JA静岡厚生連。保健・医療・福祉の事業を通じ地域の暮らしに根ざした病院として社会の構築に寄与する。

JA静岡厚生連 〒422-8006 静岡県静岡市駿河区曲金三丁目8番1号
TEL : 054-284-9854
お問合せ・ご相談
交通案内 リンク プライバシーポリシー サイトマップ


ホームへ 理念・沿革・概要 基本方針 患者様への姿勢 事業内容 施設整備事業

JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2018.1 NO.480
車椅子の役割について
〜機能と構造〜



リハビリテーション中伊豆温泉病院

作業療法科 主任

金子 智治


車椅子とは

 車椅子とは、移動する能力に困難が生じた際に、それらの機能を補う目的で使用される福祉用具です。車椅子の構造は、主に移動するための
車輪と体を支えるための座席で構成されています(図1)。
 車椅子がもつ機能には、「移動」「座る」「移る」の3つがあり、これらの要素は使用するのに重要な機能となります。

1、移動
 車椅子の移動方法には、利用する人が駆動する方法と介助者が手押しハンドルを押して移動する方法があります。

@自走用車椅子 後輪が20〜24インチ程度でハンドリムがついており、それを操作することにより自力で駆動できる車椅子のことです。駆動方法としては、両手で行う方法、片手と片足で行う方法、両足で行う方法があります。

A介助用車椅子 介助者による操作のしやすさと狭い場所での取り回しに配慮して、駆動用のハンドリムがなく、後輪が14〜16インチとコンパクトな車椅子になっています。手押しハンドルには介助者用のブレーキが取り付けられています。

B6輪車椅子 一般的な車椅子と異なり、駆動輪が車椅子のほぼ中央に位置するため、曲がったり回ったりするときのスペースが小さくすみます。屋内の限られたスペースで旋回し移動することに適した車椅子です。前輪には小さなキャスター2個と真ん中には大きな駆動輪が2個あり、そして後輪にも前輪と同様のキャスターが2個の計6個で構成されています。

2、座る
 座位は、不安定で長い時間保つことが難しい姿勢です。車椅子を使用する人は、体に何らかの障害や変形があることが多く、座位保持の能力も個々人により差があります。そのため、不適切な姿勢を取り続けて関節や筋肉に痛みが生じてしまう場合もあります。
 車椅子には、座位姿勢を保つ部分としてシート、バックサポート、アームサポート、フットサポートがあります。これらのパーツを利用する人の体や座位保持能力に合わせることにより、よい姿勢を保ちやすくなります。障害が重症の場合には、リクライニングやティルトなど姿勢変換ができる機能を選択します。

3、移る
 生活の場面では、車椅子からベッド・便座などの様々な場所への乗り移りが行われており、これらの動作を安全で楽に行えることが重要になってきます。車椅子では、横開きや脱着式のレッグサポートにしたり、脱着式のアームサポートを選んだりすることで、移り先の近くに車椅子を配置することができます。また、乗り移りの安全性を高めることが出来ます。(図2)
 

                      
車椅子の選び方

 車椅子の種類は、日本工学規格に示された分類によると、大きく分けて自走用と介助用に分類されます。車椅子は、利用する人の能力を最大に引き出すことができるように選択します。車椅子を選ぶときは、体の状態や使用目的、環境によって車椅子の種類・機能を選ぶのが重要です。また、車椅子の各部の寸法を利用する人の体の状態に合わせることが大切です。車椅子を選ぶ際は理学療法士や作業療法士、福祉用具プランナー等の専門家と相談しましょう。

車椅子のクッションについて

 車椅子にクッションを使用する目的は、
@座った時にお尻にかかる圧力を分散する。
A姿勢の傾きを調整する。
B動きの手助けをする。
といった3つに分けられます。

クッション素材の種類
 車椅子のクッション・パットの素材は
@ポリウレタンファーム
A空気室構造
Bゲル(ジェル)
C3次元網状構造体
D複合
の5種類があります。

クッションの選び方
@ 体圧分散 
体の接する面積を増やし、一か所に圧がかからないようにクションを選びます。
A 安定性 
クッションの形状や素材により体の安定性は変化します。体との面積が広いクッションを選びます。
B 厚さ
クッションは、一般的に薄いものよりも厚いほうが底にとどかなくてよいでしょう。しかし、厚いクッションでは、ハンドリムやアームサポート、フットサポートが体から離れてしまうので注意する必要があります。
 車椅子のクッションには、素材・形状などさまざま種類がありますので利用する人の身体機能や使用目的に合っているか確認することが重要です。

車椅子の使用方法
 
1、広げ方
 日本では狭い家屋状況に配慮し、折りたためる車椅子が普及しています。車椅子の広げ方は、アームサポートや手押しハンドルを使ってアームサポートを少し広げます。次にシートの両端のシートパイプ部を下方へ押し下げます。シートパイプとフレームの間に手指をはさまないように注意しましょう。

2、たたみ方
クッションを取り外し、フットサポートを跳ね上げましょう。そして、シートの前後の中央を上に引き上げることでたたむことができます。

3、平地走行
自分で駆動する場合は、ハンドリムを動かします。親指をハンドリムの上に置くようにして握ると効率よい漕ぎ方ができます。介助者がいる場合は、介助者は車椅子の真後ろに立ちましょう。手押しハンドルを両手でしっかり握ります。車椅子に乗る人は、アームサポートから外に手を出さず、足はフットサポートに乗せます。動かす前に必ず声をかけ、前後左右に注意しながらゆっくり進みましょう。

4、坂道・スロープ
坂道を上るときは前進で昇ります。急な下り坂の時は、後ろ向きでおります。介助者用ブレーキがついている場合は、降りる時ブレーキを操作しながら速度を調整します。その時、ブレーキは、左右同じ力をかけて降りるようにしましょう。

5、段差を昇る時
段差の前で一旦止まります。介助者はティッピングレバーに足をかけて、手押しハンドルを後方へ引くように前輪を上げます。同時に車椅子を前方に押し後輪が段に触ったら前輪を段差の上におろします。そのあと、後輪を押し上げて段を乗り越えます。このとき手押しハンドルを持ち上げすぎて車輪が浮かない様に注意しましょう。(図3)

6、段差を降りる
後ろ向きで、後輪を段の角にそわせながらゆっくりと降ります。そのまま後ろに下がって前輪がおろせるところまで来たら、ティッピングレバーに足をかけながらゆっくりとおります。

7、砂利道
砂利に前輪を取られたりしますので前輪を上げた状態で進みましょう。

車椅子のメンテナンスで確認するポイント

 車椅子を快適及び安全に使用するには、定期的に以下の項目を点検する必要があります。
@ 車輪はきちんと固定されてスムーズに回りますか?
A 車輪の空気は十分に入っていますか?
B ブレーキは、しっかりきいていますか?
C各部のねじがゆるんでいませんか?
D掃除は定期的にしていますか?

車椅子を使いたいとき

 車椅子の購入方法にはいくつかあり、使用する制度により相談する窓口は変わります。病院に入院中の方は、医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。自宅での生活で車椅子を使用したい方は、ケアマネージャー・地域包括支援センター・市役所保健福祉課等に相談しましょう。

1、介護保険
 介護保険では、車椅子に対する給付を受けることができます。介護度が要介護2以上であることという条件があります。ただし、要支援、要介護1の方については特例があり、日常的に歩行が困難な方と日常生活範囲において移動支援が必要と認められた方は、給付を受けることができます。手続きには、認定調査が必要になります。費用負担は、9割が介護保険でまかなわれ、利用者負担は1割になります。

2、身体障害者福祉法
 身体障害者手帳を所持している方が、補装具としての支給を受けることができます。ただし、介護保険、労働者災害補償保険の対象でない方に限られます。基準範囲内で、9割が支給され、利用者負担は1割になります。基準範囲を超えた部分は、全額自己負担になります。

3、労働者災害補償保険
 労働者が業務上や通勤中に怪我や病気で一定の機能障害が残り、社会復帰に車椅子が必要と認められた場合に支給されます。車椅子の購入にも適用できますが、基準額を超えた部分は、自己負担になります。

暮らしと車椅子
 日常生活においてイスに座る目的は、食事・排泄・入浴・作業活動・家族との会話など多岐にわたります。「座位」が生活への第一歩になります。
 高齢者で問題となる寝たきりの状態が続くと、心身機能が低下し、筋力低下や変形・拘縮、心肺機能が低下してきます。このような状態にならないために、一定時間を適切な座位で過ごすことは寝たきり予防のためにも大事なことになります。そのためにも適切な車椅子を選ぶことが大切になってきます。
〈引用・参考文献〉
・ 在宅生活で使える! 福祉用具ガイド 総合リハビリテーション 2017.5
・ 福祉住環境コーディネーター検定試験 2級公式テキスト
・ 福祉用具プランナーテキスト 財団法人テクノエイド協会



JA-shizuokakouseiren.