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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2016.3 NO.460
関節リウマチってどんな病気?
〜症状から日常生活の工夫まで〜


清水厚生病院

看護師

川村 景子

◆はじめに
 
 2003年(平成15 年)に関節リウマチに対する最初の生物学的製剤が承認されてから、10年が経過しました。それまでの抗リウマチ薬と比較して高い有効性をもつ生物学的製剤の登場は、関節リウマチの薬物治療に大きな変化をもたらしました。関節リウマチは進行性の病から、薬で管理可能な疾病へと変貌を遂げました。しかし薬が進歩したとはいえ、それまでに破壊された関節は回復しないので、早期診断を適切に行い、早期治療を行って、関節破壊の発症を防止することが重要です。



◆関節リウマチってどんな病気?

 関節リウマチは、外から入ってくる細菌やウイルスなどの病原体から体を守る働きをする免疫システムが何らかの異常をきたし、種々の炎症が次々に引き起こされる「自己免疫疾患」のひとつです。関節の中の滑(かつ)膜(まく)と呼ばれる場所で起こる炎症により、関節の痛みや腫れを生じ、しだいに関節や骨が破壊されて変形していく病気です。
 関節リウマチは30〜50歳代で発症することが多く、出産後の発病が多いことが知られています。しかし、近年の高齢化に伴い、高齢で発症する事例が増加しています。
 患者さんは、女性の方が多いですが、男性の患者さんも少なくありません。発病には、遺伝や年齢、性ホルモンなどの内的要因と、感染症やストレス、喫煙などの環境因子が関与していると考えられていますが、発病の仕組みは未だ解明されていません。



 
◆関節リウマチの治療

1)薬物治療
 大きく4つに分類されます。
 @非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
 痛みや腫れを和らげる。しかし、関節が壊れるのを抑える働きはない。
(ロキソニン・セレコックス)
 Aステロイド
 炎症を抑える。しかし、使う量が多かったり、長期間使用すると骨粗鬆症や感染症に罹りやすくなるなどの副作用があらわれることがある。
(プレドニン)
 B抗リウマチ薬(DMARDs)
 免疫システムの異常に働きかける薬。関節が壊れるのを抑える働きもある。
(リウマトレックス・アザルフィジン・プログラフ・ゼルヤンツ)
・ 免疫調整薬と免疫抑制薬とがあります。
・ 特にメトトレキサートは関節リウマチ治療の中心的な役割を果たす薬として使用されています。
 C生物学的製剤
 炎症を起こす物質に直接働きかけ、炎症を抑えたり、関節が壊れるのを抑えることができる。
・ 効果は強いですが、価格が高いのが難点です。

2)手術療法

 保存的治療を行っても症状が改善せず日常生活に支障をきたすような場合に、外科的治療が考慮されます。
 ●滑膜切除
 ●関節形成術
 ●関節固定術
 ●人工関節置換術

3)リハビリテーション
 リハビリテーションの目標は、障害や活動制限の回復と社会参加や職の維持にあります。それらの達成のために利用できる手法や訓練によって機能の維持と回復を目指します。


◆生物学的製剤について
 現在、日本で使用できる生物学的製剤は7剤となりました。これまでの薬剤と比較して効果は高いですが、費用がかかるという難点があります。どの製剤を使用しても、3割負担で約3〜4万円前後薬剤費用がかります。
 当院では7種類すべての薬剤を導入しています。そのうち、5種類の在宅自己注射が可能な皮下注製剤を導入し、自己注射も進めています。自己注射を導入することで、通院に対する負担の軽減や、治療費の負担軽減、治療意欲の向上、患者さんにとって時間的な余裕が多くなるというメリットがあります。

1)生物学的製剤投与の実際
 点滴製剤は3剤、皮下注製剤は5剤あり、それぞれの薬剤の代謝速度により、投与間隔や点滴時間が決定されています。

2)生物学的製剤使用時の合併症 
●咽頭炎・上気道感染
 鼻やのどに炎症を起こし、くしゃみ、鼻水、鼻づまりを主症状とし、ときにのどの痛みを 伴います。

●気管支炎 
 ウイルスや細菌の感染により、咽頭粘膜に炎症を起こし、のどが赤く腫れ、痛みがみられ ます。

●帯状疱疹
 水痘・帯状疱疹ウイルスによる皮膚の感染症で、痛みを伴う発疹がみられます。

●肝機能障害 
 肝臓の機能が障害され、肝機能検査値が上昇します。

●結核
 結核菌による肺の炎症で、過去に結核を患ったことのある方は、再び症状があらわれるお それがあります。

●アレルギー反応

        自己注射の不安は、私たち看護師まで気軽に相談を!!

 自己注射をはじめる前は、「私には無理です」といわれる方がほとんどですが、実際にはじめてみると「意外と簡単だった」「はじめてよかった」という声が聞かれます。自己注射の方法は、医療機関できちんと指導しますので、不安や心配事は遠慮なくご相談ください。
◆日常生活の工夫
 1)関節を守る日常生活の工夫
 日常生活で、ほんの少し工夫したり、関節に負担をかけないように心がけたりすることで、痛みが和らぎ、生活しやすくなります。出来ることからぜひ始めてみてください。

 同じ姿勢を長く続けない
 読書やパソコン作業などで、同じ姿勢を長時間続けないように、適宜姿勢を変え、休憩をとるなどして体をほぐしましょう。また、首への負担がかからないように、よい姿勢を心がけましょう。

 ベッドを利用する
 起床時に起き上がりやすいベッドの利用がおすすめです。
 横向きになって、肘をついて体を起こします。

 洋式トイレを利用する
 和式トイレより洋式トイレの方が望ましいです。また、負担軽減のために近くの壁に手すりをつけると助けになります。

 関節の保温と冷却
 全身または関節を冷やさないようにします。夏でも冷房を控えめにし、保温のために衣服で調整しましょう。腫れや熱感が強い時は、炎症を和らげるために冷やし、軽くなってきたら冷やしすぎないようにします。

 キッチンまわりの工夫
 家事をしやすいように、キッチンまわりなどを工夫しましょう。
・ 座りながら仕事ができるように椅子を準備する。
・動かしやすいワゴンを利用する。
・蛇口をレバーハンドル式にする。
・鍋は両手鍋を使用する。
 キャリーを利用する
 買い物などはキャリーの利用もおすすめです。見栄えよりも使い勝手を優先して、軽いものを選びましょう。

 2)感染症予防対策
 リウマチ治療に使用される薬は、免疫を抑制する作用を持つため、感染症を生じる可能性があります。そのため、普段からの感染予防行動と、感染症の早期治療が重要です。

 呼吸器感染症
 肺炎球菌やインフルエンザに対するワクチンの接種と、デパートなど混雑する場所へ外出する際は、マスクの着用と外出後のうがい、手洗いなどを心掛けましょう。

 皮膚感染症
 外反母趾や足部の関節変形を伴うことが少なくなく、骨が突出している部分に圧がかかることで、胼胝(べんち)(タコ)や表皮剥離を起こしやすく、感染性の潰瘍を形成するリスクが高い状態です。重篤な足病変を予防するためにフットケアを実践し清潔に保ちましょう。

 口腔内感染症
 顎関節の障害や上肢の関節可動域制限、握力の低下によって、効果的なはみがきが困難となる場合や、シェーグレン症候群※を合併すると、唾液腺障害による口腔内乾燥を生じることがあります。唾液の分泌が低下し、口腔内の自浄性が低下することによって口腔内の細菌が増加し、誤嚥性肺炎や、虫歯になりやすくなるため、状態に合わせた福祉用具や人工唾液などで乾燥を防ぎ、定期的に歯科受診をするなど常に口腔環境を整えておく必要があります。
※ 涙や唾液の分泌が障害される自己免疫疾患の一種。
◆関節リウマチ患者さんを支える医療・福祉制度
 利用できる制度は、ご加入になっている健康保険や、障害の程度、収入によって異なります。
 詳しくは、該当する保険組合、自治体、各市町村へお問い合わせください。

1)高額療養費制度
 医療機関や薬局の窓口で支払った額が1ヵ月で一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。事前に「限度額適応認定証」の交付を受けることで、入院・外来でも事後に高額療養費の支給申請の手間を省くことができます。

2)高額療養費貸付制度
 高額な自己負担分を支払うことが困難になった場合、無利子で融資を受けることができます。

3)医療費控除
 ご自身やご家族が1年間に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に所得税が減免されます。

4)傷病手当金
 被用者保険に加入している場合、病気の為に連続して仕事を休んだ場合に支給を受けることができます。

5)介護保険制度
 訪問看護、リハビリテーションなどを受けることができます。

6)身体障害者福祉制度
 医療費の助成、税金の控除、交通機関の運賃割引などをうけることができます。
 発症早期に症状が改善した患者は、健常者とほぼ変わらない日常生活を送ることができるようになりました。しかし、高額な治療費や、妊娠などのライフイベントへの対応など、関節リウマチの治療には、課題も多く残っています。

 清水厚生病院のリウマチ科は、医師2名体制で診療を行っています。また、この分野の専門看護師はまだ少ないですが、リウマチケア看護師制度が2010年に発足し、今年度2名の看護師が、登録申請をすすめています。リウマチでお悩みの方は、遠慮せず、お気軽にご相談ください。

引用・参考文献
1) 村澤章,元木絵美:リウマチ看護パーフェクトマニュアル,羊土社,2013
2) 三浦靖史: 臨床看護2013.12,pp1960〜1967
3) シムジアによる関節リウマチ治療を受けられる方へパンフレットより




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