JA静岡厚生連。保健・医療・福祉の事業を通じ地域の暮らしに根ざした病院として社会の構築に寄与する。

JA静岡厚生連 〒422-8006 静岡県静岡市駿河区曲金三丁目8番1号
TEL : 054-284-9854
お問合せ・ご相談
交通案内 リンク プライバシーポリシー サイトマップ


ホームへ 理念・沿革・概要 基本方針 患者様への姿勢 事業内容 施設整備事業

JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2016.9 NO.466

回復期リハビリテーション病棟
〜チーム医療で質の向上に努めます〜

静岡厚生病院

回復期リハビリテーション病棟


◆回復期リハビリテーション病棟とは

、脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患や、大腿骨頚部骨折等に対する急性期治療を終えられた患者様に対して、日常生活動作(ADL)の能力向上を目的としたリハビリテーションを提供する病棟です。
 介護保険制度の開始とともに開設された回復期リハビリ病棟は、急性期(急な病気等で治療が必要な時期)から維持期(リハビリを終え、日常生活等を継続していく時期)に至るリハビリ医療の中でも中心的な役割を担う存在となっており、現在全国では7万床を超えるに至っています。その要因としては、何よりも短期集中リハビリの社会的ニーズの高まりが挙げられます。回復期リハビリ病棟の使命は言うまでもなく、急性期病院より患者様を早期に受け入れ、ADLを改善させ、在宅復帰の手助けを行うことです。
 しかし、ここへきて医療機関によって、入院中のADL向上の度合いに大きな差があることが指摘されています。すなわち、量だけではなく、今後は回復期リハビリ病棟の質の向上が求められるということです。当院はこの度、既存の回復期リハビリ病棟52床に加え、新たに43床増設し、多職種が協働した『チーム医療』で質の向上に努めています。


◆回復期リハビリテーション看護について

 回復期リハビリ病棟の看護師の業務を大きく分けると、日常生活援助とあわせて日常生活動作の訓練を行う等の「直接的に関わる業務」と症例検討会や面談での情報提供・アドバイス・計画立案等の「間接的に関わる業務」の2つになりますが、今回は「直接的に関わる業務」を中心に紹介します。
1、 摂食嚥下(えんげ)機能のリハビリ
 ・誤嚥を予防する食事姿勢を取る
 ・口腔ケアを実施する
 ・呼吸練習 → 深呼吸・いき止め練習
 ・構音訓練 → パ・タ・カと発音する
 ・栄養状態の評価を行う
 ・食事場面の観察を行う
 ・発声訓練を行う
 ・冷やした綿棒で口の中を刺激し嚥下反射を促すマッサージを行う

2、 出来るだけ排泄がトイレで行えるようにする援助
 ・尿意の表出の有無を確認する
 ・トイレ回数の把握をする
 ・排泄方法 オムツ、トイレ、尿器使用等を検討する
 ・排尿日誌の記録を行う

3、 療養のために必要な安静の度合いに応じた歩行訓練
 ・ リハビリスタッフと相談し、方法、時間等を決定する
 ・必要に応じて、家族の方とも行う

4、 安心して退院してもらえるような退院時指導
 ・ 自宅への退院に向け必要な指導を行う
 ・ オムツ指導、食事指導、清潔援助等を行う
 ・安心して帰れるように援助する
 ・ 看護師が行っていて大変だと感じる介助は、家族でも大変であるため、必要であれ  ばケアマネジャーと連絡を取り、協力を依頼する

 どの業務を行うにも、患者様・ご家族に対応する上での知識・技術と経験のほか、合併症を多く持つ患者様が増えていることから、より高度で広い疾患の理解と病状悪化や危険を予知する観察力が必要となります。そして何よりも、回復過程にある患者様に寄り添うこと、患者様・ご家族の希望を十分理解した上で、より現実的な目標との調整による支援も重要であると考えて行っています。
◆リハビリスタッフが提供する回復期リハビリテーション

 回復期リハビリ病棟とは、脳血管疾患や骨折などの急性治療を受け、病状が安定し始めた患者様に在宅復帰を目指した集中的なリハビリを提供する病棟です。リハビリ内容は、
@ 寝返り、起き上がり、歩行等の基本動作の練習を中心とした「理学療法」
A 着替え、整容、食事等の生活動作を中心とした作業を通じて実施する「作業療法」
B 言葉を発したり、言葉を理解するコミュニケーションや食べ物を食べたり飲んだり等を練習する「言語聴覚療法」(写真@)があり、これらの療法を患者様の状態に応じて専門のリハビリスタッフが実施します。

 当院の回復期リハビリ病棟では、1日2時間以上の必要かつ十分なリハビリを提供しています。また、入院期間中は切れ目なくリハビリを提供するため、土曜・日曜・祝日、年末年始も患者様の状態に応じ、リハビリを365日実施しています。
 8月に開棟した「4A病棟」は、運動療法室と作業療法室を兼ねたリハビリ室と言語聴覚室がナースステーションに隣接しています。回復期リハビリ病棟は多職種なスタッフが関わります。医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー・事務員が患者様と近い距離にあり、患者様の生活に直結したリハビリを病棟で積極的に行う事は理想的な環境と言えます。
 当院では、在宅復帰に向けて医師の指示のもと、「理学療法士」は活動範囲の拡大を考慮し、外出して『買い物練習』や『バス乗車練習』を、「作業療法士」は調理練習や洗濯動作練習など積極的に行っています。退院前に実際の生活の場である患者様のお宅にリハビリスタッフと医療ソーシャルワーカーが同行訪問し、生活動作を実際に試したり居住環境の整備や福祉機器の活用を検討したり、ケアマネジャーや福祉機器業者の方々とも生活環境を確認することで、安心して在宅復帰できるように心掛けています。その結果、在宅復帰率は90%以上の高い成果を得ています。
 
 

◆回復期リハビリテーション病棟の医療ソーシャルワーカー
 
 当院の回復期リハビリ病棟では、入院時より医療ソーシャルワーカーの担当が付きます。医療ソーシャルワーカーとは医療機関で福祉に関する相談援助を行うスタッフのことです。現在多くの医療ソーシャルワーカーは「社会福祉士」という福祉に関する国家資格を持っています。(写真A)
 回復期リハビリ病棟には、脳卒中や大腿骨の骨折などにより一定期間リハビリを受ける必要がある患者様が入院されます。
 リハビリは患者様ご自身が訓練して低下した身体機能の回復を図るものです。
 もちろん必要時に自助具の使い方や介護方法などのアドバイス・指導も行いますが、やはりメインとなるのはご本人の努力による訓練での回復です。当然その努力が実り、発病・受傷前の状態まで回復できれば問題ないのですが、脳卒中等の病気では身体に障害が残ることもありますし、高齢の方の場合には大腿骨の骨折でも元通りの身体レベルまでの改善が難しいこともあります。そうすると、退院・社会復帰に向けて住宅改修などの環境整備や介護サービスの手配など、準備が必要となります。そのとき介護保険制度や身体障害者福祉制度を利用できるように申請手続きや活用方法のアドバイス、専門機関との連絡調整などを行うのが医療ソーシャルワーカーです。
 壮年期の方が発症・受傷された場合には、突然収入が途絶えたり、減少したりすることになります。また、回復期リハビリ病棟に入院するとその期間が長期化することにもなります。さらに介護が必要となった場合には、退院しても介護に時間が割かれ、介護者の収入も減少してしまうようなことも考えられます。
我が国では、そのような生活上のリスクを回避するために、健康保険の傷病手当、雇用保険の求職手当、年金保険の障害年金、また、雇用保険の介護休業給付など様々な社会保障制度が整備されています。ただ、大多数の方はそれまで元気に生活してきているので様々な社会保障制度についてご存知ないことがほとんどです。そこで、入院中・退院後の生活が困らないように、安心してリハビリに専念できるように、社会保障制度の活用についての相談援助も医療ソーシャルワーカーが行います。


◆おわりに
 回復期リハビリ病棟では、医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー他、多職種のスタッフが協働して患者様の援助に努めています。リハビリテーションは早く始めるほど、より効果が上がることは知られていますが、今回の増床により、これまでお待ちいただいていた急性期病院の患者様を早期に受け入れ、より早くリハビリを開始できるようになりました。その上で、一人一人の患者様に対するADL向上という本来の目的を蔑(ないがし)ろにせず、医師、看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカー等を含めたチームアプローチをより緊密に実行して、より良いアウトカム(結果)、質の向上につながればと考えております。
 回復期リハビリ病棟の増床が、量はもとよりその質の向上に結び付くきっかけとなるべく、スタッフ一同より一層努力していく所存ですので何卒よろしくお願いいたします。



JA-shizuokakouseiren.