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静岡厚生病院 小児科 No.182

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《こどもの医療費の助成制度について》
 静岡市では本年4月より、医療費の助成制度の対象が中学生まで拡大されました。これにより、病医院を受診した際の窓口での支払いは原則として、0歳のうちは無料、1歳から中学卒業までは一回500円ということになりました。

 『朝から鼻が垂れるから』と受診した小学生、熱もなく元気でしたが、遅刻をさせるつもりで午前中の外来に連れてきたお母さんが、診察を終えて部屋から出る時に言いました。『先生、今度から500円になったから、またちょくちょく連れてきますんでよろしく!』。

 中学生までの医療費の助成制度、市のキャッチフレーズで『ワンコイン』と称されるこの制度について、少し考えてみましょう。

 ゴールデンウイーク終盤の5月5日、こどもの日。お花で有名なとあるテーマパークに家族で行きました。入り口付近には開門前から長蛇の列ができています。入場料は、高校生以上の大人が400円、中学生以下のこどもは、『こどもの日』の特別企画で無料、タダでした! 得をした気分で門を入ってしばらく進んでから、その気分が大きな間違いであったことに気づきました。きれいな花を見るにも人の壁、サイクリングをしようと自転車を借りようにも長い順番待ち、ジェットコースターなどのアトラクションにも人、人、人、お弁当を持って行ったのでうちは用がありませんでしたが食べ物を売るどのお店の前にも人、人、人、人、人、、、でした。何をするにもあふれる人のおかげで時間ばかりがかかり、疲れだけが残りました。こどもがタダになったからと言っても、そのこどもが一番疲れてしまったようです。『こんなことなら、お金を払ってでも普通の日に来てゆっくり回りたいね。』、それが家族共通の感想でした。

 こどもの医療は、こどもの日の無料企画や、チェーン店のワンコインランチ、デパートの安売り福袋とはまったく違います。これらは、本当にそれしか価値がないか、それをもとに客を集めて他の商品の売り上げで儲けようという意図があってのことです。こどもの医療は、それ相当に手間も費用もかけられてはじめて質が保てる状況です。助成制度は、そこに生じる負担を軽減することが目的なのであって、客集めを目指しているのではありません。

 『ワンコイン』、こどもが病気になった時には確かにありがたいですよね。でもだからと言って、大した病状でもないのに保護者の皆さんが気軽にこどもを連れて受診するようになってしまったら、いったいこの地域の医療はどうなってしまうでしょう? こどもの日のテーマパークと同じ状態になってしまうとも限りません。迅速な診療が必要な重い病気【髄膜炎、止まらないけいれん、呼吸困難の強い喘息の発作、重症の嘔吐下痢症で点滴や入院が必要な脱水状態、など】のこども達が、薬局で薬を買うよりも安いからと気軽に受診するたくさんの軽症の患者さんに紛れてしまって、手当てが遅れ、後遺症を残してしまう、命を落としてしまう、、、そんなことにもなりかねません。

 この地域でも、小児科医の数、特に夜間や休日の診療を支える小児科医の数が、必ずしも十分ではなくなってきています。ですから、ワンコイン医療政策の、特に夜間の診療体制への影響が懸念されます。医療費が安かろうがそれなりに高かろうが、こども達が本当に必要な医療をしっかりと受けられるようにすること、それが保護者の皆さんと我々医療関係者の双方に共通する責任です。時間外の深夜に『ワンコインだから』と気軽に受診してしまうあなたが、真に手当てが必要なこどもの診療を邪魔してしまっているのかも知れません。我々小児科医も、数をこなすことに追われて、本当に辛い、苦しい、痛い思いをしているこども達の診療を、後回しやないがしろにしてしまうことがあってはならないと、肝に銘じているところです。


《一方通行》
 流れる風に、さわやかな色と香りを感じる季節です。大型連休が終りました。新入生達はお休みに少しほっとして、疲れを癒すことができました? これから新しい環境に少しずつなじんでゆけるといいですね、あせらず、ゆっくりと。

 お休みの間、私は庭の元気すぎる雑草と戦っていました。我が家の庭は一方通行の市道に面しています。しかも一通の始まりになっています。草取りをしていると、逆走しようとする車が何台も来るのがわかります。どの車も一度は止まります。一通をほとんどの運転手は知っていると思います。そのあと進むか、引き返すか? 距離はたった20メ−トルくらい、前から車がきたらバックしなければならないくらいの道幅です。さあどうしましょう? おもしろい事にだいたい1/3ずつに分かれます。1/3は向きを変え引き返します。1/3は一旦止まってもすぐに進みます(なかには気づかず進んでいる人もいるでしょうけれど)。残りの1/3はしばらくそこで止まっています。どうしようか考えているのでしょう。お休みの日なのでたいてい同乗者がいます。相談しているのでしょうか。考えた末、やっぱり進むのが2/3、引き返すのが1/3。なかなか面白いです。取り締まりは年に1回あるかなしか。つかまる可能性はほとんどありません。ただ、入ってくる車は一通なので前から車は来ないと思って角を曲がってきます。『事故につながらなければよいな』と、いつも思っています。

 さてこの一方通行ですが、道路には標識がありますが、人間関係にはありません。親子、友達、職場などでまわりから見ているとまったく一方通行で意思疎通に気づいていない人がいます。道路と同じで、一方的なことに気づいてやり直す人、気づいても突き進む人、迷って考えた末に行動する人、いろいろです。相手をしている側からすれば、こちらの気持ちをわかってもらえないのでなかなか辛いものがあります。とくに、いつも一緒にいる家族となると、とても苦しいだろうと思います、日々続くわけですから。力の強い者の方が、無頓着になりがちです。家族なら親、年上の兄弟、職場なら上司。自分の意見だけを押し付けて、相手の気持ちを汲み取ろうとしなくてもその時は事が済んでゆきます。でもそれが度重なれば、関係は崩れてゆきます。しかもそれに気づくのはたいてい力の強い者の方が遅くて、ある時こんなはずではなかったと、あ然とするわけです。崩れるのはある日突然であっても、その伏線はしばらく前からあったはずです。修復しようと思えばそれ以上の時間がかかります。人と向き合う時、気持ちのやり取りができているか、独りよがりではないだろうか、気にしていなければいけないのだろうなと思います。どんなに親しい間柄でも。

 引き返す車を見て、ただ単に規則を守ってえらいなあと思うだけでなく、やり直すことによって、結局は面倒なことに関わらずにすんでゆくのだろうと思いました。警察に捕まることもなく、事故に巻き込まれることも減るからです。たった20-30mだからと逆走する人は、生活の中でほかの場合も突っ走ってしまうのでしょうね。ほんの少し楽をしようとして、却って手間がかかってしまう事はよくあります。わかっていたのになと後悔します。

 そんなことを考えながら、結構楽しんで草取りをしていますが、これからの季節、雨が降ると草はますます元気になります。私は少々憂鬱になります。雑草の生命力ってすばらしい、負け続けです!



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