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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2013.8 NO.429
下肢静脈瘤の治療
遠州病院
外科診療部長 
鈴木 正彦

はじめに
 下肢静脈瘤は、表面の静脈がこぶのように拡張・蛇行したもので、夕方に下肢がむくんでだるくなり、夜間に足がつるという症状をひき起こすことがあります。また、皮膚が炎症を起こして痒くなったり、皮膚が変色して皮下脂肪が硬くなり、潰瘍を生じることもあります。
 太い静脈やその枝が静脈瘤となり、大きくなるものから、膨らみのない蜘蛛の巣状の静脈瘤まで様々のタイプがあります。年齢とともに有病率は増加し、小さいものを含めると多くの方にみられる身近な病気のひとつです。

原  因
 下肢の血液は、足の運動によって生じる筋肉のポンプ作用によって心臓に戻ってゆきます。静脈には逆流防止弁が付いており、血液が重力により足側へ逆流しないようにくい止めてくれています。この弁は重要で、壊れてしまうと立ったときに血液が足に戻ってきてしまい、持続的に静脈の圧力が増して血管がふくらみ、様々な症状を引き起こします(図1)。
 妊娠、出産、長時間の立ち仕事などで弁が壊れることが一般的です。女性に多く、加齢によって発生頻度が増します。老化により静脈壁や弁の劣化が原因と考えられています。また、先天的な弁の脆弱性が根底にあるといわれ、親族に静脈瘤のある方は、より発生頻度が増します。
 大部分は、軽い症状や外見上の問題だけで、生命に関わったり、日常生活にひどく困るような病気ではありません。このため、そのまま放っておく方が多いですが、妊娠中の一時的な静脈瘤を除き、長い年月をかけて徐々にふくらみの範囲が広がり、大きくなってきます。飲み薬で治ったり、自然に治ることはありません。


治 療 法
 弾力ストッキングによる保存的治療は、圧迫によって静脈の逆流を止めて、むくみやだるさなどの症状を軽くし、静脈瘤の進行を止めることができます。履きづらい点や、夏は暑いという欠点もあります。使用し続ければ静脈のふくらみがなくなるわけではありません。また、動脈の病気もある方は使用できません。
 根本的な治療は、静脈瘤及びその原因となっている静脈を切除するか、切除せずに静脈をつぶしてしまうことが治療となります。もともと、悪さをしている血管ですので、切除したり、つぶしたりしても問題ありません。
・ストリッピング手術(静脈抜去
 逆流の原因となっている静脈を抜去してしまう手術で、古くから行われている最も確実な方法です。傷が多い、しびれなどの知覚神経障害(生活に支障なし)が出る場合がある、入院が長くなるなどの欠点があります。
・血管内レーザー治療(図2)
 平成23年1月より本邦でも保険適応が認められました。欧米では、すでに10年ほど前から広く行われており、現在もっとも一般的な治療になっています。逆流の原因となっている伏在静脈にファイバーを通し、血管の内側からレーザーを照射して血管を焼灼し閉塞させる治療法です(図3、4)。確実に閉塞させることができるため、静脈を抜去するストリッピング手術と同等の成績を残せています。今後、日本でも静脈瘤治療の主体になると考えられます。




 レーザー焼灼自体は20〜30分ほどで終わりますが、そのあと、ふくらんでいる下腿の静脈瘤は切除する必要があり、小さな傷で切除します(図5、6)。日帰り治療も可能ですが、当院では、内出血の合併症などを少なくするため、通常1泊2日で行っています。
 ただし、静脈瘤の形態による場合や、血栓症の既往のある方、妊婦さん、経口避妊薬またはホルモン剤を服用している方などレーザー治療ができない場合もあります。
・体表式レーザー治療(図7)
 あざやシミの治療と同じで、皮膚表面からレーザーを照射して、皮膚の下にある静脈瘤を収縮させます。ふくらみの少ない細い網目状の静脈瘤や蜘蛛の巣状の静脈瘤に有効です。手術ではありませんので傷跡も残りません。当院では形成外科が治療を行います。
・硬化療法
 硬化剤により静脈瘤内膜に障害を起こさせ、血管内腔を閉塞させることで外見上皮膚より静脈の盛り上がりをなくす治療です。傷跡は残りませんが、小さな静脈瘤以外は単独では行わず、他の治療法と併用することがほとんどです。
・高位結紮術
 足の付け根や膝の後ろなど逆流している血管を結紮して、静脈瘤の原因の逆流を止めてしまいます。局所麻酔で行います。通常、静脈瘤切除や、硬化療法と併用します。




最 後 に
 従来、本邦ではストリッピング手術が主に行われてきましたが、20年ほど前に、外来治療も可能な硬化療法が注目されて広く行われるようになりました。しかし、再発率の問題から、再びストリッピング手術が見直されたという経緯があります。最近になり、治療成績がストリッピング手術に匹敵する血管内レーザー治療が保険適応となり、より低侵襲で効果の高い治療が行えるようになりました。症例によって、いろいろな治療法を組み合わせて行うことができ、治療の幅が広がってきております。
 当院では、最新の血管内レーザー治療を導入し、好評を得ております。下肢静脈瘤でお悩みの方は、是非、遠慮無くご相談ください。



JA-shizuokakouseiren.2012.7.9