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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2017.12 NO.481
「予防接種」

清水厚生病院

小児科 非常勤医師
京極 朋子

◆予防接種とは

 予防接種とは、感染症の原因となるウイルスや細菌といった病原体を弱毒化したり不活化したものを投与することで、体の中に「抗体」をつくり、その病気にかからなくしたり、もしくはかかったとしても重症化しないようにすることを目的としています。
                              
 医療は日々進歩していますが、今でも治療法がなく、ときには命に危険の及ぶ感染症がまだたくさんあります。思わぬ合併症や後遺症のために今までと同じようには過ごせなくなることも少なくありません。かからずに済ませられるなら、それに越したことはありません。流行が起きてからでは間に合いませんので、予防接種を受けて前もって備えておきましょう。

◆「任意接種」のワクチンも大切なワクチンです


 日本では予防接種は大きく分けて「定期接種」と「任意接種」の2つがあります。定期接種は市町村からの公費の補助があり、接種時期が近づくと郵送などでお知らせが届きます。一方の任意接種は基本的には自費で接種するワクチンなので、お知らせは来ません。「任意」だから受けなくてもいいわけではなく、定期接種と同等に大切なワクチンですので、かかりつけの医療機関で上手にスケジュールを組んでもらいましょう。もしワクチンを受けずにかかってしまった場合、楽しみにしていた学校の行事に参加できなくなってしまった、付き添いのために数日仕事に行けなくなったなど、かかってしまった本人はもちろんですが、家族の精神的・肉体的負担もかなり大きいです。

◆ワクチンの種類と接種期間について


 ワクチンには大きく分けて「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の3つの種類があります。生ワクチンと不活化ワクチン・トキソイドは接種すると次のワクチンを接種できるようになるまでの期間が異なりますので、間違いを防ぐためにも、予防接種を受けるときには必ず母子手帳を医療機関へ持参しましょう。
◆同時接種と副反応について

 他の先進国とくらべて、日本では受けられる予防接種の数が少ないという状況がしばらく続いていました。しかし、ここ数年の間に公費の補助で受けられるワクチンがいくつか増え、以前のように1種類ずつ接種しているのでは必要な時期に必要なワクチンを受けることが難しくなってきたため、最近は同じ日に2種類以上のワクチンを接種することが主流になりつつあります。これを「同時接種」といいます。海外では日本よりもずっと前から同時接種が行われており、同時に複数のワクチンを接種してもそれぞれの抗体はしっかりとつくことがすでにわかっています。また、ワクチンを受けたところが赤く腫れたり、接種後に熱が出たりすることがあります(これを「副反応」といいます)が、同時接種したからといって単独接種のときよりも副反応が特別に強く出たり、頻度が高くなることもありませんので、ご安心ください。そうはいってもやっぱり同時接種は心配、という場合は、受診回数が増える、勧められている接種時期から遅れがちになるなどのデメリットもありますが、もちろん今までどおりの1種類ずつの接種もできます。ご相談ください。
◆それぞれのワクチンとその病気について

ここでは任意接種のワクチンと、ここ数年の間に定期接種になったワクチンを中心にご紹介していきます。

・B型肝炎ワクチン

 B型肝炎はこどものうち、特に3歳までに感染すると、症状は出ないけれどもずっと体の中にウイルスがとどまった状態(「キャリア」といいます)にとてもなりやすく、将来、肝炎を起こしたり肝硬変や肝臓がんに進行していくことがあります。症状が出ないので、いつ感染したのか、自分が感染しているのかどうかわからないまま過ごされている大人のひとも少なくありません。
 感染の経路として、出産の際にお母さんから赤ちゃんへ感染する「垂直感染」と輸血や体液を介した「水平感染」があります。垂直感染に対しては出生後すぐからの感染予防のためのプログラムが日本でもすでにすすめられています。水平感染についてはいつどこから感染するかわからないので、すでに多くの国々では生まれたすべての赤ちゃんに出生後すぐからのB型肝炎ワクチンの接種がされています。日本でも2016年10月から定期接種になりました。

・水痘ワクチン


 2014年10月から定期接種になりました。
 水痘は「みずぼうそう」ともいいます。感染力がとても強く、発症すると体中に皮疹が出ます。ときおり熱が出ることもあります。特別な治療をしなくても1週間くらいで自然に治りますが、自然に水痘にかかった場合は、ずっと体の中に水痘の原因となるウイルスがとどまり続け、ストレスや体調不良などで体が弱ったときに「帯状疱疹」という形で出てきます。

・おたふくかぜワクチン

 おたふくかぜは「流行性耳下腺炎」や「ムンプス」とも呼ばれ、発症すると熱が出たり、顎の下や耳の下が腫れたりします。数日から一週間程度で自然に治りますが、無菌性髄膜炎や難聴、脳炎、精巣炎、卵巣炎などの合併症を起こすことがあります。おたふくかぜによる難聴は一度なってしまうと今のところ効果的な治療法がなく、難聴の程度が重たいのが特徴です。まれに両耳の聴力を失ってしまうこともあります。
 任意接種ですが、合併症予防のためにも2回のワクチン接種がすすめられています。
・日本脳炎ワクチン

 日本脳炎はブタから蚊を介してヒトに感染する病気で、日本を含めたアジア地域で主に流行しています。ワクチンがまだない1950年ごろは年間数千人の発症の報告がありましたが、日本脳炎ワクチンが開発されて接種が始まったおかげで発症数はぐんと減り、ここ数年では年間数?10人程度となっています。日本脳炎ウイルスをもった蚊に刺された全てのひとが日本脳炎になるわけではありませんが、脳炎になってしまうと命にかかわることがあったり、命が助かっても重たい後遺症を残すことが少なくありません。
 すでに定期接種に組み込まれており、通常3歳から接種を始めますが、日本脳炎流行地域に渡航予定のひとや日本脳炎にかかったひとが発生した地域にお住まいの方などは生後6ヶ月から接種開始することができます。かかりつけの先生とご相談ください。

・ロタウイルスワクチン
 ロタウイルスによる胃腸炎は冬に流行します。少ないウイルス量でも感染が成立するため、保育園などであっという間に大流行することがあります。症状は嘔吐や下痢ですが、ひどい場合には脱水やけいれん、腎不全、脳症なども起こすことがあり、入院加療が必要になることも少なくありません。
今のところ任意接種です。生後6週から接種できますが、生後2ヶ月から接種できるヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンといっしょに接種を始めるのがおすすめです。
・インフルエンザワクチン

 毎年冬になると流行するインフルエンザにはA型とB型とがあり、発症すると発熱や鼻汁咳嗽、関節痛、頭痛、倦怠感などの症状が出ます。大抵は一週間くらいで自然に治りますが、ひどくなると肺炎や脳症などを起こすことがあり、時に命にかかわることがあります。
インフルエンザワクチンはインフルエンザの感染を完全に防ぐことはできませんが、もしかかったとしても重症化を防ぐ効果があるといわれています。流行が始まる前に2回目の接種が終わるようにします。
◆それぞれのワクチンとその病気について
 年長のこどもや大人の方の中には、もともとワクチンを接種する機会がなかったり、以前は1回接種だったなどの理由で抗体がしっかりとついていない場合があります。受け忘れているワクチンがないか、ご家族みなさんで母子手帳やお手持ちの記録をご確認ください。
 ワクチンのことをもっと知りたい方は、インターネットサイト「NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会」をぜひご覧ください(http://www.know-vpd.jp/)。とてもわかりやすくワクチンのことが書かれています。「VPD」とはVaccine Preventable Diseasesの略で、「ワクチンで防げる病気」という意味です。スマートフォン対応の予防接種スケジューラーアプリもこのサイトから入手できますので、ワクチンのスケジュール管理に役立ててください。
 予防接種には、あらかじめワクチンを接種しておくことで自分をその感染症から守る、ということ以外に、「自分のまわりのひとへの感染の流行を防ぐ」という別の目的もあります。予防接種を受けて、自分と自分のまわりにいる大切なひとの健康を守りましょう。
◆参考文献:
 NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会HP



JA-shizuokakouseiren.