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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2015.9 NO.454
運動と栄養について
〜サルコペニア(筋肉減少症)とその予防法〜



遠州病院病院
リハビリテーション科
佐藤 慎


はじめに

  日本の高齢化の加速が深刻な状況となっています。それに伴って、身体的に虚弱(衰え)に陥り介護が必要となった高齢者数も増加の一途をたどり今日の社会問題となっています。厚生労働省が発表した健康日本21(第2次)においては、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を第1に掲げ、国民の健康増進の総合的な推進を図るための基本的な方針を打ち出しています。その中では、「良好な栄養状態の維持、身体活動量の増加」を目標とするという記載があり、栄養管理と体を鍛えることの重要性がうかがえる内容となっています。では、なぜこの2つが重要なのか、解説していきたいと思います。


虚弱の要因
 高齢者が虚弱に陥る要因を虚弱サイクルというものから考えると、筋力低下・筋肉量減少から虚弱に陥るとされていますが、この筋力低下・筋肉量減少には低栄養が関与しているとされています(図1)。
 このように低栄養という側面から身体機能の低下を引き起こし、最終的に虚弱に陥るということがわかります。虚弱に至らないようにするための手段としては栄養管理と体を鍛えることの両方が必要であると考えられます。
サルコペニアとは?
 近年注目を集めている加齢に伴う生活の質、日常生活活動の低下をきたすものとして、サルコペニアというものがあります。骨格筋減少症、筋肉減少症とも言われ、加齢に伴う筋力の低下、筋肉量の減少を指すものとされています。また、サルコぺニアは虚弱発生の主要な原因であるとも言われており、サルコぺニア予防の取り組みが盛んに行われています。ヨーロッパの研究グループによると、「筋肉量の減少を必須項目として、それ以外に筋力または運動機能の低下のうちどちらかが当てはまればサルコペニアと判断する」ということを提案しています。



サルコペニアのとは
 近年注目を集めている加齢に伴う生活の質、日常生活活動の低下をきたすものとして、サルコペニアというものがあります。骨格筋減少症、筋肉減少症とも言われ、加齢に伴う筋力の低下、筋肉量の減少を指すものとされています。また、サルコぺニアは虚弱発生の主要な原因であるとも言われており、サルコぺニア予防の取り組みが盛んに行われています。ヨーロッパの研究グループによると、「筋肉量の減少を必須項目として、それ以外に筋力または運動機能の低下のうちどちらかが当てはまればサルコペニアと判断する」ということを提案しています。
サルコペニアの原因
 サルコペニアの原因として、筋肉を作る能力が低下すること、体を動かす機会が減少すること、栄養摂取量が不足することといったものが指摘されています。加齢に伴い筋肉が減るとされていますが、これは筋肉の合成と分解のバランスが崩れることが原因であると言われています。また、若い時と比べると体を動かす機会が減るため、筋肉は衰えやすいと考えられます。それから、栄養摂取量の不足ですが、一般的に高齢者は様々な理由で低栄養に陥りやすいとされています。ここで特に問題となるのがタンパク質不足です。タンパク質が不足すると筋肉を作ることに支障を来すとされています。
サルコペニアに対しては
先述のように、サルコぺニアには加齢、運動不足、低栄養が関わっていることが分かりました。では、どのように対処していけばよいのかを考えてみます。
 まず、加齢によるものですが、加齢に伴い筋肉を合成する能力は低下しますが、運動することにより改善させることができるとされています。次に運動不足ですが、文字通り運動が不足していることが原因ですので運動すればよいと考えられます。どのような運動をすればいいのかということですが、サルコぺニアに対して有効な運動は筋力トレーニングです。現在、筋力トレーニングには多種多様な方法が提案されており、なかには特殊な器具等を使用して方法を厳密に規定して、最大筋力の6〜7割の強さで2〜3ヶ月続けることで効果を出すものもあります。しかし、特殊な器具等を使用した方法は日常生活では実行し難いです。ここでは簡単にできる、図2、3のような運動を紹介します。特殊な器具等は使わず簡単に出来るものです。まず手始めにこういった簡単なものを生活に取り入れると良いと考えます。





 低栄養に関しては、タンパク質不足が問題となりますが、タンパク質といっても何を摂取すればよいかが問題となります。タンパク質はアミノ酸というものが結合してできたものです。アミノ酸の中には体内で作ることできないものがあり、必須アミノ酸と言われ食物から摂取する必要があります。この必須アミノ酸のうち、ロイシン、イソロイシン、バリンは炭素骨格が分岐した構造を持つことから分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid:BCAA)と呼ばれています。これらの分岐鎖アミノ酸は、筋肉を作る主なタンパク質の主成分であるとされています。分岐鎖アミノ酸が少ないと筋肉合成が減少し、分岐鎖アミノ酸が多いと筋肉合成が増加すると報告されています。近年、分岐鎖アミノ酸の中の、特にロイシンは、筋肉合成作用が強いということが分かってきました。よって、サルコぺニアに対しては分岐鎖アミノ酸を多く含む食品(肉・魚・卵・大豆製品など)を摂取することが有効で、こういった食品を摂るように心掛ければ筋肉を増やせる可能性があります。最近では、筋肉合成が期待されるロイシンが高配合された補助食品も販売されています。
 さらに、これら運動と栄養に関して同時に働きかける方が良い結果ができるとの報告もあります(図4)。

まとめ
 サルコペニアに対しては運動と栄養の両方を満たす必要があります。ただし、内容には個人差があります。運動はまずは継続できることが大切だと思います。リハビリテーション科では栄養科などの他部門と連携をとりながら個人に合った運動を提案させていただきます。
 将来、サルコペニアにならないためにも日頃の運動、栄養管理に目を向けてみましょう。



JA-shizuokakouseiren.