近年テレビや雑誌等で乳がん検診の話題を目にすることが多くなりました。『マンモグラフィ』という検査名も広く知られ、「乳がんの検査」「痛みがある検査」など“何となく知ってる”という方も多いかと思います。しかし、「今は異常がない」「恥ずかしい」などの理由で受診しない方も多く、受診率は30%程度と欧米諸国に比べて低いのが現状です。
乳がんの検査には視触診・超音波などもありますが、今回はマンモグラフィについて説明します。
乳がんの現状
日本人女性の乳がん罹患(りかん)数は、年々増加し続けており、今では16人に1人が乳がんになると言われています。さらに、乳がんの死亡者数も年々増加しており、年間12000人以上の方が亡くなっています。

乳がんとは?
乳がんとは、母乳を分泌し乳頭へ導く『乳腺組織』から発生する悪性腫瘍のことです。乳管(母乳を乳頭へ導く管)に沿って広がり、石灰化を引き起こしたり、周囲の乳腺組織に浸潤して腫瘤を形成します。
乳がんの発生・増殖には女性ホルモン『エストロゲン』が関係すると考えられています。食生活の欧米化や、晩婚化、出産回数の減少などのライフスタイルの変化により女性ホルモンの影響を受ける期間が長くなったことが近年の乳がん増加の要因とされています。
乳がんになりやすい人?
乳がんになるリスクが少し高くなる『ハイリスクグループ』として表のような報告があります。
成人女性の乳房には必ず乳腺組織があるため、乳がんは誰もがかかる恐れのある病気なのです。乳房の大きさは全く関係ありません。
乳がんの発生は20歳過ぎから徐々に増え始め、40歳後半から50歳代にピークを迎えます。その後少し減少しますが、80歳でも依然罹患率は高いままです。
「まだ若いから心配ない」「閉経後だからもう大丈夫」ということはありません。どの年齢でもかかる病気と言えます。
男性にも乳腺組織はあり、乳がんになることはあります。乳がん全体の1%は男性だと言われています。

早期発見!
乳がんは早期発見・治療で90%以上と高い確率で治る病気と言われています。また、がんが小さいうちに発見できれば乳房を残すこともできます。
早期発見のためには、定期的に検診を受けることが重要です。
マンモグラフィとは?
マンモグラフィとは乳房のX線撮影のことです。
乳腺組織の中に発生する早期乳がんにみられる『微細石灰化』や『腫瘤』を写真に写し出すことを目的とした検査です。
乳房を片方ずつ2枚の板で挟んで圧迫し、薄く平らに伸ばした状態で写真を撮ります。乳房を板の間に引っ張り出して押さえますので、多少の痛みを伴います。
しかし、診断に必要な良い写真を撮るために乳房を圧迫することはとても重要です。
乳房を引っ張り出すことで、乳腺組織全体を写し出します。乳房の引き出しが不十分であったり、怖
がって腰を引いたりすると写真に写らない部分が生じる場合があります。また、圧迫して乳房を薄く平
らに伸ばすことで、乳腺組織を広げ、重なりを少なくします。これにより、より細かい病変が写し出せます。
若い方や授乳中の方は乳腺組織の量が多く、病変を写し出すことが難しい場合もあります。
通常、圧迫は乳腺組織が広がり固定できるまで、10〜12s程度の圧力をかけて行います。乳腺組織の量や乳房の硬さで痛みの感じ方は異なり、乳房の大きさは関係ありません。実際に強く圧迫するのは数秒程度ですが、痛みが我慢できない時は担当技師に遠慮なくお伝え下さい。
実際に検査を受けてみると「思ったほど痛くなかった」「我慢できる程度の痛みだった」という方がほとんどです。
排卵後から生理前までは女性ホルモンの影響で乳房が張っている方もいるかと思います。この時期はより痛みを感じますので避けた方がいいかもしれません。
また、緊張して体に力が入りがちですが、これでは上手に圧迫できない上に、痛みもより強く感じます。リラックスして受けていただくことで痛みが少し和らぐと思います。
 

マンモグラフィを受けられない場合のある方
乳房圧迫やX線の被ばくによる様々な危険を考慮し、表に示した方は検査を受けられない場合があります。
植込み型心臓ペースメーカーおよび植込み型除細動器を装着されている方は、圧迫の際にペースメーカーを挟んだり、リード線に支障をきたす恐れがある等の理由によりマンモグラフィによる検診は行わない方がよいとされており、超音波による検診を勧めることがあります。
また、豊胸手術をされている方はシリコンバックの破損の可能性や、圧迫不十分で病変が描出されない等の理由でマンモグラフィが行われない場合があります。
マンモグラフィの被ばく
マンモグラフィはX線による被ばくがある検査です。1回の撮影で浴びる放射線の量は、0・05〜0・15mSv(ミリシーベルト)です。私たちは普通に生活していても宇宙や大地などから年間2・4mSvの自然放射線を浴びています。これに比べると、とても少ない量と言えます。
検査によって早期乳がんを見つけるメリットの方がはるかに大きいのです。
おわりに
乳がんを自分の問題として意識し、早期発見のために定期的な検査を心掛けることが大切だと思います。
不安や苦痛のないよう、できるだけリラックスしていただいた状態で様子を伺いながら検査を進めていきますので安心して受診して下さい。
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