では、開腹手術と比べて腹腔鏡手術の利点はどこにあるのでしょうか?逆にどんな欠点があるのでしょうか?
まず、利点としては
@キズが小さい(図5、6)
A入院期間が短い
B手術後のお腹の中の癒着が少ない
C腹腔鏡の拡大視効果が得られる
などが考えられます。
@キズが小さいことで手術後の痛みがかなり少ないです。それにより手術後早くからたくさん歩けるので肺合併症(肺炎、※1無気肺など)が起きにくくなります。また腸の動きも早く回復するため食事開始当初から安定して食べることができます。つまり手術で受けたダメージからの回復が早く、A早期退院・早期社会復帰が望めます。特にご高齢の方にとっては、手術後の回復が遅れるとリハビリに時間を要し、最悪寝たきりになってしまうこともあるため、手術後早期に歩けるかどうかは非常に重要な要素なのです。また腹腔鏡手術の後はBお腹の中の癒着(腸などがお腹の壁や他の臓器にべったりくっつくこと)が少ないため※2腸閉塞になりにくく、もし別の病気で再度手術が必要になったときにも安全に手術できる可能性が高まります。加えて専門的な観点からの利点としては、C肉眼で見るより腹腔鏡で見る方が詳細に見えるため(拡大視効果)、手術中の出血量が少なくて済みます。またよく見えることで精度の高い手術が出来る可能性があります。
一方、欠点としては
@技術的な問題
A手術時間が長くなる可能性
B手術後長期間経った後の調査結果が少ない
などが考えられます。
腹腔鏡手術は、手で直接触ることの出来る開腹手術とは全く違う技術を要するため、@特殊な訓練が必要です。つまり手技が難しく、A手術時間が長くなる傾向があります。また腹腔鏡手術は歴史が浅いため、B長い目で見た場合に開腹手術と遜色無い結果が得られるのかどうかの結論がまだ出ていません。
※1無気肺…肺の膨らみが悪くなり痰などが溜まってしまう状態
※2腸閉塞…お腹の中の癒着により腸の動きが制限されて、お腹が張る状態
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