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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2014.5 NO.438
薬局?薬局?薬局?
ドラッグストア、調剤薬局、病院薬局の地学と役割について

リハビリテーション中伊豆温泉病院
副薬局長
久保田 貴光

はじめに 
 みなさんは『薬局』と聞くと、どこをイメージしますか?ドラッグストア、調剤薬局、それとも病院や診療所の中にある薬局?
 どこも『薬局』と呼ばれているところですよね。「なんとなくは知っているけど、何が違うの・・・?」
 ドラッグストアや調剤薬局、病院や診療所の『薬局』の違いや役割についてお話ししたいと思います。

薬局とは 
  そもそも『薬局』は、薬事法と医療法という法律によって薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所というふうに規定されており、調剤室を備える等の施設に関する基準をクリアして、薬局開設の許可を受ける必要があります。医薬品の販売を行うことができ、他にも医療機器や一般雑貨等を販売することもあります。このような決まりに照らし合わせてドラッグストア・調剤薬局・病院や診療所の薬局を見てみると、『薬局』と呼べるのは調剤薬局と薬局開設の許可を受けた一部のドラッグストアぐらいになります。

ドラッグストア・薬店 
 薬局開設の許可を受けていないドラッグストアや薬店は、正式には『店舗販売業』と呼びます。販売できる医薬品は第一類、第二類、第三類の三種に分類される一般用医薬品に限定されます。


一般用医薬品とは、自分で選ぶことができ誰でも使うことができる薬です。市販薬や大衆薬、OTC医薬品とも呼ばれています。OTCとは Over The Counter の略で、薬局のレジカウンター越しに買える薬という意味です。一般用医薬品は症状、年齢、体質などの条件の異なる人が使用することや、患者さん自身の判断で使用することを考え、安全性が重視されています。
 一般用医薬品の中でも、第一類医薬品を扱う店舗では薬剤師を、第二類および第三類医薬品のみを扱う店舗では薬剤師又は登録販売者を店舗管理者として配置しなければなりません。
病院・診療所
 病院や診療所の中にある『薬局』は、法的には『調剤所』と言います。その病院や診療所の医師の処方せんにもとづいた調剤をする施設で、他の病院や診療所などの処方せんを調剤することはできません。扱う医薬品は医療用医薬品がほとんどで、一般用医薬品を販売することはできません。
 医療用医薬品とは、医師が診断したうえで発行する処方せんにもとづいて、薬剤師が調剤して渡される薬です。処方薬とも言われます。医療用医薬品は医療従事者の指示にもとづいて使われますので、効果が高いものが多い反面、副作用にも注意が必要です。
 
調剤薬局
  結局、法的に『薬局』と呼ばれる場所は、先程申し上げたように、必要な施設の基準をクリアして薬局開設の許可を受け、なおかつ薬剤師が常駐して調剤を行う調剤薬局ということになります。
 この調剤薬局の中に保険薬局と呼ばれるものがあります。保険薬局とは公的保険制度の健康保険を使用した調剤や処方を行うことができる薬局のことです。保険薬局は健康保険が適応されるので、支払う薬代金の自己負担額が少なくて済むので、ほとんどの調剤薬局が保険薬局になっていると思います。


違いと役割
  それではここで、それぞれの違いや役割についてまとめてみましょう。ドラッグストアや薬店『店舗販売業』は一般用医薬品と言われる自分で選ぶことができ、誰でも使うことができる薬を売っているところです。薬を入手するまでの待ち時間も少なく、他にも医薬部外品や健康食品、一般雑貨など豊富に揃えている場合が多いので利便性に優れています。
 調剤薬局は一般用医薬品の販売と、医師により発行された処方せんにもとづいて医療用医薬品を調剤するところです。いろいろな病院や診療所の発行する処方せんにもとづいて、調剤することができます。
 病院や診療所の中にある薬局『調剤所』は、その病院や診療所の医師により発行された処方せんのみにもとづいて医療用医薬品を調剤するところです。他の病院や診療所の発行する処方せんを調剤することはできません。
 ドラッグストアや薬店については、扱っている医薬品や入手方法が異なるため調剤薬局、病院や診療所の薬局との違いや役割がはっきりしていると思います。
 調剤薬局と病院や診療所の中にある薬局についても、違いや役割がはっきりしていますが、患者さんにとっては違いや役割よりどちらかと言えば、受診している病院や診療所がその中の薬局で薬を渡すシステムになっているのか、もしくは処方せんを持って外の調剤薬局で薬を受け取るシステムになっているのかに左右されるのではないでしょうか。


おくすり手帳
 調剤薬局や病院・診療所の薬局では、『おくすり手帳』というものを発行しています。(図3)おくすり手帳は患者さん自身が使用している薬の飲み合わせ(相互作用)や同じ成分の薬が処方されていないか(重複投与)をチェックできたり、副作用歴やアレルギー、過去にかかった病気などの情報を伝えることができます。また、旅先や災害時、急に具合が悪くなったときなどに、自分の使用している薬の情報を正確に伝えることができます。まだみなさんの記憶にも新しい東日本大震災のときも、おくすり手帳が現場救急で大変役に立ったそうです。まだお持ちでない方はかかりつけの薬局で発行してもらうことができると思います。

最後に
  みなさんに私が一番お伝えしたかったことは、それぞれの薬局について「へぇー、そうだったんだ!」と知っていただくことではなく、違いや役割を理解していただいたうえで、それぞれの薬局をみなさんが上手に利用していただけたらと思っております。
 医療制度や医療機関といったものには、みなさんに馴染みが少なく知られていないけど、知っていないと損をすることがたくさん存在します。日本には、かかった医療費を全額支払わずに一部を自己負担で支払うといった医療制度が存在するものの、患者さんが支払う金額が家計費に与える影響は少なくありません。医療の制度や仕組みについて、さらに理解を深めていただき、上手に医療制度や医療機関を活用していただくことを願っています。

 




JA-shizuokakouseiren.2012.7.9