JA静岡厚生連。保健・医療・福祉の事業を通じ地域の暮らしに根ざした病院として社会の構築に寄与する。

JA静岡厚生連 〒422-8006 静岡県静岡市駿河区曲金三丁目8番1号
TEL : 054-284-9854
お問合せ・ご相談
交通案内 リンク プライバシーポリシー サイトマップ


ホームへ 理念・沿革・概要 基本方針 患者様への姿勢 事業内容 施設整備事業

JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2014.6 NO.439
大腸ポリープの治療
検診を受けて早期発見、早期治療を

清水厚生病院
外科 診療副部長
松永 晃直

ポリープってなに? 
 ポリープとは消化管の内腔を覆う粘膜の一部が隆起したものをさします。胃にできれば胃ポリープ、大腸にできれば大腸ポリープです。
 今回は大腸ポリープについて詳しく説明します。
ポリープもいろいろ 
 ポリープはその組織型から大きく非腫瘍性ポリープと腫瘍性ポリープにわけることができます。
 非腫瘍性ポリープは炎症や過形成などで正常細胞が集まって隆起しているものです。がんとは無関係ですから基本的に治療の必要はありません。
 大腸ポリープの80%は腫瘍性ポリープで、良性の「腺腫(せんしゅ)」と悪性の「腺がん」があります。大腸の大部分の腫瘍性ポリープは良性の腺腫ですが、大きさが増すに従い、部分的に小さながんを伴っていることが多くなり、最終的には全部がんに置き換わるといわれています。ですから腺腫性ポリープは内視鏡的に切除してがんが含まれていないか調べる必要があります。ただし、5o未満の小さな腺腫ががんを伴う確率は1%以下ですので経過観察でよいと考えられています。
 以上は大腸ポリープの場合です。胃のポリープの大部分は胃底腺ポリープと呼ばれる非腫瘍性ポリープです。胃底腺ポリープはがんとは関係ありませんので特に治療の必要はありません。


大腸がん検診 
 それでは大腸ポリープはどうやって見つかるのでしょうか。
 大腸ポリープを発見するためには大腸内視鏡検査が必要ですが、大腸ポリープは自覚症状がほと
んどありませんから、そもそも検査をするきっかけがありません。実際には大腸ポリープは大腸がん検診の二次検査の大腸内視鏡検査でみつかることが多いです。
 大腸がんになる人が増え始める40歳以上の男女は、大腸がん検診を年に1度受けることが勧められています。大腸がん検診は、市区町村や職場が実施する集団検診に参加するか、病院や人間ドックに個人で申し込むことで受けられます。大腸がん検診では主に問診と便潜血検査を行います。
 便潜血検査では便の中に含まれる目に見えない血液を検出して大腸に出血するような病気がないかを検査します。便潜血検査で陽性になると大腸内視鏡検査で精密検査を行います。
 一次検診を受けたうちで陽性と判定されるのは約5%です。精密検査を受けたうちの半数で大腸ポリープがみつかり、2〜3%でがんがみつかります。自覚症状がなくて検診で発見された大腸がんは治る可能性が高いので、便潜血検査が陽性にでたからといって不安に思うことなく、精密検査をぜひ受けてください。
 便潜血検査は早期のがんを発見するのに有効な手段ですが、進行がんであっても1回の便潜血検査では検出率は60〜75%です。2日間連続検査法を行うことで10〜15%程度検出率が改善するとされています。
 いずれにしても100%の検査ではないので、大腸になんらかの症状がある方は最初から大腸内視鏡検査で詳しく調べたほうがよいでしょう。具体的には便に血が混じる、便秘や下痢を繰り返すなどの症状がある方は外来受診をおすすめします。
大腸内視鏡検査の実際 

 検査前日には便が残らないように自宅でレトルトの検査食を食べていただきます。検査当日は大腸を空っぽにするために前処置用の下剤を2リットル飲んでいただきます。
 大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を一番奥の盲腸まで挿入して、戻ってくるときに観察をします。長くてくねくねとした腸管の中をできるだけ腸管をのばさないようにしながら内視鏡を進めていきます。
 大腸内視鏡というと大変というイメージがあるかも知れませんが、現在では内視鏡の性能の向上と、挿入技術の進歩により苦痛なく検査を行うことが可能となってきています。それでも腸の長さやかたち、癒着の程度は患者さんによって異なりますので、挿入にかかる時間や痛みの程度は一概に別の患者さんと比較することはできません。
 不安が強い場合には麻酔のお薬(鎮静薬や鎮痛薬)を使ってできるだけ苦痛が少なく検査できるように心がけています。検査時間は通常20分前後です。検査で大腸ポリープや、大腸粘膜の炎症などの病変を認めたときには、内視鏡の細い孔(鉗子孔といいます)を通して処置用具を入れて、組織検査のため組織の一部を採取(生検といいます)することが可能です。

大腸ポリープの治療 

 組織検査の結果、腫瘍性ポリープであることが判明し、大きさが5oを超える場合には大腸ポリープを治療してとったものを顕微鏡でよく調べます。
 大腸ポリープの治療は内視鏡で行います。多くは内視鏡的粘膜切除術という方法で切除します。はじめに内視鏡をポリープのある場所まで挿入します。ポリープの切除には高周波電流を用いますが、大腸の壁の全層に通電すると孔が開くことがありますので、内視鏡から注射針を出して腫瘍の粘膜の下に生理食塩水を注入して腫瘍を十分浮かせます。その後スネアと呼ばれる金属の輪を内視鏡から出して病変を絞めつけて高周波電流を通電し焼き切ります。治療は通常20分から30分で終わります。
 治療の合併症には出血、穿孔があります。どちらも頻度はそれほど高くありません(出血は1%程度、穿孔は0・1%以下です)。治療後の安静と、合併症があった場合の早期対応のために当院では入院で治療を行っています。
 切除した標本を顕微鏡で詳しく調べることを病理検査といいます。病理検査でポリープが良性か悪性か、病変の取り残しがないかを詳しく調べます。病理検査の結果、良性という結果であれば治療はそこで終了です。悪性(つまりはがん)の診断がついた場合でも早期のものであれば内視鏡治療で治る場合もあるのでその場合はさらに詳しく調べます。
 大腸がんであっても、がんの深達度が浅くて、リンパ管や静脈の中にがんが入り込んでいない場合はリンパ節へ転移している可能性がほとんどありませんので、内視鏡治療のみで経過観察となります。
 一方で組織型が低分化腺がん・印環細胞がん・粘液がんだった場合、癌の浸潤が深いもの、リンパ管・静脈へ癌が入りこんでいるものはリンパ節へ転移している可能性がありますので、リンパ節も含めて手術で腸を切除する必要があります。


 
大腸ポリープの原因って
 外来でよく患者さんから聞かれるのは「大腸ポリープの原因はなんですか」という質問です。ひとつの原因で病気になるわけではないのでなかなか答えにくい質問ですが、大腸がんになるリスクとしては、肥満、飲酒、赤肉(牛・豚・羊の肉)、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)、喫煙が知られています。また運動や食物繊維を含む食品を食べることは予防効果があるとされています。
 早期に発見すれば治る病気ですから、40歳を過ぎたら是非年に1回の大腸がん検診を受けることをお勧めします。

 




JA-shizuokakouseiren.2012.7.9