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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2014.3 NO.436
栄養学の基礎知識を学ぼう
静岡厚生病院
栄養科長 管理栄養士
奈良 和幸

はじめに 
「栄養学」と聞くと難しそうですが、身近によく聞くものばかりです。例えば、食品に表示されている「カロリー」は食品から得られるエネルギーの単位ですし、食塩相当量は、ナトリウム値から算出できる健康のための目安となるものです。また、食物の消化、吸収のしくみなども栄養学には欠かせません。今回は、食品を体内に取り込み、どのようにエネルギーとして利用しているかを一緒に考え、栄養素のバランスのとり方についても勉強しましょう。
栄養価の消化、吸収 
 食物は口の中でかみ砕かれて、唾液と混ぜ合わされます。唾液にはでんぷんを麦芽糖(ばくがとう)に分解する消化酵素(アミラーゼ)が含まれ、最初の消化がここで行われます。食物がある程度やわらかくなったら食道に送り込まれます。通常、呼吸をしている時には気道が開き、食道は閉じていますが、食物が飲み込まれる時には、気道が閉じられ食道が開きます。食物は食道から胃へと運ばれ、蠕動(ぜんどう)運動によってすりつぶされながら胃液と混ぜ合わされ、かゆ状になります。ここでは、たんぱく質の消化、食物の殺菌、アルコールの一部吸収などが行われます。食物は一時的に胃の中にためられて、少しずつ十二指腸に送られます。十二指腸では胆汁(たんじゅう)と膵液(すいえき)が分泌され、消化と吸収にかかわってきます。そして小腸で分解された栄養素は、小腸壁のひだを通じ、血液やリンパ液に吸収されていきます。栄養素の消化、吸収のほとんどが小腸で行われます。小腸から大腸に送られるのは、必要な栄養素が吸収されたあとの残ったものがほとんどです。大腸では、残ったものを発酵させ、余分な水分を吸収し、便として肛門から体外へ排泄します。(図1)
図1

カロリーとエネルギー 
 
 「カロリー」という言葉は、生命維持のために必要なエネルギーを指します。1calは1gの水の温度を1度上昇させるために必要な熱量のことです。栄養学では、この1000倍のkcal(キロカロリー)をエネルギーの基本単位としています。つまり、1sの水の温度を1度上げるために必要なエネルギーを1kcalと示します。食品が持つエネルギー量は「ボンベ熱量計」という酸素を満たした密閉容器の中で燃やされたときに、発生した熱量によって、水の温度が何度上昇するかで示されています。ただし体内での過程とは異なるため、この数値にエネルギー換算係数(腸管での消化吸収率を考えて設定された数値)をかけた数値が食品成分表で示されています。

 栄養素のなかでエネルギー源として利用されるのは、糖質、たんぱく質、脂質です。日本人の食生活でもっとも多く割合を占めるのは糖質で、1gにつき4kcalのエネルギーを発生します。たんぱく質も同様ですが、脂質は1g9kcalという非常に効率のよいエネルギー源です。(図2)エネルギーと一言で言っても、光のエネルギー、電気のエネルギー、運動のエネルギーなど種類はさまざまです。私たち人間も、毎日なんらかの食べ物を食べ、その食べ物の成分(栄養素)が体内で分解されてできるエネルギーを使って生きています。このエネルギー活動を利用して、体温を一定に保ったり、心臓を動かしたり、呼吸活動をしたり、筋肉を収縮させてからだを動かしたりしています。脳細胞が正常に機能するためにも、エネルギーは欠かせません。

 生命活動を維持するためには、食物によるエネルギーの供給が不可欠です。このような、生きるために最低限必要なエネルギーのことを基礎代謝量と呼びます。(図3)これにからだを動かしたときに発生する活動エネルギーを追加したものが、1日の消費エネルギー(カロリー)になります。活動エネルギーは仕事の内容や生活習慣によって変わります。

図2

 

図3
栄養素の目安
  人間の体内ではさまざまな栄養素が作用し合って「からだを動かすエネルギーとなる」「からだを構成する細胞をつくる」「からだの調子を整える」という3つの大きな働きをしています。ごはんや肉や魚、野菜などにはさまざまな栄養素が含まれていますが、食品がそのままこのような働きをするわけではありません。栄養素は消化管で消化、吸収され、いったん肝臓に送られて、体内で利用できる物質につくりかえられます。これを栄養素のバランスよく摂取できたときに、効率のよい栄養素の代謝が行われます。
 
栄養素のバランス
   「1日3回、なるべく決まった時間に食事をとりましょう」と言われますが、これにはしっかりとした理由があります。まず、必要な栄養素を満たすためには、1日に3回の食事が必要だということ、さらに朝、昼、夕それぞれの食事には決められた役割があります。「朝食」では、寝ている間に消費された栄養を補給するために欠かせません。朝食をしっかり食べないと脳がエネルギー不足となり、午前中の仕事や勉強の能率が低下してしまいます。朝食を食べると交感神経が刺激され、脳とからだが活動的になり、スムーズに1日の行動を始めることができます。「昼食」は午後の活動に向けてのエネルギー補給の役割があります。「夕食」は7時くらいにとるのが理想ですが、現実には難しいこともあるでしょう。遅くなりそうなときは、夕方におにぎりやパンをとって、夕食はあっさりした内容の食事にします。

 献立は朝、昼、夕のバランスを考えます。理想は「朝食3、昼食4、夕食3」の割合です。朝食が少ない人は昼食をしっかりとる、夕食の量が多い人は昼食をセーブするなど、ライフスタイルに合わせて調整することをお勧めします。

 1食は「主食」「主菜」「副菜」などで構成されます。どれかが欠けてもバランスが乱れてしまいます。毎食、できるだけそろえるように心がけてください。汁物やフルーツ、デザートなどは、不足しがちな栄養素の補給や食事の楽しさ、満足度を高めるためにも効果的です。食事は楽しむことが大切なので、自分で献立内容をしっかりコントロールできるようにしましょう。
(図4)

図4

おわりに
  「栄養学の基礎知識」というと難しく感じる方が多いですが、普段の食生活に置き換えてみると、よく耳にすることが多いのではないでしょうか。食事は、ただ空腹感を満たすだけではなく、各栄養素が、からだの中で重要な役割をしているということを認識してください。そして、食事内容のバランスを考え、自分の好む健康食を見つけ出して、より多くの人と楽しんで食事ができるようにしましょう。「食からはじまる健康づくり」は皆様の行動により、実現できることではないでしょうか。

 




JA-shizuokakouseiren.2012.7.9