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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2015.1 NO.446
関節リウマチとリハビリテーション


リハビリテーション中伊豆温泉病院
作業療法科技師長
林 正春

 
 関節リウマチはいまだ原因不明の病気で、『こわばり』『腫脹』『関節炎』『骨破壊』『変形』などの症状がみられる進行性炎症性自己免疫疾患です。治療では、『薬物療法』『手術療法』『リハビリテーション』『基礎療法(ケア)』が必要となります。近年、薬物療法の発展により治療が大きく進歩し、生物学的製剤の登場で、症状がコントロールでき、『臨床的寛解』『構造的寛解』『機能的寛解』を目指すことが可能になっています。寛解(かんかい)とは、炎症による痛み、腫れ、骨破壊などの症状が起こらない状態をいいます。今回は、治療革命が起こっているリウマチ治療の中で、 改めてリハビリテーションの重要性をお伝えしたいと思います。

リハビリテーションとは
 リハビリテーション(Rehabilitation)は、『Re(元の状態に回復させる)』と
『habilitation(持っている機能を生かしてさらに発展させる)』という意味が結合された言葉で、人権や身体的・社会的・経済的・心理的側面を考え、人間らしく生きるための医療です。
リウマチにおけるリハビリテーションの紹介
 リウマチのリハビリテーションには、低下した筋や関節運動を改善し、基本的身体活動を促進する(体のリハビリテーション)理学療法(PT)、 身体活動が回復・改善したことを受け生活で生かせるよう応用的動作を獲得する(生活行為のリハビリテーション)作業療法(OT)、痛みや変形が生じた関節の予防・矯正を行う装具療法(PO)があります。
 これらのリハビリテーションは、医師の指示のもと理学療法士・作業療法士・義肢装具士が実施し、対象者個々の症状や障害に対して、それぞれの手技手法(表1)でADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の維持向上に取り組みます。

理学療法(PT)
 筋や関節の機能回復・改善を目的に徒手(としゅ)療法あるいは運動指導などの医療行為を行います。徒手療法では、 筋肉活動をリラクゼーション・ストレッチなどで改善し、適切な関節運動を可動域練習(図1)で促します。
 また、自己の運動を促進するため、リウマチ体操(図2)や運動浴(図3)で運動方法を指導します。物理療法(図4)では、パラフィン浴や低周波治療器などを用いて血行を促進、痛みの軽減や筋活動の促進を図ります。
 その他、手術療法(人工関節置換術等)後に早期から徒手療法を実施することで筋や関節の拘縮を防ぎ回復力を高めます。
 これらの手技は特殊性と個別性が高く、リウマチの医学的知識、経験、実績のある理学療法士が実施することが望まれます。
 詳しくはリウマチ治療を専門的に行っている医療機関でご相談ください。
 

 

理学療法(PT)
 生活行為向上を目標に実施される医療行為です。 生活行為と上肢機能は密接な関係があるため、作業療法では主に上肢の徒手療法(図5)を行います。まず、身体機能や変形の状態を評価し、 徒手療法にて筋や関節運動の回復・改善を図り、回復状態に合わせてADL練習を行い生活行為を促進します。また、痛みや変形が動作の低下に影響している場合は、簡易装具(スプリント:図6)を作製し、関節の痛みや変形を抑制、関節運動を促進させ、 作業活動が行いやすい状態に導きます。
 また、 手指の巧緻(こ うち)動作(細かな作業のこと)を回復・改善するための治療ではいろいろな手工芸(図7:革細工)を治療手段として導入します。関節破壊による上肢機能低下で自立した生活行為が行えない場合には、自助具を作製し不十分な動作を補う支援を行い自立へと導きます。
 図8は自力で靴下を履くことができない対象者に筆者が考案したマウスパッド製ソックスエイドです。 さらに、暮らしやすい環境を整えるため住環境評価を行い、福祉用具のコーディネートや住宅改修のアドバイスなど身体機能面から生活環境まで幅広くマネージメントをします。リウマチの作業療法もリウマチ治療を専門的に行っている医療機関でご相談ください。
 

 

装具療法(PO)
リウマチにおける装具療法の目的は、@関節の支持性向上 A炎症の軽減 B変形の予防と矯正 C疼痛の軽減などが挙げられ、医師の指示のもと義肢装具士が個々に適応する装具をオーダーメイドで作製します。図9は靴型装具ですが、各種装具の作製には助成制度が受けられます。国民健康保険は各市町村の役所へ、社会保険や共済保険組合などは勤務先に請求申請手続きをしてください。詳しくは役所の福祉課や社会福祉士にご相談ください。
 
リハビリテーションの治療的効果
−事例紹介−
 リハビリテーションでは、『痛みの軽減』『筋出力向上』『筋力増強』『関節可動域の拡大』『歩行の改善』『ADL向上』『QOL向上』などの治療効果が得られます。その効果は対象者個々により異なりますが一例をご紹介します。
 図10は左上肢が肩の高さまでしか上がらない状態から徒手療法により可動域が大きく拡大し、両手で洗髪できるようになった例です。
 図11はスプリント療法により手指・母指の変形が直り、握力が向上した例です。
 図12は整髪用長柄ブラシで整髪が自立した例です。このような効果を発揮するためには、『療法士と対象者の信頼関係』『情報や知識』『薬物のコントロール』『早期からリハビリテーションの介入』『専門的技術支援』などが整った治療環境が効果につながります。
 


おわりに
リウマチ治療においてリハビリテーションは治療手段として位置づけられています。そのリハビリテーションは対象者個々の生い立ちを受け止め、対話を重視したリハビリテーション(Narrative based Rehabilitation:NBR)が重要で、こころと体と生活環境を守る支援を実践します。



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