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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2015.5 NO.450
あなたの骨は大丈夫ですか?
〜骨粗鬆症の早期発見〜


リハビリテーション中伊豆温泉病院
放射線科
八木沼 大希

はじめに 
 日本は急速な高齢化が進み、骨粗鬆症患者は推定1280万人で、現在も増加中となっています。
 骨粗鬆症は、大腿骨頸部骨折や脊椎の圧迫骨折を伴い、生活の質(QOL:quality of life)の低下になり、介護の必要性を増加させる原因となっています。
 早期からの予防・治療を始め、骨密度の低下を防ぐことが重要とされ、取り組みが盛んになっています。



骨の構造

 骨は、皮質骨と海綿骨から成り立っています。
 皮質骨は硬くて緻密で、海綿骨を囲むように骨 の表面を覆っています。

骨の代謝

 正常な骨は常に骨芽細胞と破骨細胞によって形成・吸収がバランスよく行われ、新しい骨を作り、古い骨を壊し、一定の量が保たれています。
 骨折が治癒するのも骨の再生によるものです。



骨密度低下の仕組み
 骨吸収が進み、骨形成を上回るようになると、バランスが崩れ、骨密度が低下します。
 要因としては、閉経に伴うエストロゲン欠乏による破骨細胞活性化、二次石灰化度低下や微細構造劣化、加齢に伴うカルシウム吸収能の低下などがあります。

骨粗鬆症とは

 骨粗鬆症は、『骨強度の低下を特徴とする、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患』です。
 骨強度の説明要因の約70%が骨密度、残りの30%が骨質で決まると言われています。
 腰椎の測定で診断された40歳以上の有病率は、男性3.4%、女性19・2%です。
 患者の約8割は女性で、ホルモンの分泌バランスが変化する更年期以降に多いです。骨折して初めて気付くケースもあります。
 日本の診断基準では、骨密度値と脆弱性骨折(※1)の有無により『正常』『骨量減少』『骨粗鬆症』のいずれかに分類します。

※1 脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折
 低骨量が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。
生活習慣病関連疾患
 近年、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病(CKD)などの動脈硬化を起こす疾患が骨代謝に影響することが明らかになっています。
 このような疾患の場合、前述しました骨強度の説明要因の骨密度は比較的保たれていて、残りの骨質の劣化が起こる例が多いので、『骨粗鬆症』の前の『骨量減少』の段階での治療が望まれます。
骨密度検査について


 ☆当院の骨密度機器
○世界で最も信頼されている米国ホロジック社製を導入しています。
○ 極めて少ないX線を使用しているので、安心です。
○着衣のまま仰向けになり、腰椎と大腿骨近位部を測定します。
○ データは保存され、正確な診断が行えます。

☆HSA機能付き
 HSA(Hip Structure Analysis) 機能とは、大腿骨の構造を分析して、大腿骨頸部・転子部・骨幹部について、断面積や皮質骨の厚さなどから剛性・硬さ、曲げ強度、安定性を数値化する機能です。 大腿骨近位部骨密度の画像を使用し、皮質骨強度を評価できます。

☆検査の推奨者
○65歳以上の女性
○70歳以上の男性
危険因子(※2)を有する65歳未満の閉経後から閉経周辺期の女性
危険因子(※2)を有する50〜70歳の男性

 ※2 危険因子を有する方とは
 ・親が大腿骨頸部骨折をしたことがある
 ・現在、喫煙している
 ・飲酒量が多い:エタノールにして1日24〜30g以上
        (ビール 500ml、日本酒 180ml1合)、焼酎 110ml)


☆腰椎と大腿骨近位部を測定する理由
 腰椎は、解剖学的にDXA法(※3)による測定に適した部位であり、又、閉経後の女性において最も変化の見られる部位でもあるため、最も多くの測定が行われており、臨床例も多数あります。脊椎は骨粗鬆症による骨折が生じる部位であり、直接的に骨の状態を評価することが出来ます。
 大腿骨近位部は、国際的にも標準になっています。脊椎と同じように、骨折が生じる部位であり、直接的に骨の状態を評価することが出来ます。
 以上の、理由により腰椎と大腿骨近位部で測定しています。

 ※3 DXA法
 Dual-energy X-ray absorptiometry(二重X線エネルギー吸収測定法)の頭文字を取って
『DXA(デキサ)』といいます。
 2種類の異なるエネルギーのX線を使用した、精度の高い測定法です。

   〜簡単な自己チェック〜
    ☆こんなあなたは要注意!!
       ○背中がまっすぐ伸ばせない
       ○自分の歯が20 本未満である


☆骨粗鬆症自己評価指数(FOSTA)
 年齢と体重から計算して評価します。一定の数字より低い方は骨粗鬆症に注意が必要ということです。閉経後の日本人女性の調査では自己評価指数が−4未満の方のうち約半数が骨粗鬆症でした。
 求め方は、体重[s]から年齢を引いた値に0.2をかけた値です。

 例:60歳 40kgの方
    40(kg)−60(歳)=−20
    −20×0.2=−4

となり、60歳で40s以下ですと、−4未満になるので、注意が必要ということになります。

10年間の骨折確率(FRAX)

 FRAXは、様々なリスクから計算して、10年間で骨折する確率を求める方法です。
 インターネットで、FRAX(WHO骨折リスク評価ツール)にアクセスし、年齢、性別、身長・体重、両親の大腿骨頸部骨折、現在の喫煙、ステロイド薬の使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症の有無、過度の飲酒、大腿骨近位部骨密度またはBMIを入力します。
 計算をクリックすると、Majorosteoporotic( 骨粗鬆症性骨折)、Hipfracture(大腿骨頸部骨折)の確率が自動的に計算されます。
おわりに
骨粗鬆症は、骨折することで日常生活動作(ADL)の低下や寝たきりになる可能性があります。
 『簡単な自己チェック』をご自身はもちろんですが、身近な方も一緒に行って頂き、該当するようでしたら、検診・受診をおすすめします。
 特に、50歳以上の女性はご自身の骨密度を知って頂き、早期に治療して、健康で長生きしましょう。
参考文献
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
2011年版 折茂 肇 ライフサイエンス出版



JA-shizuokakouseiren.