付ける、B医療機関を受診するなどの適切な対処が必要です。


◆まずは、運動器の状態のチェック

 ロコモを予防するためには、自分の運動器の健康状態を把握することが重要です。簡単にチェックする方法に『7つのロコチェック』があります。1つでも当てはまればロコモの心配があります。


ロコモの心配がある場合は『ロコモ度テスト』によって、さらに詳しくみていきます。ロコモ度テストは、以下の3つのテストからなっています。


ロコモ度はこれら3つのテストの総合判定で評価します。判定は専門機関で行うことができます。
        
 (写真1)立ち上がりテスト(40p)       (写真2)2ステップテスト

◆ロコモを予防する

 運動器は、自分の意思で動かすことができます。そして、筋肉は何歳になっても鍛えることができます。「運動器の寿命は自分で延ばす」という意識を持ち、今からロコモ対策を始めていきましょう。
 ロコモを予防するための基本は、適度な運動とバランスのよい食事です。大切なことは、運動を毎日続けること、筋肉をつくるために欠かせないタンパク質を積極的に摂ることです。
 ここで、自宅でも簡単にできる「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」について、「スクワット」「片脚立ち」の2つの運動をご紹介いたします。

・ロコトレ1「スクワット」
 下半身を鍛えるための運動です。椅子に腰掛けるときの動きをイメージして行いましょう。深呼吸をするペースで5〜6回、1日3セットを目安に行いましょう。


・ロコトレ2「片脚立ち」
 バランス能力を鍛えるための運動です。目を開けた状態で床が足につかない程度に片足を上げます。転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう。左右各1分間、1日3セットを目安に行いましょう。

◆ロコモ教室のの紹介

 ロコモ予防を一人で始めるのはとても難しいことです。そこで、中伊豆温泉病院では『ロコモ教室』を開催しています。

        (ロコモ教室の様子)

 ロコモ教室は、1教室10名の少人数制とし、「ロコモ度テスト」、「ロコモスキャン」、「リズム体操」、「ロコトレ」、「栄養教室」などを行っています。
 
     (ロコモスキャン)          (栄養教室の様子)

 運動の重要性を伝えるために、「ロコモについて」や「歩き方」など様々な講義を行っています。また、参加者には毎日「自主トレーニングチェック表」に記載を行っていただき、毎回の教室で確認を行っています。
 年齢とともに衰えてしまう体力や身体機能を維持向上することで、歩行や椅子からの立上がりなど日常生活動作をしやすくするほか、一緒に運動することでのコミュニケーション、楽しく取組み健康維持と合せて、ロコモ予防をするための運動を始める契機としてみてはいかがですか?
 いつもまでも生き生きと、そして健康な毎日を過ごし介護を必要としない生活を実現していきましょう。



JA-shizuokakouseiren.