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JA静岡厚生連 機関誌「すてっぷ」特集記事です。 2013.6 NO.427
「高齢者の身体機能」について
清水厚生病院
理学療法士 藤澤 あずさ

はじめに
 老化は様々な身体機能の低下を伴い、ヒトの身体活動を支える運動機能も低下することが知られています。例えば、高齢者において筋力が弱い、機敏でない、バランスが悪い、身体が硬いということがありますが、これは運動機能の低下を表しています。
 そして、運動機能の低下は高齢者の寝たきりの重要な要因である「転倒」にも密接に関連することが指摘されており、高齢者の生活の質や日常生活活動に関わると考えられています。高齢期において運動機能を保つことは健康を維持する上で大変重要です。

積極的な身体活動が大切

 気をつけていても加齢とともに身体活動が低下してきます。平均寿命が延び、高齢者人口が増加する中、いかに自立した生活を送れる体力を保っていくかが誰しもの願いです。
 一般的に体力は20歳代でピークに達し、その後は徐々に低下をたどり、健康な方であっても、高齢期には急激に低下が進行すると言われています。そして大事なことは、身体機能には「使えば発達し、使わなければ衰退する」という生物学な原則があり、日頃の状況によって個人差が生じてくることです。特に高齢者においては、その影響が大きく、身体活動を積極的に保っていくことが身体機能の維持向上に大切になってきます。

身体活動の「悪循環」から「良循環」へ
 近年では「廃用症候群(生活不活発病)」が広く認知されてきています。歩くのが大変になってきたり、転倒への不安があると、どうしても家に引きこもりがちになります。このような悪循環が心身機能の低下につながっていきます。
 自分で「できる活動」は、なるべく普段の生活の中で実際に「している活動」として実践し、少しでも身体活動を高めることによって、「悪循環」から「良循環」に転換していくことが非常に大切です。

廃用症候群とは
 廃用症候群とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた状態をさします。
 ベッドで長期に安静にした場合には、疾患の経過の裏で生理的な変化として表に示すようなことが起こりえます。病気になれば安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、このことを長く続けると、廃用症候群を引き起こしてしまいます。

廃用症候群
廃用性筋萎縮 筋肉がやせおとろえること
関節拘縮 関節の動きが悪くなること
廃用性骨萎縮 骨がもろくなること
心機能低下 心拍出量が低下する
起立性低血圧 長く寝た後急に立ち上がるとふらつく
誤嚥性肺炎 食べ物が誤って肺に入ることによりなる肺炎
血栓塞栓現象 血管に血のかたまりがつまること
うつ状態 精神的に落ち込むこと
せん妄 軽度の意識混濁のうえに目には見えないものが見えたり、混乱した言葉づかいや行動を行うこと
見当識障害 今はいつなのか、場所がどこなのかわからないこと
圧迫性末梢神経障害 寝ていることにより神経が圧迫され、麻痺がおきること
逆流性食道炎 胃から内容物が食道に流れ込んで、炎症がおきること
尿路結石・尿路感染症 腎臓、尿管、膀胱に石ができること、また細菌による感染がおきること
褥創 床ずれといわれる皮膚のきず


2週間の安静で筋肉の40%が萎縮
 特に高齢者では、知らないうちに進行し、気がついたときには、「起き上がれない」「歩くことができない」などの状況が少なくありません。
 たとえば絶対安静の状態で筋収縮が行われないと1週間で20%、2週間で40%、3週間で60%の筋力低下が起こると言われています。
 さらに、1日の安静によって生じた機能低下を回復させるためには1週間かかり、1週間の安静により生じた機能低下を回復するには1か月かかるといわれます。

予防するには
 できるだけ寝た状態を存続させないようにします。座位時間を増やしたり、ベッド上で上肢や下肢を動かす運動を行います。人とのかかわりが薄れると精神機能の低下をきたすので、言葉をよくかけ、刺激を多く入れるようにしましょう。

運動は健康を改善
 近年の研究から、後期高齢者や虚弱な人々でさえ身体活動を増やすことで健康を改善し、自立性を高めていくことができるということが明らかになってきました。いつからでも遅くはなく効果が期待できます。以下に高齢者にとって重要な運動について示します。
・持久性の運動
 心臓・肺・循環器系の機能が改善し、動脈硬化の予防につながります。
・筋力づくりの運動
 座る、立つ、歩くなど、日常生活動作に必要な筋力を養います。
・バランス運動
 要介護の主要な原因の1つでもある転倒の予防につながります。
・柔軟性の運動
 関節の可動域を向上させ、腰痛や肩こりなどの予防につながります。

動習慣は生活習慣病の予防も
 運動不足は肥満を招くばかりでなく、高血圧、糖尿病、がん、心臓病といった生活習慣病の危険因子と考えられており、運動習慣を持つことは生活習慣病の予防にも大切です。
 正しい運動方法を理解した上で適度な運動習慣をもつことは、身体を良好に保ち活動的な高齢期を過ごすために大きな役割を果たすといえるでしょう。

運動機能を適度に使うことが大切
 「人間の持つ機能は使わなければ衰え、使いすぎると壊れ、適度に使えば発達する」という法則があります。
 例えば足腰の筋肉も使わなければ萎縮し、筋力の低下をきたし、立ったり座ったりするのさえ大変になってきます。逆に筋肉に強い負荷を与えすぎては、筋肉や関節が炎症を起こし、痛みが出て続けられなくなります。大切なのは「適度に使う」ということです。
 高齢者では立ったり座ったりが少しでも楽にできるように、ご自宅の椅子に座って、数回の足上げ動作を繰り返すことで十分なトレーニングになります。

ストレッチも大切
 高齢者において、「身体が硬い…」ということは、怪我や転倒につながりやすくなっています。そこで、反動をつけない柔軟体操を行うことで、身体をリラックスさせたり、疲れをとる、体調を整えるなどの効果が期待できます。
・ストレッチの目的
1. 柔軟性(身体の柔らかさ)を高める
 長時間の同じ姿勢や運動不足により、身体が硬くなることを防ぎます。
2.怪我の予防
 運動の前後の準備運動、整理運動の時に使われます。すぐに激しい運動を行うと、肉離れや関節の
怪我につながります。
3.疲れを残さない
 いわゆる筋肉痛を防ぐために効果があります。
・注意点
1. 息を止めないで行うことが重要です。
 息を止めてしまうと、無理をしてしまいますし、血圧を上げてしまう場合があります。
2. 反動をつけずじわじわと行うことです。
 反動をつけると、筋肉は伸びるどころか、逆に危険を感じ収縮してしまう作用があるからです。反動をつけず、10〜20秒ほどゆっくり行います。
3.無理をしないことも大事です。
 自分に合ったレベルで無理のないストレッチがお勧めです。
4. 伸ばしている筋肉を意識してみることです。
 この運動の時はここの部分が伸びているという意識をもつと、神経と筋肉の働きをスムーズにしま
す。



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JA-shizuokakouseiren.2012.7.9