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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2016.1 NO.458
尿検査からわかること

リハビリテーション中伊豆温泉病院

臨床検査科

大熊 悠樹

◆はじめに
 
 尿検査の歴史は紀元前2000年頃にさかのぼり、インドのヒンズー教の医師が、患者の尿に蟻が集まる事を発見しました。
 その後、尿検査として確立され、1930年頃には病気を発見するための検査として健康診断などにも取り入れられました。
 このように尿検査は古くから行われており、長い歴史の中で多くの改良が行われ現在に至っています。


◆尿とは
 人体には色々な変化の中でも、体内環境を一定に保つしくみがあります。
 体内環境を保つために、腎臓の糸球体(しきゅうたい)というところで血液をろ過して老廃物として尿を作ります。腎糸球体の網の目を通過しても身体に必要な物質は、尿細管によって再吸収されます。(図1)
 このように体内環境を保つために排泄された尿の成分は、常に変動しています。

 
◆外観・臭気・尿量について

 尿検査の第一歩は、尿の外観・臭気・尿量の観察になります。
 健常者の尿ではわずかに芳香臭があり、色は淡黄色です。
 1日の尿量は平均1〜1・5Lですが健常者でも変動します。(図2)
 糖尿病などで尿量は増加し、腎臓機能が悪化して尿を作れなくなると尿量は減少します。
 重症糖尿病患者の尿では、甘酸っぱい匂いがします。

◆採尿時間による尿の分類
 検査の目的に合わせ、採尿時間が異なり尿の呼び方も変わります。
 通常外来検査で使われる随時尿、その他に早朝尿、蓄尿があります。(図3)
 早朝尿は食事や運動の影響を受けず、濃縮されているので、安定した検査ができ尿検査には適しています。尿蛋白は、蓄尿を用いて検査した方が、腎機能をより正確に判定できます。

◆採尿方法と尿検査における注意点
 健康診断や病院で尿検査を受ける際は指示に従い尿を採取します。指示の無い場合は中間尿を採るようにします。
 中間尿は、最初と最後の尿を捨て、中間部分の尿を採るので、尿道口周辺の汚れなど、混入物を少なくすることができ、より正確で安定した検査ができます。(図4)
 注意点としては、ビタミンCを大量に摂取すると正しい検査結果が得られない事があります。又生理(月経)中は尿潜血、尿蛋白が陽性になることがあるので、注意が必要になります。

◆尿試験紙法について
 尿試験紙はプラスチック製のスティックに、試薬を浸み込ませた濾紙(ろし)片を貼りつけたものです。(図5)
 尿に試験紙を浸し、目的とする成分が含まれていれば、試験紙の色が変化していきます。現在は自動分析装置が普及し、色の変化を目視ではなく、機器が判定します。
 
 尿試験紙法は、目的とする成分の有無を判定する定性検査です。
 結果は【−・±・+・2+・3+】と表示されます。
 
 正確な値を調べるためには定量検査を行います。
 尿試験紙法は簡単にできる検査ですが、誤った使用法では適切な検査結果が得られません。試験紙の使用方法や反応原理を十分理解したうえで使用しています。 

◆尿検査(その1
 
 ここでは基本の尿検査項目について説明します。

※尿蛋白
 基準値は試験紙法では陰性です。定量法では一日の量は、50〜100r/日となります。
 腎臓の糸球体に障害がある場合や尿細管での再吸収機能の低下により、定性検査で蛋白が陽性になります。
 腎炎、ネフローゼ症候群、尿路の腫瘍、血液の病気などでも陽性になります。
 長時間立った姿勢をしているだけで尿蛋白が出たり(起立性蛋白尿)激しい運動後やストレスなどでも、尿蛋白が出ることがありますがこれらは病気ではありません。

※尿糖
 基準値は試験紙法では陰性です。定量法では、10 〜30r/dlとなります。
 定性検査で尿糖が陽性の場合は、血中のブドウ糖濃度(血糖値)が高過ぎることが考えられます。
 食事をすることで血液中の血糖値が上昇します。この血糖値が160〜 180 r/dlという濃度を超えると尿細管で再吸収できず、尿にブドウ糖があふれ出てきます。
 糖尿病などによる高血糖、腎臓病、ホルモン異常、妊娠などでも陽性になります。
 但し、健康な人でも食べ物や体調によっては血糖値が上昇して尿糖が出ることもあります。従って、尿糖の検査だけでは糖尿病などの診断はできません。

※尿潜血
 基準値は試験紙法では陰性です。
 尿潜血の検査とは尿の中に、赤血球中の赤い色素であるヘモグロビンがあるかどうかを調べます。つまり血尿かどうかを検査するのです。
 潜血が陽性の場合は、腎臓や膀胱、尿管などの尿の通り道で出血していることが考えられます。
 腎臓などが炎症を起こして組織が壊れている場合、結石が関係している場合、尿管や膀胱にできたがんから、出血している場合などが疑われます。
 また、血管の中で赤血球が壊れ、ヘモグロビンが尿にでる病気でも陽性となります。
◆尿検査(その2)
※尿沈渣
 尿中にみられる有形成分を顕微鏡で観察する尿沈渣があります。
 尿路で出血を起こしていると赤血球が多く見られます。尿中の赤血球の形を観察する事で、病気の部位を推測することもできます。白血球が増えると炎症があることも推測でき、同時に細菌が多く見られると尿路に細菌感染を起こしている可能性が考えられます。
 
 細菌感染が疑われる場合、どのような細菌によるものか、どのような薬が効果あるのかを細菌培養検査をします。
 結晶などが多くみられると結石などの可能性が考えられます。またがんなどの細胞も見られる事があり、細胞診検査を行うことで、さらに細かく細胞を観察し、細胞の種類や悪性度を判定します。(図6)

◆尿検査(その2)
 前述した以外にも特殊検査項目があります。
※妊娠反応
 簡易キットに尿を数滴らし、妊娠が成立すると出てくる、ヒト絨(じゅう)毛性(もうせい)ゴナドトロピン(hCG)というホルモン
が陽性になります。

※尿中細菌抗原
 肺炎球菌やレジオネラ菌などによる肺炎関連の検査に尿が活用されています。
 簡易キットを用い20分くらいで検査結果がでます。症状があり、肺炎が疑われる場合は陰性であっても別の検査での確認が必要となります。

※NTx
 NTxは、(T型コラーゲン架橋N ― テロペプチド)と呼ばれ、骨破壊が進むと尿中に多く出てきます。骨粗鬆症の補助診断、治療効果判定などに用いられています。
◆おわりに
 尿試験紙法は様々な原因で陽性と出てしまうこともあるので必ずしも、陽性=病気とは言えません。
 検査の材料は、尿以外にも血液、便や喀痰、髄液など多くありますが、尿は血液のように採取に痛みを伴わずに尿意さえあれば、繰り返し検査を行う事ができます。尿検査は学校、会社等の健康診断、人間ドックなどでも、広く行われており、血液検査などと共に体の健康を見る重要な検査となっています。
 決められた採尿方法を守らず検査当日や前日などの激しい運動や飲酒などがあると検査結果に影響を及ぼしてしまう事があるので、正しい方法で採尿することが重要です。

☆参考文献☆
○病院の検査のしくみ
  藤井 俊史
  同文舘出版
○尿検査・その知識と病態の考え方
 河合 忠・伊藤 喜久・掘田 修
 油野 友二
 株式会社メディカルジャーナル社



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