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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2017.2 NO.471

インフルエンザQ&A


遠州病院

臨床検査科

岡田 宇史


◆はじめに
 今年度もインフルエンザの流行期となりました。季節性インフルエンザは流行性があり、一旦流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が拡大します。また、4月、5月まで散発的に流行す
ることもあります。皆様の中にも今までにインフルエンザにかかったことがある方もいらっしゃると思います。
 日本では、数千万人が毎年インフルエンザワクチンを接種していますが、毎年の流行を抑えるには至っておりません。ワクチンは体の中に入ったウイルスの増殖を完全に抑える働きはありません。
 今回はインフルエンザに関する素朴な疑問をQ&A方式で説明させて頂きます。

Q.インフルエンザにかかったら(家で)どのようにしたらよいですか?

A.
 まず早めに医療機関を受診して適切な治療を受けてください。
 家では安静にして、睡眠を十分にとり、休養する事をお勧めします。また高熱のため、脱水状態をきたしやすいので、スポーツドリンクなどで十分な水分を補給する事も大事です。インフルエンザは咳、くしゃみ、唾などの飛沫により他の人にうつします(飛沫感染)ので以下の事に注意してください。
 ○こまめにうがい・手洗いを心がける
 ○時々、部屋の空気を入れ換える
 ○部屋の湿度を適度(50%〜60%)に保つ
 ○ 鼻汁、痰などを含んだティッシュは直ぐにゴミ箱に捨てる
 ○マスクを着用し他人にうつさないようにする

 飛沫を浴びないようにすればインフルエンザに感染する機会は大きく減少します。
 飛沫感染対策ではマスクが重要です。特に感染者がマスクをする方が、感染の拡散を抑える効果が高いといわれています。インフルエンザが流行してきたら、特に高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、疲労気味、睡眠不足の方は、人混みや繁華街への外出は控えた方がよいです。無理をして職場や学校に行かないようにしましょう。やむを得ず外出する場合はある程度の飛沫等を防ぐことのできる※ 不織(ふしょく)布(ふ)製マスクを着用し、外出時間は極力短くしましょう。また、外出後の流水・石鹸による手洗いは手指などについたインフルエンザウイルスを物理的に除去できます。インフルエンザウイルスはアルコールによる消毒でも効果が高いのでアルコール製剤による手指衛生も効果的です。

※不織布製マスク… 繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させて布にし          たものを用いたマスク

Q.ワクチンをうてば、インフルエンザにかからない?インフルエンザは一度かかっても、同じ冬にもう一度かかる事がありますか?

A.
インフルエンザワクチンは毎年流行予測に基づいて決定され、予測されるウイルスに合わせて製造されています。実際の流行と違った場合はワクチンをうっても、かからないとは言えません。ただし、うつことで感染後に発症を低減させ、重症化は抑えられると報告されています。ワクチンの最も大きな効果は100%ではありませんが重症化を予防することです。一度インフルエンザにかかると免疫ができ、同じ型にかかる事はありませんが、異なった種類の型には免疫がありません。B型の流行時期は、A型に比べて遅れる傾向がありますので、インフルエンザ流行時期の前半はA型、後半にはB型にかかり、同じ冬に2度発症する事もあります。また、同じA型でも、違うタイプのA型にかかる事もあります。

Q.インフルエンザ検査はいつ(どのタイミング)行うのがよいですか?

A.
インフルエンザウイルスの増殖は、発症後2〜3日で最高に達し、その後急速に減少し、5〜7日で消失すると言われています。現在、インフルエンザの治療に使われている抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。ウイルスの量が最大になる前、つまり症状が出てから48時間以内に薬を使って増殖を抑えれば、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、症状の悪化を防ぐ可能性があります。また、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します。このことから、発熱後約8時間以降48時間以内にインフルエンザ検査を行うのが最も良いタイミングと考えられます。



Q.インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよい?

A.
一般的にインフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれていますので、ウイルスを排出している間は外出を控える必要があります。
 排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクを着用するなどして周りの人にうつさないように配慮しましょう。

※参考までに…
 学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めた時は、この限りではありません)。

Q.インフルエンザワクチンとHib(インフルエンザ菌b型)ワクチンの違い?

A.
Hibワクチンは乳児の予防接種で聞いたことがあると思います。Hibワクチンもインフルエンザに対する予防接種ですが、こちらはインフルエンザ菌という細菌をターゲットにしています。前述しているインフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスをターゲットにしています。 ターゲットがウイルスか細菌かの違いがあります。

※参考に、Hibとは…
 インフルエンザ菌は、莢(きょう)膜(まく) 血清型と呼ばれるものが何種類かあり、その中でも莢膜血清型b型は病原性が強く、乳幼児の髄膜炎、急性咽頭蓋炎、菌血症などの侵襲性感染症(血液や髄液など無菌部位から細菌が分離される感染症)の主要な原因菌です。ワクチン導入前、国内での小児細菌性髄膜炎に関する調査において常に原因菌の第一位でした。
 Hibワクチンは世界中で20年以上にわたり使用されており、有効性のみならず、安全性の高いワクチンと評価されている。日本では2013年4月から定期接種化されています。

Q.咳エチケットって何?

A.
インフルエンザの主な感染経路は咳やくしゃみの際に口から発生される小さな水滴(飛沫)による飛沫感染です。しかし、飛沫を浴びないように生活するのは難しいです。そこで咳などの症状がある方が、インフルエンザなどをうつさないためにするエチケットのことを咳エチケットといいます。また、周囲の方が咳をしている人にマスクの着用を促すことも大切です。

 ※咳エチケット…
○咳・くしゃみが出る時はできるだけマスクをする
○とっさの咳やくしゃみの際にマスクがない場合は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむける。その際、出来る限り1m以上離れることが望ましいです
○鼻汁・痰などを含んだティッシュをすぐに蓋つきのゴミ箱に捨てられるようにしておく

Q.インフルエンザに抗菌薬は効果がある?

A.
インフルエンザウイルスに抗菌薬は効果ありません。ただし、高齢者や免疫力が下がっている方はインフルエンザにかかることで細菌(肺炎球菌など)に感染しやすくなっています。気管支炎や肺炎などの合併症に対する治療として抗菌薬が使用されることがあります。
Q.去年インフルエンザワクチンをうちましたが、今年もうった方がよい?

A.
季節性のインフルエンザワクチンの予防効果が期待できるのは、接種した(13歳未満の場合は2回接種した)2週後から5ヶ月程度までと考えられています。
 インフルエンザワクチンは前述したように毎年流行予測に基づいて決定されるので、予防に十分な免疫を保つためには毎年うったほうがよいと考えられています。ワクチンの効果が出現するまで2週間程度を要しますので、例年1月〜2月に流行を迎える前の12月中旬までにはワクチン接種を終えていることが望ましいと考えられています。
 ワクチン接種を受けた高齢者は死亡の危険が1/5に、入院の危険が約1/3から1/2まで減少することが期待できるとされています。

Q.インフルエンザワクチンの接種量や回数は年齢によって違う?

A.
原則的には以下の接種量や回数ですが、医師の判断により変わることもあります。
○6ヶ月以上3歳未満  1回0・25ml 2回接種
○3歳以上13歳未満  1回 0・5ml 2回接種
○13歳以上   1回 0・5ml 1回接種
※1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合は、12歳として考えて2回目の接種を行ってもかまいません。

Q.インフルエンザワクチンをうったことで引き起こされる症状はありますか?

A.
インフルエンザワクチンをうつことで引き起こされる症状はいくつかありますが、通常2〜3日でなくなります。
 10〜20%の方で接種した場所の発赤、腫れ、痛み等が起こります。
 5〜10%の方で発熱、頭痛、悪寒、倦怠感が起こります。
 まれではありますが、ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、発赤、かゆみ、呼吸困難など)が起こることがあります。これらは、ワクチンに対するアレルギー反応です。比較的すぐに起こることが多いので、接種後30分間は接種した医療機関内で安静にしたほうがよいです。帰宅後に異常が認められた場合には、すぐに医療機関を受診するなどして下さい。

◆おわりに
 インフルエンザは家族や学校・職場など日常的に一緒にいる機会が多い者同士で感染を防ぐことは難しいです。インフルエンザの予防策として最も重要なことは、常日頃から手洗い・うがいなどを心がけることです。
 インフルエンザは通常約1週間で軽快することが多いですが、乳幼児、高齢者、基礎疾患(免疫不全、糖尿病、心臓・肺・腎臓の慢性疾患等)を持つ人では気管支炎、肺炎などの併発、基礎疾患の悪化、乳幼児においては脳症の原因ともなってしまいます。
 たとえ感染者であっても、全く症状のない(不顕性感染)例や感冒様症状(かぜの症状)のみでインフルエンザに感染していることを本人も周囲も気付かない軽症の例も少なくありません。
 インフルエンザが疑われる場合には、すぐ病院に受診するようにして下さい。その際には、マスクを着用するなどして、自分自身が感染源とならないように周囲の人々に配慮をお願いします。
<参考資料>
 厚生労働省HP(インフルエンザQ&A)



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