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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2014.9 NO.442
ロコモティブシンドローム
〜始めよう!「ロコトレ」〜


リハビリテーション中伊豆温泉病院
理学療法士
土屋 幸司

はじめに 
日本の長寿化は進んでおり平均寿命(男性79・59歳、女性86・4歳:平成21年)も過去最高と年々増加しています。残念ながらずっと健康でいられることはほとんどありません。介護や支援を必要とする人は増え続けています。我が伊豆地区では65歳以上の第一号被保険者の13%が要支援・要介護の認定(平成25年)を受けています。「65歳以上の8人に1人は介護や支援を必要としている」という驚きの結果になっています。
 昨年の体育の日の新聞では「70歳代はスポーツジムに4割加入」とあり運動への意欲の高さが話題になりました。筋力やバランス能力を総合的に鍛え、いつまでも健康に過ごしたいものです。いきいきと自立した生活を長く続けられるよう、このロコモティブシンドロームについて学んでいきましょう。
ロコモティブシンドローム
 骨や関節、筋肉などの運動器の機能の衰えから介護が必要になる人は増え続けています。そこで、日本整形外科学会は2007年に「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」という新たな概念を提唱しました。ロコモティブシンドロームとは、骨や筋肉、関節などの体を動かす機能が低下し、要介護や寝たきりになった状態や、そのリスクが高い状態を指し、略して「ロコモ」といいます。
 ロコモに関わる疾患は、
・骨折や骨粗鬆症
・サルコペニア(加齢による筋肉量の減少)
・変形性膝関節症
・脊柱管狭窄症
などがあります。脳血管疾患や認知症、心臓疾患などは、運動することに関係はしますが、ロコモとはまた別の話になっています。また、内臓脂肪の蓄積によるメタボリックシンドローム(高血圧、糖尿病、高脂血症)は、ロコモには含まれません。
 運動器の連携はどこかひとつに不具合が生じると、他の運動器がその機能を補うように働くため、全身に影響が及びます。(図1)
 



体を守る意識を持とう!
 体は年齢を重ねる度、機能は衰えてきます。各年代で感じる機能の低下は異なりますが、50〜70歳代が運動器の病気を発症することが多いです。30〜40歳代から徐々に膝の軟骨や腰の椎間板などに変性は始まります。痛みがほとんどなく気づかないうちに、ロコモになる危険性が高い人(予備軍)は、推計で4700万人いると言われています。
 女性では骨粗鬆症による60歳頃からの膝の変形、男性では、重労働や筋力低下による、50歳頃からの腰の痛みが多いです。年齢を重ねていくと身体は変化し病気を発症しやすいことを知っ
てください。(図2、図3)
 自分自身の体を「守る」という考えを持ちましょう。日常生活などにちょっとした意識をもつだけで、健康な生活を送れる時間がずっと長くなってきます。
(例)・1時間座ったら5分立つ
  ・ 買い物袋は片方のみで持たず、小分けして左右均等に持つ
  ・ 重い物を持つときは、前かがみにならないようにする
 年齢を重ねるとロコモの危険性は高まります。しかし、同じように年齢を重ねても痛みなく日々を過ごしている人もいます。違いは、正しく体を使っているかどうかにあると考えます。「年だから…」で片付けるのでなく、痛くなることをしているから痛くなると思い、生活や姿勢を修正する努力を
していきましょう。



「ロコチェック」
 ふだんの生活のちょっとした動作から、ロコモがある可能性をチェックすることができます。チェックをしようと実際に行うと転倒や骨折に繋がることもあるため、ふだんの生活を思い出しながらチェックしてみましょう。(図4)
 7つの項目から1つでも当てはまればロコモティブシンドロームの可能性が高いです。
 ロコチェックから生活を見直し、体の衰えに気づき、上手に手入れしていきましょう。まだ余裕と思う方も要注意!ロコモ予備軍はなんと20歳代からいるとも言われています。
 ロコチェックに1つでも当てはまる場合は、ロコトレを行って歩行能力を維持し、転倒や骨折を防ぎましょう。ただし、誰でもすぐにロコトレを始められるわけではありません。人によってはロコトレを行う前に医療機関を受診したほうがよい場合があります。ロコトレを行ってみて「痛みがある」「足
腰の調子が悪くなっている」「効果が感じられない」といったことがあれば医療機関を受診してください。

ロコトレ(スクワットと片脚立ち)をやってみよう!
様々な運動がありますが、ロコトレは、スクワットと片脚立ちの2つの運動にて、筋力とバランス能力の向上を勧めています。重要なのは自分にあったレベルの運動を行うことです。(図5)
 姿勢に気をつけることや動作をゆっくり行うことで、全身の筋力の体操になります。またゆっくりな運動は、関節の負担を減らしてくれます。姿勢とスピードに注意して2種類の運動を行っていきましょう。
 スクワットの効果は、立つ、歩くといった基本的な動きをよりスムーズに行うための、太ももの前やお尻などの筋力を上げるのが目的です。ポイントは、膝が前にでないように注意することでお尻側の筋力がつきやすく、姿勢を丸めないようにまっすぐお辞儀することでお腹周りにも力が入ってきます。膝が悪い人は曲げる時に、膝が外へいかないように太ももに力をいれ、筋力で抑えながらゆっくり運動していきましょう。
 片脚立ちの効果は、片脚のため体を支える面積が狭くなり、バランス能力が鍛えられます。ポイントはまっすぐ立つことで、体を傾けないため関節の負担が少なくなります。揺れてしまってもすぐ手や足をついて修正するように姿勢を重視しましょう。また足を大きく上げすぎないことも大切です。目的は足でバランスをとることなので、椅子や壁に手をついていつでも体を支えられる場所で行いましょう。
 スクワットの回数は、5秒かけてしゃがみ込み、5秒かけて立つ動作を6回繰り返します。片脚立ちは左右1分間ずつを3セット(朝・昼・夕)行いましょう。生活習慣に運動を取り入れることが、大切です。運動を長続きさせるために、姿勢や速度のポイントは押さえ、空いた時間に「〜しながら」の精神で気軽にやっていきましょう。
引用・参考文献
図1 2013年度版.日本整形外科学会.ロコモティブシンドロームパンフレットより引用
図2.3.4.5 中村耕三.寝たきりを防ぐロコモ体操.日本放送協会.2010より引用



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